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じゃくの音楽日記帳

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2015.09.21
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大植&大フィルのマーラー3番、二日目です。

今日の僕の席は前から3列目、ほぼセンターのかぶりつきです。

大植さんの演奏スタイルは昨日と同じです。冒頭の「謎のギアダウン」をはじめとし、短いテンポ変化が頻繁に行われます。しかしそれに今日のオケはしっかりとついていきます。昨日とまったく違います。

昨日の演奏後、今日の本番までに何があったのでしょうか。ゲネプロ前に、オケの中核メンバーが非常集合して自主練したのだろうか、などと妄想が浮かぶほど、昨日とは全く違うパフォーマンスです。第1楽章、第3楽章、昨日散見された大事故箇所はことごとくきっちりとクリア。一方第3楽章のポストホルンは今日も好調に、素敵な歌を奏でてくれます。

ただ第2楽章も、第3楽章も、テンポがやはり速めで、自然の息吹というか、柔らかさというか、大植さんのマーラーの最大の魅力と僕が思っている生命を肯定するあたたかな歌が、今ひとつ不足気味と感じてしまいます。

そして迎えた第4楽章は、聴きものでした。

僕がシュトゥッツマンさんの3番の歌を聴くのは2回目です。最初に聴いたのは、2002年にシャイー&コンセルトヘボウが演奏したとき、予定されていたデ・ヤングさんが体調不良で来日できず、そのときの代役として歌ったときでした。このときの3番は終楽章をはじめとして大感動の演奏でしたが、第4楽章のことは特に記憶に残っていません。第4楽章はもちろん好きでしたが、当時はまだこの楽章の深みを僕はあまり理解していませんでした。そういう僕を第4楽章に開眼させてくれたのが、2005年の大植&大フィルの3番でした。このとき、大植さんと寄り添うようにして歌われたアルトの坂本朱さんの歌が、僕の胸にしみわたり、涙があふれて仕方がありませんでした。それまで幾度となく聴いてきた3番で、こういう第4楽章の体験は初めてのことでした。その後、2010年のヤンソンス&ラーソンさん2011年の佐渡&デ・ヤングさん2013年のアルミンク&藤村さん、つい先日のノット&藤村さんなどが、特に忘れがたい名唱として心に刻まれてきました。

この日も深い歌が聴けました。シュトゥッツマンさんの歌はもちろんのこと、楽章の半ばすぎから入ってくるコンマス田野倉さんのソロが、素晴らしかったです。田野倉さんはすごい気合で、ときどき腰を浮かしながら、シュトゥッツマンさんと絶妙に絡みます。この部分で、大植さん、シュトゥッツマンさん、田野倉さんの3人の絡みをかぶりつきで味わえたのは、贅沢すぎる極上のひとときでした。夜の深みがじっくりと心に沁みました。あとここはホルンの絡みも重要ですが、今日はホルンもきっちりと決めてくれて、素晴らしい第4楽章が成就しました。

そして最終楽章。オケの頑張りは見事だったです。管は充実し、かぶりつきで迫ってくる弦セクションの張り詰めた緊張感は凄かったです。コンマスの田野倉さんはもちろん、セカンドトップの田中美奈さんも眼光するどく、気合が入って素晴らしかったです。ヴィオラトップはかつての小野さんから代わった竹内さんという方で、この方もこの演奏会で大フィルを退団するということを後になって大フィルのツイッターで知りました。時はどんどん流れていくのですね。そして特筆すべきはチェロのトップの近藤浩志さん、この方の熱い演奏にはいつも感動させられます。今回の大植さんは、初日の記事に書いたように、主要主題のBメロをテンポを落としてじっくりと歌い上げるやり方でしたので、Bメロの聞かせどころの多いチェロで近藤さんが大活躍していました。近藤さん健在で良かった。

終楽章の途中(多分練習番号6の半ば、第64小節)で、ホルンのソロの開始部分の1小節が抜け落ちてしまいましたが、これはご愛敬ですね。ここ以外は全曲通して目立つ傷は皆無で、十分に健闘したホルン隊でした。

最後の和音の余韻が消えたあと、今日もまた完全な静寂がひとしきりホールを支配し、大植さんがタクトをおろしてから、大拍手が始まりました。そして今日はオケの皆様の表情がまったく違います!昨日の演奏を乗り越えての今日だけに、皆様の喜びはひとしおでしょう。そして田野倉さんの素敵な笑顔!シュトゥッツマンさんと満足げに握手を交わされてました。今日の第四楽章のソロは、田野倉さんご自身も会心の演奏だったと思います。

やがて田野倉さんを筆頭にオケが盛大に足踏みして大植さんを称えます。昨日はなかった場面です。これがあって本当に良かった!やがて長い拍手がついに引き、大植さんが引っこみ、オケが退場し、続いて合唱団が退くときに、大植さんが舞台左奥に再びひょっこりと出てきて、退場する合唱団員と次々にハイタッチをしていました。

なお本日も譜面台が置かれ、上には昨日も置かれていた黄色い表紙のスコアが置かれていましたが、この日は一度も表紙をめくることなく、ただそこに置かれているだけでした。大フィルのブログによると、なんと師バーンスタインの使っていたスコアだそうです。

大植さんの要求にこたえ、そのドライブにしっかりと反応し、燃えた大フィル。大植さんと大フィルの絆の強さを再認識した二日目で、感動しましたし、非常にうれしい体験でした。ただ、の大植さんが目指しているマーラー3番の世界は、今の僕の求める3番世界とはいささか異なるということを、確認することにもなった二日目でした。

特に最終楽章の個性的で斬新なテンポ設定は、現在の僕には違和感が大きいです。かなり速いテンポ設定の上で、主要主題のBメロ部分だけを、ぐっとテンポを落としてじっくりと歌いこむ大植さん。Bメロの歌いこみ部分だけを取り出せば素晴らしいですけれど、全体としてのテンポ変化が大きすぎます。二日目は初日よりもさらにテンポ変化の振り幅が大きいように感じました。

しかもこのテンポ変化の振り幅が、楽章の後の方になればなるほど巨大化していく感じがしました。終楽章の後の方のAメロ部分で今回の大植さんのとったテンポは、そもそも物理的にもかなり速いのですが、Bメロ部分が遅いだけに、余計に聴感上速く感じられてしまいます。特に最後近くの一連の音楽は、その傾向が著しかったです。極めつけは練習番号26~27の金管コラール以後です。ここの金管コラール(Aメロ)をあっさりと速く過ぎたあと、練習番号28からのBメロ部分をゆっくりじっくりと歌います。そのあと練習番号29からの主要主題Aメロの最後の高らかな歌の、速いこと速いこと。

二日目にこの部分を聴いていて、かつて聴いたチョンミョンフン&N響の3番(2011年)の終楽章の同じ部分を、ふと思い出してしまいました。チョンさんはそのとき終楽章で、非常に個性的なテンポ変化を採用していました。詳しくはその記事に書いたとおりですが、終楽章の3ヵ所(第212小節、第282小節、第292~第295小節)を、突然ほぼ倍位にテンポアップしたのです。いずれもごく短い部分で、そのあとすぐテンポを戻しました。このうち3ヵ所目の第292~第295小節は、練習番号の29の後半です。まさに主要主題のAメロの最後の高らかな歌い上げの途中です。

チョンさんは、練習番号29のうち、上記の4小節だけを速くしました。今回の大植さんは、練習番号29を全部速く通しました。チョンさんの方法とは、狙いも、やっていることも全く異なっているのですが、結果的に、その4小節(第292~第295小節)はテンポが速い、それもかなり速い、ということが共通したわけです。それでふと、そこを聴いていてチョンさんの演奏が頭に思い出されてしまった次第です。

チョンさんの演奏を聴いたとき、その恣意的なテンポ変化に非常な違和感を覚えました。小細工というと言い過ぎかもしれませんが、そのような作為により、大河のようにとうとうと流れていき悠々と広がるはずの音楽世界が、ぶつぶつと分断され矮小化してしまうように感じたからです。

今回の大植さんのテンポ変化は、チョンさんのものとは元々の発想も、実際にやっていることも全く異なるものです。しかし特に楽章最後近くのこのあたりのテンポ変化が非常に大きくて、僕としては、折角のマーラーの音楽の悠然とした流れを妨げてしまうように感じてなりませんでした。

とは言っても、たとえばマーラー自身の指揮した終楽章は、案外こういう大植さんスタイルに近かったのかもしれません。大植さんは時代の最先端を行っていて、僕がそれにまったく追いつけていないのかもしれません。実際、2012年に僕が大きな違和感を感じた第一楽章冒頭ホルン主題のギアダウンは、その後アルミンクやノットなど他の指揮者も同じようなことをやっているわけだし、それを聴く僕の違和感も、かなり減ってきています。いつか、僕の聴き方も変化(進化?)し、今回の3番の意味をそのときになって理解できるのかもしれません。そうなりたいものです。

実存に根差すゆえにこそ、常に変化し続けていく大植さんのマーラー世界。このところの2014年の6番、今年の3番を聴くと、現在の僕の求めるマーラー世界とは、距離がだんだんと広がって来ている感じがします。しかし、2005年の3番、2009年の5番、同9番(ハノーファー北ドイツ放送フィル)、2011年の大地の歌、2012年の9番、2013年の2番と、数々の素晴らしいマーラー体験を与えてくれた大植さんですし、その影響で僕の求めるマーラー世界も変わってきていると思います。大植さんには引き続き新たなるマーラー世界を開拓していっていただきたいし、今後もそれを体験し、いろいろな刺激を受けとめていきたいと思います。

ぐすたふさんと飲んだ初日の「やけ酒」の味、さらにヒロノミンさんも交えて歓談した二日目の「美酒」の味、どちらも格別でした。ありがとうございました。また、大植さんのマーラー世界を一緒に体験しましょう!

2005年の3番の感想を、当時の「招き猫」に書きました。細かいところは全然覚えていないけれど、最後に「また数年とか10年後くらいに、大植さんの3番を聴きたいと思います。」と書いたことは良く覚えています。2012年の3番のブログ記事にも、「また10年後くらいに聴かせてください」と書きました。今回もまた同じ言葉で締めくくりたいと思います。

大植さん、また数~10年後くらいに、大植さんの3番を聴かせてください。





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Last updated  2015.09.22 02:36:20
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