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2005.09.03
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カテゴリ:ピアノ雑感
ふと疑問に思った。

なぜピアノ調律師は「師」と呼ばれるのか。
ふつう「士」とか「師」のつく職業と言えば弁護士、医師のように資格が必要であったり文字通り「先生」であったりするはずである。

調律師というと、よく「調教師」や「調理師」と間違えられる。実はそちらのほうが資格の必要な職業なのである。たとえば「中央競馬調教師」というのは国家資格であるし、「調理師」になるには各都道府県の知事の免許が必要である。

ところが現在日本ではピアノ調律師になるのに特別な資格制度は設けられていない。また調律師が「先生」と呼ばれることもまずない。それならどうして「師」なのだろうか。

ここで日本での調律師誕生のエピソードに思いをめぐらせてみる。
ずいぶん前に僕はバイエルについてのことを書いていたが、その時伊沢修二ひきいる「音楽取調掛」のことにも触れた。

日本に洋楽が輸入された当初、楽器の調律は多額の料金を払って外国人を雇っていたが、明治16年、「音楽取調掛」の一助教員が大変な苦労をして調律を習得したという。伊沢修二は次のように述べている。

「其調律は能く音律に達するに非れば、得て能わざる所なれども、本掛助教員中、其技術を伝習して調律を負担し得るものあり。為めに外国人を招きて、巨多の調律料を支出するを要せざるにいたれり。是れ単に理財上の論のみならず又以て音楽進歩の一端を証するに足るべし」(伊沢修二著「音楽唱歌伝習の事」)


このようにして誕生した日本初の「調律師」はもともと音楽取調掛の「先生」であったことから皆から「先生」と呼ばれていたことであろう。

またその「先生」のおかげで「巨多の調律料を支出」せずにすんだことからも当時の音楽界からしてみれば救世主的な存在であっただろう。また伊沢氏の文からも日本人が調律を取得したことによって「音楽進歩」への期待感が窺える。そう考えると「調律の先生=調律師」という職業名が成立するのも自然だと思う。

広辞苑を引くと「師」の意味の4番目のところに
「専門の技術を職業とする者」
とある。この定義に基づけば別に「師」が資格があるとか先生である必要はない。しかし、「師=専門の技術を職業とする者」という意味が成立する過程で、他の職業でも以上のようなエピソードがあったとすれば、なかなかのロマンではないか、と思う。


経過時間 1月 19日 23時間 46分経過
吸った煙草 0本
吸わなかった煙草 509本
浮いた煙草代 101ユーロ
延びた寿命 1日 18時間 25分





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Last updated  2005.09.03 23:33:01
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