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じゃくの音楽日記帳

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2016.02.10
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カテゴリ:音楽一般

ヤナーチェクの伝記映画、「白いたてがみのライオン」を見てきました。

2月2日、新国立劇場中ホール
「白いたてがみのライオン ~大作曲家ヤナーチェクの激しい生涯~」
1986年 チェコ映画  監督:ヤロミル・イレシュ

この上映会は、3月に新国立劇場で上演されるオペラ「イェヌーファ」の関連イベントとして、入場無料で行われたものでした。開場時刻の2~3分前に到着すると、すでに入場待ちの長い行列ができていて、ちょっとびっくりしました。でもスムーズに入場できて、自由席で、ほぼセンターの良席に座れました。無料なのに解説のチラシが配布され、ホワイエにはヤナーチェク関連の書籍なども展示されていて、なかなか良い雰囲気でした。

伝記映画と言っても、生涯をまんべんなく紹介するというものではなく、前半はオペラ「イェヌーファ」を軸に、40代~60歳頃までのヤナーチェクの、イェヌーファ作曲の苦労、愛娘オルガの死、プラハ初演までの苦労が中心に描かれていました。後半は、年下の人妻カミラに寄せる情熱的な愛を軸に、74歳で没するまでの10年あまりのヤナーチェクが描かれていました。

ヤナーチェクの生涯についてはほとんど予備知識なく見に行ったので、細かなところはわかりにくいことも多々ありましたが、熱しやすく激しく、自分に正直で、気まぐれで自分勝手という、ヤナーチェクという天才の人間像について、大体のイメージがつかめました。そして、しばしば挿入されるヤナーチェクのオペラ場面の音楽が本当に素晴らしく、2時間を超える長編映画でしたが、いささかも飽きることなく、とても興味深く見ました。恋多きヤナーチェクは、60歳台で出会ったカミラ(38歳年下!)に熱い思いを寄せ続け、それが晩年の10余年の創作の原動力となったということでした。弦楽四重奏曲「内緒の手紙」も、カミラへの手紙ですね。でもカミラはある意味冷静というか、ヤナーチェクと距離を置いてつきあったようです。それだけに一層、ヤナーチェクの創作のエネルギー源になったのかもしれません。

この監督は、ヤナーチェクに関する他のドキュメンタリーや、マルティヌーや、ルドルフ・フィルクスニーに関するドキュメンタリーなども作っているということで、それらも是非見てみたいと思いました。


映画をみた後で、ずっと前に古本で買って読んでいなかった、ホースブルグ著「ヤナーチェク 人と作品」(和田旦・加藤弘和 共訳、泰流社 1985年)を、この機会に読もうと思って少し読み始めました。すごく面白そうなのですが、400頁を超えるがっしりした大著で、ちょっとすぐには読めそうにありません。とりあえずこちらは後回しにして、やはり買ったまま本棚の奥に眠っていた、佐川吉男遺稿集3「チェコの音楽-作曲家とその作品」(芸術現代社 2005年)のヤナーチェクの項を拾い読みしました。以下に、ヤナーチェクの生涯の概要を、自分の頭の整理のためにまとめておきます。(年齢は、誕生日の関係などから多少の誤差を含みます。)

1854年生。 チェコのモラヴィア地方の田舎フクバルディに、14人兄弟の10番目として育つ。父は小学校の教員で、音楽にも造詣が深かった。
11歳、モラヴィアの中心都市ブルノの修道院付属の学校に送られ、そこの聖歌隊に入る。
12歳、父死去。続いて母も死去。
18歳、ブルノの師範学校を卒業し、その学校の教員になる。
22際から、ブルノ・クラブの合唱団と管弦楽団の指揮者を34歳まで務める。
23歳頃、「弦楽のための組曲」「牧歌」完成。
25歳頃から、人の話し言葉の旋律曲線の研究に打ち込み始める。
27歳、ブルノ師範学校長の娘ズデンカと結婚。ブルノ・オルガン学校の創立に参画し、そこの校長となる。
31歳頃から、モラヴィアの民謡の研究に打ち込み始める。
33歳、最初のオペラ「シャールカ」完成。
36歳、長男ウラディミールを2歳で亡くす。
40歳、3作目となるオペラ「イェヌーファ」の作曲に着手。
48歳、長女オルガが21歳でチフスで病死。その3週間後に「イェヌーファ」完成。しかし作曲者の望んだプラハ初演は、指揮者コヴァジョヴィッツに拒絶される。
49歳、オペラ「イェヌーファ」、ブルノで初演され好評を博す。敬愛するドヴォルザーク死去。
51歳、ピアノソナタ「1905年10月1日」完成。
54歳、ピアノ曲集「草陰の小径にて」第1集完成。
58歳、ピアノ曲集「霧の中で」完成。
61歳、指揮者コヴァジョヴィッツによるオーケストレーション改訂という条件つきであったが、コヴァジョヴィッツの指揮によりオペラ「イェヌーファ」がようやくプラハで初演され大成功をおさめる。ヤナーチェクの作曲家としての名声が世界に広まるきっかけとなる。
64歳頃?、カミラと出会う。
64歳、「タラス・ブーリバ」完成。連作歌曲「消えた男の日記」完成。
65歳、プラハ音楽院ブルノ分校を発足させ、71歳までマスタークラスで作曲を教える。
66歳、6作目のオペラ「カーチャ・カバノヴァー」完成。
67歳、ヴァイオリン・ソナタ完成。
69歳、7作目のオペラ「利口な女狐の物語」完成。弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」完成。
71歳、「シンフォニエッタ」完成。
72歳、「グラゴル・ミサ」完成。  
73歳、第9作(最後)のオペラ「死者の家から」完成。弦楽四重奏曲第2番「内緒の手紙」完成。
74歳、故郷のフクバルディ近くの森の中で、カミラとその息子とハイキングの途中で、はぐれたカミラの息子を探し回っているうちに風邪をひき、肺炎になり、近くの病院に入院し死去。

生涯のほとんどをモラヴィアですごし、モラヴィアの話し言葉や民謡に基づく独自の音楽語法と、独自の音楽形式による個性的な作品を書いたヤナーチェク。その独自の作風が、オペラ「イェヌーファ」で確立したということです。「イェヌーファ」を観るのは初めてですので、来月の上演、とても楽しみです。






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Last updated  2016.02.11 00:11:01
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