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じゃくの音楽日記帳

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2012.12.30
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続いて書きます。佐渡さんが日フィルを振った悲劇的。

日フィル 名曲コンサート
指揮 佐渡裕
管弦楽 日本フィルハーモニー交響楽団

マーラー 交響曲第6番

2012年5月26日、横浜みなとみらいホール
2012年5月27日、サントリーホール

佐 渡さんのマーラーは、2011年の3番3回公演で大きなスケールによる名演を聴いたのが僕にとっては初体験でした。今年は日フィルと、6番をやってくれます。埼 玉、横浜、東京と3回公演です。3回行く選択肢もありましたが、今回は横浜、東京の2公演だけ行きました。このところ目覚ましい向上をしつつある日フィル を相方に、どんなマーラーを聴かせてくれるのでしょうか、楽しみでした。

佐渡さんがかつてPACと演奏したマーラー6番は、jupiterさんのお話によるとハンマーが3発ということでしたので、今回も3発バージョンなのでしょうか。

昨年NHKで放送された、佐渡さんがバーンスタインの思い出をひとりで自由に語る番組で、バーンスタインとウィーンフィルによるマーラー6番の練習の場にいたときの強烈な思い出を語っていたのも印象深かったので、今日の6番が一層楽しみになっていました。

また2011年の東日本大震災のあと、関東一円ではしばらく6番が演奏されませんでした。震災翌日の3月12日に 金聖響さんと神奈川フィルが予定通り6番の演奏会を敢行しましたが、これは震災後というより震災中ともいうべき例外的な事例でした。本来は日フィルは昨年インキネンと6番をやるはずだったのですが、直接的にはインキネンが来日不能という理由で、山田和樹さんが急遽ピンチヒッターとなり、6番の代わりにマーラー4 番を振ったのでした。震災後に6番を演奏することがはばかられたことと思います。今回日フィルにとっては、2011年に封印した6番を、いよいよ佐渡さんと演奏する、ということになります。


まず5月27日の横浜公演。

会 場のみなとみらいホールに入って、ステージを見渡すと、上手奥にセットされたハンマーセットが一際目を引きます!ハンマー自体は木製で、鉄のタガが厳めし い外観ですが、大きさは普通です。特筆すべきはハンマーが叩く台の方です。雛壇の上にさらに階段4段ほど高くしたところに、木製の巨大なテーブルを逆さに 置いたような感じの木枠が組んであり、さらにそのうえに畳一畳以上の大きさはゆうにあろうかという合板数枚を重ね置きしてあります。ハンマーはその巨大な 装置の上にそっと置かれています。もしかしてもしかすると、ハンマーで、この巨大な叩き台を叩くのでしょうか。いやどう見ても、そのようにしか見えませ ん。これほどの巨大な台を見たことがありません。この装置で、3回のハンマーを体験することになるのかと、非常に楽しみになりました。ハープ2台は舞台の 下手で、ハープの横、客席のすぐ前にチェレスタが置いてありました。弦は通常配置。

プログラムを見てもう一つ楽しみに思ったのが、楽章順です。第二楽章スケルツォ、第三楽章アンダンテという、今どき貴重な順番です。歴史的事実がどうであろうと、僕はこの順番が断然好きです。

第一楽章、アルマの主題をじっくりとした呼吸でやってくれて、なかなか良いです。楽章途中のカウベルは、普通に舞台下手のドアを開けてその奥からで、いい音色です。第二楽章スケルツォもいい感じ。

第 三楽章アンダンテ。比較的ゆっくり進み、後半はさらにテンポを落とし、非常にゆっくりとしたテンポでした。舞台上のカウベルは、席の関係ではっきりとは確 認できなかったのですが、下手側の打楽器奏者が多分三人。うち二人は両手に一つずつ持ったカウベルを鳴らし、もう一人は片手に持ったカウベルをマレットで 叩いているようでした。

第四楽章。
再び舞台裏のカウベルは、下手側のドアを開けてその奥からでした。一方弔いの鐘は、上手側のドアを開けてその奥からでした。この鐘は、おらく板の鐘を使ったと思われる、渋い響きでした。

圧巻はハンマーでした。舞台の上手奥の打楽器奏者が、終楽章でむち、舞台裏の弔いの鐘、ハンマーと3役を担当。じっと座っていて、ハンマーの打撃の瞬間が近 づいてくると、おもむろに椅子から立ち上がり、ゆっくりゆっくりとハンマー台に向かい、4段の階段をゆっくりと登り、ハンマーをゆっくりと握り、構えて、 打撃!打撃したあと、ハンマーを握ったままほとんどハンマー台の上に倒れかかったてぐったりと打ちのめされたように、そのまま数小節の間身じろぎもせず、 自らの打撃にダメージを受けたような、見事な(^^)パフォーマンスでした。打撃音自体はオケの巨大な音に埋もれて良く聴こえませんでしたが、椅子から立 ち上がってから打撃後までのその一連の所作の視覚的アピール性は絶大でした。特に4段の階段をゆっくりと一段ずつ登るとき、まるで死刑台の階段を登ってい くような緊迫感がありました。もちろん真剣にやっているのでしょうが、どことなくユーモラスでもあり、インパクト絶大でした。そしてこのハンマーが三度繰り返されたわけです。僕は実演で3度のハンマーに接したのは初めてです。なかなかいいものですね。


ホルンは、主席の方も立派な演奏だったですが、特に称えたいのはホルン隊全体が一斉に強奏するときのパワーが見事だったです。トランペット隊も、外人のうまい首席を筆頭に、全員がきっちりと吹いていたのは感心しした。木管セクションもうまい。

僕は日フィルはそれほどしばしば聴いていないですが、今年聴いた二つのマーラー(インキネンの5番、今回の佐渡さんの6番)は、それまでの日フィルのイメー ジを払拭するような、音のエッジがきっちりした音になっていたのには驚くばかりです。一昨年まではこういう音は聴いたことがなかったように思います。音楽 監督ラザレフさんのトレーニング効果、あるいはオーケストラ公益財団化に向けての努力、こういったものの相乗効果でしょうか。ともかく非常に立派な演奏で した。そして何より、全曲とおして、佐渡さんの熱い思いがこもった、充実の6番で、大満足でした。

翌日のサントリー公演は、さらに深みがました演奏になっていました。佐渡さんと日フィルに感謝!






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Last updated  2012.12.31 02:29:08
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