カテゴリ:マーラー演奏会(2011年)
佐渡さんのマーラー3番を聴きに、兵庫県立芸術文化センターを初めて訪れました。 エントランスに向かう通路には、佐渡さんののぼりが立ち並び、「佐渡城」にやってきたという実感をいだきます。 館内に足を踏み入れると、星々の輝きが想起されるような天井が、素敵です。まだ人のまばらな館内は、シンプルで洗練されたデザインの空間で、古楽の展示コーナーもあり、チェンバロによるゴルトベルグ変奏曲の映像と音声が流れていたりして、美術館風の落ち着いた佇まいです。
まだ閉まっている大ホール入り口には、本日の演奏会のチラシ(普通の小さいチラシ!)が掲示されています。これもなかなかお洒落です。 ホール掲示板には、「本日の公演のチケットは全席完売です」と貼り出されてありました。金曜日の15時開演の公演で完売ですから、土日の公演は当然満席でしょう。三日連続の3番公演を行うこと自体、チケットが売れる見込みがあるということですから、すごいことですし、それが実際に完売になってしまうというのは、すごいものです。 館内の喫茶店でコーヒーを飲みながら、ゆったりと開場を待っていると、中学生くらいの男女生徒数十名が引率の大人とともにぞろぞろと歩いてきて、館内に入っていきました。児童合唱団かもしれませんが、全く関係のない団体かもしれません。 やがて多くの人々が集まってきて、さきほどまでの閑静な雰囲気から一転、コンサートの雰囲気が盛り上がってきました。開場となり、ホールにはいりました。 プログラムには親切に、詳細なメンバー表がのっていました。演奏者107人のうちMCOのメンバーが総計47にものぼります。内訳は弦が60人中28人、木管が17人中8人、金管が19人中9人、打楽器とハープが10人中2人です。一方PACのメンバーは、コンマスの四方恭子さんを含めて、コアメンバー、レジデント・プレイヤー、アフィリエイト・プレイヤー、アソシエイト・プレイヤー(それぞれがどのように違うのかは良く知 りません)が、あわせて47名で、MCOと丁度同人数でした。これで合計94名。残りの13人はエキストラ奏者11人とスペシャル奏者(賛助出演のような ものと思われます)2人でした。スペシャル奏者のうち一人は、東京交響楽団の主席ホルン奏者ジョナサン・ハミル氏という、なんとも豪華なメンバーです。 会場のKOBELCO大ホールは、オペラ向けに馬蹄形の造りです。落ち着いた茶色の色調で、天井の照明はエントランスと同じで、星々が輝く夜空を見上げるよ うなイメージで、素敵な雰囲気です。ホールに早めに入ったので、すいているうちに、あちこちの席に座ってみました。サイドの客席は舞台方向に向けてかなり 斜めにセットされているので、舞台が見やすいですし、1階席も、平土間ではなく、列による段差がきちんとついていて1列目より2列目、2列目より3列目と 高くなっていくので、どの列でも舞台が見やすくできています。 客席は4階からなる構造ですが、1階のサイド席はほぼ2階相当の高さがあります。(4階だと実質5階相当で、かなり高いです。)1階サイドの前方は、オケのすぐそばになり、かぶりつきの雰囲気があります。 初日の僕の席は、2階サイドの前方寄り。普通の会場だと3階くらいの高さがあり、予想していたよりも舞台から遠くに位置していました。 オケの配置はごく普通(弦は対抗配置でなく通常配置)で、ティンパニ2セットを中央にして打楽器群が横一列にずらっと並べてあります。肝心のチューブラーベルは、打楽器の列の一番右側、すなわち舞台上手に、普通の高さに設置されています。合唱団席もごく普通に、舞台奥に、5列の雛壇が用意されています。独唱者用の椅子は、これも普通に指揮者のすぐ左側に席が用意されています。(なぜか指揮者のすぐ右側にも椅子がひとつ用意されていて、この目的は不明です。) 開演前、佐渡さんが舞台に出てきて、ベルリンフィルを振った凱旋報告と、マーラー室内管やヤングさんとともに演奏できることの感謝のお話しと、3番の簡単な曲紹介がありました。 オケが入場してきました。僕の席からはホルンが良く見えます。スペシャル奏者のうちの一人、スキンヘッドがおなじみの東京交響楽団の主席ホルン奏者ジョナサン・ハミル氏は、3番ホルンに位置しました。いよいよ演奏が始まりました。ホルンの主題が、8分音符をちょっと粘って力強く、堂々とした良い始まりです。 良く響くホールです。響きながらも、各声部の分離が明瞭に聴きとれるので、オケものにもオペラにもどちらにもいいように考えられているホールだなと思いま した。 第一楽章で、チェロやヴィオラが弱音器をつけて弾くところの発音が、ジャワっという感じの尖った音作りが強調されていて、現代的で新鮮でした。木管は、1番クラリネットを筆頭に、きつい音から柔らかな音まで、とても表現の幅のあるユニークな音が多く、耳新しさがありました。これが佐渡さんの指示なのか、あるいはMCO奏者の自発的な表現なのかは、良くわかりません。金管は、ホルンやトロンボーンはまずまずの響きでしたが、1番トランペットが、弱くやわらかく吹こうとしすぎて、しっかり出すべきところでも音に輝きと芯がなく、小さなミスも多く、不調でした。 こまかな話ですが第一楽章のシンバルは、冒頭のホルン主題部分も、それが再現される部分も一人という“シンバル奏者節約版”でした。折角合同オケでやるのですから節 約しないで欲しかったです。それからホルン主題再現の直前の舞台裏の小太鼓、これは舞台上手のドアをあけてそのすぐそばで叩いているようで、巨大で強烈な 音で距離感がまったくなく、舞台裏の意味がないなと思いました。 弦はいい音を出しているし、オケの各奏者は面白い表現をしています。しか しオケ全体として、各パートの音が、何か噛みあわず、まとまらず、ちぐはぐな感じが否めません。聴いていて疲れる感じの音です。おそらくまだ佐渡さんと二つのオケがあわせた練習時間が、十分ではないのでしょう。このまとまらない印象は、後続の楽章になっても同じでした。 第三楽章のポストホルンは、舞台下手の奥のドアが開き、その奥で吹かれました。これも音が近すぎて、距離感が感じられなかったのが残念でした。(ただしこれは僕の席が右サイドの前寄りで、開いたドアがま正面に良く見える位置だったことも関係していたことと思います。2、3日目は違う席で聴き、そこそこの距離感が感じられました。)音色から、使用楽器はポストホルンではなくてトランペット系かな、と思いましたが、良くわかりませんでした。 独唱の始まり「O Mensch!」の冒頭の長く伸ばす「O」が、デリカシーある絶妙な弱音で、思わず息をのむような美しさがありました。 第四楽章が終わったあと、佐渡さんは合唱団を立たせ、合唱団が体勢をとるまでの間合を少々とって、指揮台の譜面をめくって、第五楽章を開始しました。わずかな間合いではありましたが、アタッカとは言えない方式でした。また第五楽章が終わったときは、独唱者は自発的に座り、佐渡さんは独唱者と合唱団に指示を出して座らせました。そして両手をあげたまま、舞台上の雰囲気が静まるのを待ち、その後に第六楽章を開始しました。すなわちこれも、アタッカとは言えない方式でした。 ゆっくりめの終楽章で、悪くはなかったですが、なにしろオケの音がまとまりきらないまま、聴いていて音楽に入り込めないままに、曲が終わってしまいました。初日が終わって、正直マーラー室内管が半分近く参加しての演奏としては、全然物足りない、と思いました。シンバル奏者節約、舞台裏楽器の距離感不足、独唱者の拍手前提入場方式、そして4,5,6楽章のアタッカ不実行など、佐渡さんのこの曲へのこだわりが特別感じられなかったことも、残念でした。(考えように よっては、中途半端に奇をてらった変な方式をとるよりは、良いのかもしれませんが。。) 3番3本勝負、初日は、凡打に終わりました。これが残り二日でどこまで変わってゆくのか、きょうの演奏をきく限り、期待よりも不安が強いまま、ホールをあとにした初日でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.06.29 00:18:21
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