テーマ:海外生活(7773)
カテゴリ:ドイツ生活
(昨日のつづき・・・ちなみに10月3日から続いてます・・・)
「M社の○○ですが、実はグロトリアンからうちのほうで代理で面接をしてほしいと言うことなんです」 M社というのはグロトリアンの日本総代理店で大阪にある老舗の楽器商である。正直、この電話をとった時、頭が真っ白になっていて何を話したかあまり覚えていない。 それまで返事を首を長くして待っていながら、いざ返事が来た時のことなど何も考えていなかった。しかもあのグロトリアン。まさかまさか、である。そのときの感情は驚き、喜び、放心・・・なんとも例えようがなかった。 ・・・とは言え、別に採用が決まったわけではない。M社のほうで面接し、その結果をグロトリアンに報告するというだけである。だから本当に喜べるのはあと何ステップも先の話である。 しかし、今まで夢の話でしかなかったのが具体的な動きが出ることで「現実の重み」をはじめて感じた。まさに絵の中から飛び出した餅のリアルな触感である。面接の日まで緊張でなかなか寝付けなかった。 面接当日、ガチガチに緊張してM社の門を叩いたが、M社ではこころよく迎えていただいたので、意外にリラックスできた。僕は会社訪問に似つかわしくない、夢のような話ばかりしていたように思う。何しろ夢中だった。 社長もこの夢見るドンキホーテ青年に関心を持たれたようだった。それで、「グロトリアンには私どもの方からは非常に好印象であったとお伝えしておきます。ただ、採用はあくまで向こうが決めるということはくれぐれもご承知おき下さい」という言葉を頂戴しその場を後にした。 まだ結果はわからないが、半ば採用された気分になっていた。友人たちと前祝いまでした。そして数週間後、グロトリアンからの手紙が届いた。心臓の音が聞こえるくらいドキドキしながら封筒を開けた。 ところが中の手紙を見て愕然とした。 「M社の方からは非常に良い報告を受けました。しかし、今年度はすでに定員を満たしており、残念ながら貴方の採用は見合わせることとなりました。」青ざめる僕の顔を覗き込んだ母が「だめだったの?」と聞いた。 「うん、何でも今年はいっぱいらしい・・・。何てことだ!」 そう言って僕はくさり始めた。それを黙って聞いていた父がおもむろに口を開いた。 「落ち込んでる場合じゃないぞ!まず、M社とグロトリアンに丁寧に対応して下さってありがとうございました、とお礼を言うのが筋だろう。」 なるほど、僕はうなずいた。そして父は続けた。 「今年がだめだと言ってるんだろう。だったら来年は確実になるようにこれから動いてみたらどうなんだ。」 父の助言をもとに、僕はドイツへ行ってグロトリアンの社長となんとか直接話してみようと考えた。それによって来年度の採用を少しでも有利にしようと・・・。 翌日さっそくM社に電話し、御礼とともに僕の計画を打ち明けた。そのことについて後日僕はM社に出かけて社長の相談に乗ることになった。 社長のお話では4月にフランクフルトでミュージックメッセがある。そこにグロトリアンも出展し、グロトリアンの社長ももちろんそこにいる。またM社の社長も毎年顔を出しているのでそこで3者懇談をしよう、と提案していただいた。 僕はその期間のドイツの拠点としてマンハイムのゲーテインスティテュートを思いついた。以前ルートヴィクスブルクからフランクフルトへ向かう時、ちょうど真中にマンハイムが位置していたのを思い出したのだ。 また、マンハイムはグロトリアンのあるブラウンシュヴァイクまで距離はあるもののICE一本で行ける。僕の目的にぴったりの場所だった。 そうしてまもなく4月がやってきた。僕は再びドイツへ飛び立った。 (つづく) 経過時間 2月 28日 1時間 48分経過 吸った煙草 0本 吸わなかった煙草 900本 浮いた煙草代 180ユーロ 延びた寿命 3日 3時間 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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