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2005.08.29
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カテゴリ:ピアノ雑感
またまた整音について・・・

楽器の正確なチューニングには「音叉」が必要である。この音叉のピッチがいわば絶対的な基準となる。もちろんピアノの調律もそうである。

そのように調律の場合は音叉というものさしがあるわけである。整調(メカニックの寸度を調節する作業)の場合も様々な定規を使う。では整音の場合はどうか。

実は整音には音叉のような“ものさし”はない。
整音をする人が主観的にこの音硬い、柔らかい、響く、延びないなどと感じたことを頼りに作業を進めていくのである。

僕がグロトリアンで整音担当になったばかりの頃、指導にあたっていた前任者が「自分の中にしっかりと音のマースシュタープを作れ」と口をすっぱくしていっていたものである。マースシュタープとは、ものさし、規準といった意味になる。

整音は基本的にはまず最初の1音を作ってそれを規準に広げていく。
この最初の一音の決定の基準がこれといったメソッドがなく、技術者によって違う。

前任者であったザイショーヴァ氏は変わっていて低音から作っていた。低音のある音がグォーンと響く一点を狙って音作りをしていた。この“グォーン”ができるとそれを中音、高音に広げていた。しかしこの方法は低音が良くなるピアノに限られる。先日述べた「ホモジェナンズド・サウンドボード」のなせる業である。

僕はこの方法を教わったものの今はもう少しスタンダードな音のとり方をしている。中音部分で伴奏用の和音とメロディーが両方出せる音をめざす。案外この両方が満足にできる領域は限られるので規準としてはとりやすい。
僕個人の方法は「トロイメライ」のメロディーが際立つ範囲で最も柔らかいところを狙っている。これで出来た音を基準に全体にひろげる。

それで僕の作業部屋からはいつも「トロイメライ」が流れる。他の整音担当者もそれぞれ「十八番」を持っていて、どの曲が流れるかで誰が作業しているか分かるのが面白い。ちなみに前任者のザイショーヴァ氏はよく歌の伴奏を弾いていて、自分もそれに合わせてしょっちゅう歌っていたのが印象に残っている。

経過時間 1月 14日 8時間 41分経過
吸った煙草 0本
吸わなかった煙草 453本
浮いた煙草代 90ユーロ
延びた寿命 1日 13時間 45分






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Last updated  2005.08.29 08:13:45
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