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カテゴリ:秩父巡礼
第27番札所
山号:龍河山(りゅうがさん) 宗派:曹洞宗 本尊:聖観世音菩薩 巡拝日:2008年5月15日 ----------------------------------------------------------------- 岩井堂への登り下りで心地よい汗をかいた。 そのほてりも冷めやらぬ中、二十七番・大渕寺へは、 車ならあっという間に到着する。 門前から境内へ至る石畳や境内は、とてもきれいに整備されている。 明治、大正と立て続けに火災に遭い堂宇のすべてを消失したという過去が、 皮肉にも、整然とした今のこの境内の美しさをもたらしたということだろうか。 門をくぐってすぐ左前方に立つ本堂も、その庭園美に映えている。 1996年に今の観音堂が再建されるまでのおよそ70年に渡って、 ご本尊さまはこの本堂に安置されていたという。 その観音堂は、本堂裏手、丘陵地の中腹に建てられている。 今年で築12年。まだまだ真新しく見える。月影堂という美しい名前がつけられている。 三間四面に向拝なしの宝形屋根。秩父札所の観音堂のスタンダードといった趣きである。 中を覗くと、ご本尊さまも心なしか居心地がよさそうに見える。 ところで、この観音堂の裏手をさらに登ってゆくと、その先に、 その名も護国観音という大きな観音さまが立っているという。 ここでピンと来る。岩井堂で出会った子供たちが言っていたのは、 きっとその観音さまだろう。ということは、また彼らに出会うかもしれない。 観音堂裏のカタクリ群生地を抜け、山を登ることにした。 しばらく登ると、案の定、山の上のほうから子供たちの声が聞こえてくる。 その声のするほうを見上げると、そこに突然ぬっと大きな観音さまが現れ、一瞬驚く。 体長およそ15m。昭和10年開眼。コンクリート製。 子供らはすでに観音さまのところへ到着していて、 その足元に登ったりして遊んでいる。 こちらも登ってみたかったが、さすがに思いとどまる。 それにしても、ここからの眺望が素晴らしい。 秩父の街をまさに一望する場所に、この観音さまはいらっしゃる。 この盆地全体を、この観音さまは見下ろし、見守っている。 その風景に見入っていると、男の子がひとり近寄ってきて、 オレたちの学校あそこだよ!と言って指を指して教えてくれる。 二十五番・久昌寺の近くの小学校だった。3、4年生合同の遠足らしい。 歩いて来たんだよ、と言っていたが、羊山公園の方面から歩いてきたはずなので、 本当に歩いてきたのかどうか、本当のところはわからない。 聞き返そうかとも思ったが、物騒なご時勢、先生の視線も気になり、やめる。 その小学校のちょうど上のあたり、 荒川対岸の丘陵地の遥か向こうに、ごつごつとした稜線の山が遠望できる。 あれはもしかしたら妙義山だろうか。こんな場所から見えるのか? 帰宅後、地図で調べてみると、方角的にはあり得ないこともなさそうだ。 そうだとすると、晴天時には浅間山なども見えたりするのだろうか。 ひとしきり眺望に浸り、山を降りる。 子供らはここで休憩らしく、女の子に、 「お菓子食べる~?」と声をかけられる。 「みんなで食べな」と断って、その場を後にした。 二十七番まで巡ってきて、これがもしかしたら最も、 他人と交流した瞬間だったかもしれない。 それがなによりうれしかった。 一人の巡礼は、気楽だが、時に心細いのだ。 山を登ってあたたまったのは、体だけではなかったのだった。 龍河山大渕寺 秩父市上影森411 tel.0494-22-5259 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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