【坂東】第五番 勝福寺:飯泉観音(しょうふくじ:いいずみかんのん)
【坂東】第5番札所山号:飯泉山(いいずみさん)宗派:真言宗東寺派本尊:十一面観世音菩薩巡拝日:2008年11月19日-----------------------------------------------------------------秩父札所の34ヶ所を制覇した勢いに乗って、坂東33ヶ所に挑むべく鎌倉へ乗り込んだのが、暑い盛りの7月25日。それから4ヶ月近く間隔が空いてしまい、あの真夏の暑さが嘘のように、風の冷たさに身を縮めながら旅をする季節になってしまった。5番目の札所は、小田原の郊外。とりわけこの日は風がとても強く、冬がもうすぐそこまで来ていることを実感しながらの巡礼となった。小田原へは、平塚方面から国道1号を通って入ってゆく。古くから東海道として栄えた面影が、とりわけ国府津辺りの建造物によく残されている。やがて、すぐ左手に海が見えた。せっかくなので海岸へと降りてみる。海風が強く冷たく、とても長い時間はいられなかったけれど、澄み切った空の色を映した海がとても美しかった。国府津の親木橋から内陸へ入り、一直線の道をひたすら西へと進む。あとから知ったことだけれど、実はこの道こそ“巡礼街道”と呼ばれ、勝福寺へ向かう巡拝者たちのために古くにひらかれた道だそうである。ただし、観音堂は南を向いて建っている。大きな屋根をかぶせた重厚な仁王門が、巡拝者を出迎えてくれる。1758年の建立で、小田原市指定重要文化財。仁王門をくぐると、左手に大きなイチョウの木が聳え立っている。枝ぶりも堂々としていて、その奥の観音堂を覆い隠すほどに広がっている。神奈川県指定天然記念物。また、境内には他にも大樹が多く残っていて、この樹叢全体も神奈川県の天然記念物に指定されている。小田原周辺はまだ紅葉には早いようで、葉は青くギンナンもあまり落ちていなかった。観音堂は1706年建立で、神奈川県指定重要文化財。五間四面の宝形造りで、壁の朱の彩色がずいぶんよく残っている。前部二間分が外陣となっていて、靴を脱いで入ってゆくことができる。格子の隙間から薄暗い内陣も少し見ることができた。大型の厨子は閉じられていて、この中にご本尊の十一面観音さまがいらっしゃる。ご本尊は県指定重要文化財で、開帳は33年に一度。次は2011年というから、あと3年足らず。その時はぜひまた訪ねてみたい。観音堂に向かって左手には、東向きと北向きの2ヶ所に向拝があるという非常に変わった形のお堂が建っている。東側には大日如来、北側には北向大師と書かれた額が掲げられている。実際には単なる宝形造りのお堂なのだけれど、角度によっては六角堂にも八角堂のようにも見え、おおいに興味が沸いた。この寺は、かの有名な二宮金次郎さんにも所縁のある寺だそうで、境内には、観音堂に向かってひざまずく二宮金次郎像もあった。薪も背負わず本も読んでいない金次郎像なんて、全国探してもこれひとつぐらいだろう。せっかくなので写真を撮ろうと思っていたのだけれど、境内を襲った突風に怯んだせいで撮るのを忘れてしまった。つまり、自分はそもそも勤勉というものには縁がないのだと思う。納経は、細い道を一本挟んだところに建っている庫裏でいただく。現在もそれなりに広い敷地を維持している勝福寺だけれど、周囲の道や町並みから想像するに、そもそもの寺域は相当広かったのだろう。仁王門から酒匂川に向けてまっすぐ伸びた道は表参道にあたるのだろうか。かつての門前の賑わいを想像するに充分な風情だった。飯泉山勝福寺神奈川県小田原市飯泉1161 tel.0465-47-3413