テーマ:楽器について♪(3648)
カテゴリ:ピアノ雑感
ひとことでピアノ製造と言っても、そこには無数の工程が存在する。
そしてその最終的な工程が整音なのである。 ということは、それ以前の工程に不備があれば作業を開始することもままならないことになる。 とりあえず、整音をするには整調(メカニック-アクションの調整)、調律がきちんとできていることが前提となっている。もし整音できないほどにそれが狂っていたのなら、その作業者にもう一度手直ししてもらうことになる。 これらがひとまず出来ているという前提で、整音作業者が今一度確認しなければならないことがある。それは弦とハンマーの状態が正しくあるか、ということである。 ではまず、弦のほうから見ていきたいと思う。(Saitenanhang prüfen) この図はピアノの弦を横から見たものであるが、弦は駒の上を通ってヒッチピンというピンに掛けられている。この図の上の方に「不可」と書いている分があるが、これはどちらも弦が浮いている状態だということがお分かりいただけると思う。 このように弦が浮いていると、ピッチも安定せず、調律も狂いやすい。また薄っぺらで安定感の欠けた音色になる。高音域においてはパワー不足の原因ともなる。この状態でハンマーの硬さを変えていっても満足な結果が得られるはずもない。それで、この部分が浮いていないかよくよく確認し、浮いていれば下まで打ち付ける。 ただし、駒の上を強く叩くと弦が駒に食い込んで逆効果となる。また、打ち込みにマイナスドライバーなど硬く鋭い物を使うと弦を傷つけることになる。弦が傷つくと断線の原因となるので、真鍮や銅の細い棒を使う。 弦がしっかりと打ち下ろされるとしっかりとした安定感のある音になる。 次にハンマーの状態、特にハンマーと弦の関係が正しいかチェックする。(Scheitelschräge) 下図の上の3つの点は弦の断面をあらわし、下の長方形はハンマーを上から(グランドは向こう側から)見た図である。 一番左のaが正しい状態である。3本の弦は水平で、ハンマーの面もまっすぐで弦が3本同時にハンマーの面に接触する。 b、cは弦水平が正しくない状態である。弦がそれぞれ奥、手前とバラバラである。こうなるとハンマーがそれぞれの弦を打つのが同時でなくなって時間差が生じる。すると好ましくない音を発したり、打弦エネルギーがロスしてこもった音になる。それで弦が水平になるように引き上げたりしごいたりする。 d、eは弦は水平でもハンマーの面が平行でないために同時接触しない例。これも音色としては上記同様の症状となる。これは整音作業の一つとしてペーパーで修正していく。 fもハンマーの面は平行ではないが、このように若干谷状になっている場合は、ハンマーフェルトの打弦時の変形で平行となるので、とくにフォルティッシモでパワーを発揮する。したがってハンマーの面は平行であるかこのように若干谷状になっているのが良い。 gは「整調」の領域になるが、ハンマーの中心と弦の中心がずれている状態、技術用語では「弦合わせ」と言う。長年これが正しくないまま使われるとそのまま弦跡がハンマーについてしまうので新品のうちに正しく矯正しておくことが大切。 ・・・というところが整音の下準備となる。要は弦やハンマーの状態を正しくするということなのである意味整音の本作業より重要と言えるかもしれない。実際、これらを行っただけで整音のほぼ完成に近くなっていることさえある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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