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じゃくの音楽日記帳

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2011.09.07
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インキネン&日フィルによるマーラー3番を聴きました。

日本フィルハーモニー交響楽団 第633回定期演奏会
9月2日、3日 サントリーホール

指揮:ピエタリ・インキネン
メゾ・ソプラノ:アンネリー・ペーボ
女声合唱:栗友会
児童合唱:杉並児童合唱団

インキネンは若いフィンランドの指揮者でヴァイオリン奏者でもあるそうです。2009年9月に日本フィル首席客演指揮者に就任し、マーラー撰集としてマーラーを取り上げ始めたところです。第1回は昨年12月の巨人。これは僕は聴きませんでした。第2回が今年4月に6番の予定でしたが、震災の影響でインキネンが来日不能となってしまい、山田和樹指揮によるマーラーの4番ほかに変更されました。したがって今回が、インキネンによるマーラー撰集の実質2回目で、僕が初めて耳にするインキネンのマーラーです。

どんなマーラーになるのでしょうか。まず初日(9月2日)から。

オケの弦楽器は通常配置で、下手から第一第二のヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスです。ハープ2台は下手で、ハープの後ろにチューブラーベル。
また独唱者用の椅子は指揮者のすぐ左前に置かれていました。合唱団は普通にPブロック(オルガンと舞台の間の客席)。すなわちオーソドックスな配置です。

開演時間となり、オーケストラ団員の入場と一緒に合唱団も入場してきました。Pブロックの中央に3列で児童合唱30名が並び、女声合唱はその左右に、児童合唱をはさむように並ぶという、左右対称の配置となりました。女声合唱は総勢60人という大部隊です。(したがって高さでいうと児童合唱と女声合唱は同じ高さになりました。チューブラーベルは舞台上でしたし、インキネンは配置の高さについてはあまりこだわっていませんでした。しかし左右対称というのはなかなか見た目も良い配置です。)

オケでちょっと驚いたのは、ホルンがアシストなしの8人だったことです。

さてインキネンが入場し、演奏がはじまりました。
インキネンの指揮がすばらしい!

基本テンポはやや早めでしたが、緩急変化が、決して小さいものではなかったです。この緩急変化が、曲調に非常に良くマッチしていて絶妙で、自然なので、聴いていてテンポが変化してもすぐには気づかず、そのうちにあれっ、いつのまにか結構テンポが遅くなっている、とか、逆にいつのまにか結構速くなっている、とわかる、という感じなんです。これほど自然で絶妙な緩急変化は、そうそうありません。インキネンのマーラー、これはすごいぞ、と驚きながら聴き進んでいきました。

そしてオケが、初日にもかかわらず、実に良く鳴っています。特に管がいい。これが日フィル?(失礼ごめんなさい)とびっくりするほど、いい音です。特筆すべきはホルンで、日フィルのホルンがこれほど力強く鳴るのを、僕としては初めて聴きました。他の金管も木管も、輪郭がしっかりした、いい音でがんばっています。僕は日フィルはそれほど聴いていないので、良くはわかりませんが、昨年4月に聴いた上岡さんによるメンデルスゾーン5番のときも、今年4月の山田和樹さんによるマーラー4番のときも、僕の従来のイメージどおりの、きめの細やかさにやや欠ける音だったので、今日のこの音の良さは、きっとインキネンが引き出しているのだろうな、と思いました。

第一楽章が進んでいき、インキネンの棒はますます生き生きとしてきます。イキイキねん。柔にして剛。打楽器も、鳴らすところはがんがん鳴らしますが、ちっともうるさくなく、気持ちよいです。力強さ、スケール、うきうきする楽しさ、喜び、すべて十分に表現している感じです。奇抜なことは何もやっていないのに、あっけにとられるほど新鮮な音楽が次々に生まれ、進んでいきます。なんと素敵な夏の行進。

ホルン主題の再現の少し前、いろいな打楽器が同時平行でそれぞれが勝手にドンドンドンとかやっていくところ(練習番号51-52)あたりなども、若い感性で歯切れ良く元気良いだけでなく、非常に音楽的な魅力をもって進行していきます、もう本当に素晴らしい。

いつも書いているように、第一楽章は厳しさというか剛の方向の表現に魅力的な演奏は比較的多いですが、楽しさというか柔の方向の魅力を十分に引き出している演奏はかなり少ないです。コバケンや大植さんがその稀有な例ですが、きょうのインキネンはそれらに匹敵する、柔の魅力を感じます。剛と柔の両方の魅力が出ているという点では、もしかしたらこれまで聴いたなかで最高の第一楽章かもしれないです。(ついでに細かいところを書いておくと、シンバルは冒頭のホルン主題提示時は一人、再現時には二人でした。)

演奏に小さなキズはいろいろとあります。しかし日フィルのメンバーが全力でインキネンにこたえようとしているのが伝わってきますし、ここまで音楽が素晴らしいと、それらのキズが全く気になりません。

すこぶるフレッシュで魅力的な第一楽章が終わりました。次の第二楽章は、前にも書きましたがこの曲の中で、ある意味一番難しい楽章と思います。凡庸に演奏すると、実につまらない音楽になってしまいます。第一楽章が良くても、第二楽章はあれっ?という感じの演奏も少なくありません。果たしてインキネンは?

インキネンの第二楽章、これがまた歌心にあふれた、実にすばらしい演奏です。これほど美しくチャーミングな第二楽章は、そうは聴けません。第一楽章よりも一段と緩急の差が大きいのですが、その切り替わりが本当に自然で、やはり「気がつくとテンポが変化している」という感じで、魅力的です。うっとりとして聴き惚れていると、途中で思わず涙が出そうになったくらいでした。第二楽章が終わって、これはすごいマーラー演奏に立ち会っている、という高揚感が、さらに強まってきました。もし「これで今日の演奏終わりです」と言われたとしても満足して帰ってしまいそうな、すばらしさ。インキネンのマーラーは本物です!

第三楽章が始まりました。僕としては近頃基本テンポがやや早すぎる演奏が多いように感じていましたが、インキネンのテンポは、本当に程よく、音楽に心地よくひたりながら進みます。ポストホルンは、僕の席(LBブロック)からはどこのドアが開閉したのか見えなかったですが、音は舞台左奥の方から聞こえてきました。あとで友人に聞いたところ、舞台上のドアでなく、2階のLAブロックの客席の後ろのドアが開いて、そこから聞こえてきたということでした。僕の席からは、程よい距離感をもって聞こえてきます。そして歌い回しも良かったです。すなわちインキネンはここの歌を奏者任せにせず、大きな仕草で丁寧な指示を奏者に出し、伸びやかな歌を歌わせていきました。大植さんが、この部分で同じように指揮していたのが思い出されます。今回のポストホルンは、目立つミスなく良かったですが、惜しむらくは音色でした。やや細身の音色で、これにもうひとつの魅力があれば、さらに良かったです。

第三楽章最後近くの、「神の顕現」の楽節。ここも実に素晴らしかったです。

長くなりすぎたので、この続き(第四楽章以後)は次の記事にわけて書きます。






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Last updated  2011.09.08 04:02:41
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