カテゴリ:原子力発電
これまで膨大な費用が注ぎ込まれ、まったく進展・実現の見通しがたたないで破綻している「核燃料サイクル」事業。この事業に、これまで一体いくらかかっているのか、なんと国は総費用を計算していません。それを東京新聞が、各方面への取材により概算した記事が1月5日に大々 的に出ていました。それによると、これまでの45年間に、少なくとも10兆円が投じられています。この巨額のお金、わたしたちの電気料金からまかなわれてきています。 東京新聞の記事によると、主な事業費は以下のようになっています。 なるほどほぼ10兆円です。一番多いのが再処理費用の積立金2兆4400億円ですね。これはこの災害からの復興費用にあてるべきだというまっとうな指摘が、 一時期されていましたが、その後うやむやになってしまっているようです。他にも六ヶ所村関連、「もんじゅ」関連、その他いろいろな費用が載っています。こ の中には、使用済み核燃料を再利用しないで廃棄する直接処分方式で必要となる費用は含まれていません。また核燃料サイクルで使うMOX燃料の製造費用も、 「非公表」(東京電力)のため含まれていません。そして過去の金額は現在の貨幣価値に換算していません。これらの点を考慮すると、実際の事業費は、もっともっと膨れ上がるということです。 次に財源。この膨大な費用の主な財源は、電気料金に上乗せされる「電源開発促進税」です。電力会社の出費分も、その税金とはまた別に、「総括原価方式」により電気料金に上乗せされ、電力会社が利益を上乗せして回収してきたのです。電力会社は、どんなに費用がかかっても、利益までつけて全部回収できるのですから、こんなおいしい無駄遣いはありません。無駄遣いがとまらないわけですね。 記事には、原子力資料情報室核燃料サイクル問題担当の沢井正子氏の話が載って い ます。それを引用しますと、“国の事業は、本来なら青写真を示して行うものだ。それが原子力政策では全くなく、情報を出さないまま青天井で予算が付いてきた。実用化のめどが立たないのに、本当にこれだけのお金をかける意味があったのか。どの国にもこんな例はない。” 記事にはさらに、立命館大学の大島堅一氏のコメントも載っています。 経済的な面は、以上です。しかしもちろん核燃料サイクルは、経済的な面だけでなく、本質的な大問題を抱えています。紙面にはそのあたりのことも、核燃料サイクルの現状を詳しく述べられていますが、それは今回は省略します。 原発推進したい人々は、さかんに「原発が再稼動しないと、電気料金が高くなる」と言っていますが、すでに原発が稼動していたときから、日本の電気料金は極めて高い状態でした。 核燃料サイクル事業をはじめとした、原発への野放図な出費がなければ、電気料金はもっと安かったことでしょう。フランスも、アメリカも、イギリスも、ドイツ も、技術的に実現不可能と判断され中止となった核燃料サイクル計画を、なぜ日本だけが見切りをつけられずにいるのでしょうか。いつまで無駄使いを続け、その尻拭いを国民に押し付け続けるのでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.10 10:57:22
コメント(0) | コメントを書く
[原子力発電] カテゴリの最新記事
|
|