引き続き今年のコンサート、書きます。
指揮 マイケル・ティルソン・トーマス
サンフランシスコ交響楽団
ピアノ ユジャ・ワン
ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲
マーラー 交響曲第5番
11月19日 サントリーホール
マイケル・ティルソン・トーマスを聴くのは今回が2回目です。最初に聴いたのは、2009年7月にサントリーでPMFをふったマーラー5番でした。PMFの若いパワー全開の気持ち良い演奏でしたが、マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー解釈をしっかり味わうという演奏ではありませんでした。今回、待ちにまたサンフランシスコ響を率いての来日で、今度は彼のマーラーが充分味わえるのではと楽しみにしていました。
今回はアジアツアーということで、マカオ、香港、台北、上海、北京とめぐって、ツアーの最後が東京でした。ラフマニノフの2番とマーラー5番を交互に演奏してきて、本日のマーラー5番は、このツアーの4回目、最後となる演奏でした。
ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲、生で聴くのは多分初めてです。この曲の有名な第18変奏は、ウィキペディアによると7つの映画に使われているということですが、その中で僕が見たのは1980年の「Somewhere in Time (ある日どこかで)」。タイムトラベルのラブロマンスもので、実に効果的に音楽が使われていて、映像も美しくせつなく、大好きな映画です。
この日は寝不足で非常に疲れていて、この曲が始まってまもなく寝てしまい、この第18変奏ではっと目覚め、そのあとまた寝てしまいました。ごめんなさい。
さてマーラー。オケは両翼配置で、コントラバスは下手側に8本。打楽器がセンターで、ブラスはかなり上手側によっていたのがちょっと珍しかったです。ホルン7人が横一列で、その後ろにトランペット、トロンボーン隊が陣取りました。
冒頭のトランペットのファンファーレから、もう完全に引き込まれました。陰影に富む、という言い方くらいしか思いつきませんが、それでもあまりしっくりきません。なんというか、ひとつひとつのフレーズに、さまざまな感情が含まれているのです。悲しみ、あきらめ、絶望のフレーズがあって、そのあと憧憬のフレーズがあって、というのではないのです。ひとつのメロディー、ひとつのフレーズに、それらが同時にあり、聴いていて胸がせつなく熱くなります。曲の最初から最後まで、そうでした。結果として、第一楽章→最終楽章への暗→明という単純な図式では到底語れない、深い深いマーラー5番がありました。
これは衝撃でした。慣れ親しんだはずのマーラーの音楽が、こういうものだったとは。ティルソン・トーマスのスコアのおそるべき読みの深さ。
2009 年2月の大植&大フィルの5番は、マーラーの意図からそれた究極の5番でした。今回のティルソン・トーマス&サンフランシスコ響の5番は、マーラーの意図に即していて、その方向を究極まで推し進めた演奏でした。もしかしたらマーラーの意図を超えたところまで達しているのではないか、とさえ思いました。
バーンスタインの思いを継ぐ者たちによる、それぞれの究極の5番に、深く敬意と感謝を表します。