テーマ:楽器について♪(3648)
カテゴリ:ピアノ雑感
9月と言えばドイツでは新しい学年のスタートである。
ピアノ技術者の修行(Ausbildung)も今月からスタートである。ドイツではピアノ技術者になろうとする者はピアノ工場や工房でマイスターのもとで修行する制度になっている。それで僕らの工場にも徒弟の新入生が2人やってきた。ひとりは木工職人の修行で、もう一人がピアノ技術者(Klavierbauer)の修行であった。 今日マイスターが僕のところにそのピアノの修行をするほうのレアリング(徒弟)を連れてきた。 「調律を教えてほしい」 僕は短期の研修生に整音を教えたことはあるが、それはある程度経験のある人たちに作業を見てもらったり、ちょっとしたヒントを与えるというものだった。 しかし、レアリングはまったく白紙である上に教える側にも技術を習得させる義務がある。 とはいえ僕自身どのあたりから教えるべきなのか良くわからなかったので、とりあえず見本を示して見たままを真似てもらった。 そうして思ったのは「上げ幅」の理屈を理解する必要があるということだった。 「上げ幅」はピアノの調律に特有の複雑な要素である。 例えばA(ラ)の音を440Hzに合わせたいが現時点で436Hzの時。 ピアノの弦は金属製のピンに巻きつけてあり、そのピンを廻すことで音程を変化させる。 そして436Hzからピンを廻していって440Hzまで上がったとする。 ここで廻す力を抜くと、また音が下がってしまう。 これはピンを廻している間ピンが「ねじれて」いるため、力を抜くと捩れがとれて張力がゆるむからである。 ここで上の図の話になるが、436Hzからピンを廻していって440Hzまで上がってもそこで止めず、「上げ幅」と呼ばれる高さまで上げてそこで一端力を抜いて、今度は軽くピンを反対方向に廻す感じでピンの「捩れ」をとる。この時440Hzになって安定しているわけである。 つまり、「上げ幅」とは、そこからピンの捩れが戻った時に目標の音程となる高さということである。 僕の場合436Hzから440Hzに合わせる場合は442ヘルツが上げ幅であることが多いが様々な条件で異なる。 上げ幅を決定するのはただ、調律師の「勘」である。 もちろん初心の内はこの「勘」が当たることはまれである。 練習や経験を積んでこの「勘」が的中するようになって作業時間は短縮され、精度は上がり、狂わない調律が可能になるのである。 ・・・ということを彼に理解して欲しかったのだが僕のドイツ語力ではその全てを伝えるのは難しかった。 明日は別の人が教えるので理屈のほうはそちらで教えてもらうとしよう・・・ 経過時間 1月 22日 2時間 20分経過 吸った煙草 0本 吸わなかった煙草 530本 浮いた煙草代 106ユーロ 延びた寿命 1日 20時間 10分 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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