熊本地震、被災された方々に救援の手が早く届くこと、地震が収束することを願います。
熊本の地震が起こる少し前、4月3日に放送されたNHKスペシャルは、シリーズ「巨大災害 日本に迫る脅威」の一つで、「地震列島 見えてきた新たなリスク」という番組でした。この番組を、録画しておいて見たのが、偶然にも今度の地震が起こる前日の4月13日でした。内容の一部がまさに今回の熊本地震のような直下型地震のリスク評価に関する新しい手法をわかりやすく解説するものでしたので、それを書いておこうと思います。
いくつか紹介された新しい手法のうち、番組の中ほどで解説されたのが、人工衛星からGPSで観測して、地表の動きをリアルタイムでとらえる方法でした。これにより大地が今どう動いて、どうひずみがたまっているかをかなり評価できるということでした。日本では観測点が現在約1300箇所にあるそうです。
そもそも図1に示されるように、西日本はユーラシアプレートの東端にあり、南海トラフの北西に位置しています。西日本は、図の右下のフィリピン海プレートの沈み込みのために、北西方向に常に押されています。
図1
その押された結果、大地がどのように動いているかが、GPSデータによって、最近詳しく明らかになっているということです。京都大学防災研究所の西村卓也准教授が解析した、西日本の動きを示したのが図2(2005年~2009年のデータ)です。図に矢印で示されたベクトルが、各地点の動きの大きさと方向を示します。硬いもの(西日本)が硬いもの(フィリピン海プレート)に無理やり押されて動いているわけですが、その動きが場所によってかなり異なります。
図2
例えば四国は、動きは大きいですが、どの地点もほぼ北西から西北西方向と、そろった方向に同じように動いています。しかし他の地域には、複雑な動きをする場所があります。番組では複雑な動きの一例として九州が解説されました。図3に示すように、九州では、大分あたりは西に動き、長崎あたりは南東に動き、鹿児島あたりは南に動いているということです。
図3
一方、これまでに九州で発生した地震の震源分布を示したのが、図4です。図には地表からの深さの情報も含まれています。比較的浅いところまでに、三本の線上に、驚くほど集中しています。深さを加味すれば、壁のように連なっているという感じです。
図4
図3と図4を重ねあわせたのが図5です。地表の動きの方向や大きさが異なる境界地域で、地震が多発しているということです。西村氏によると、地表というか地殻は、動き方の違いから異なるブロックにわけられ、ブロックとブロックの境界で歪みがたまりやすく、地震が発生しやすいと考えられる、ということでした。今回の熊本から大分にかけての地震の震源分布も、まさにこのブロックの境界に一致します。
図5
西村氏による、GPSデータから見た、西日本のブロックが、図6です。
図6
1891年濃尾地震や、1995年阪神淡路大震災は、まさにブロックの境界で起こった大地震であり、その結果大きな活断層が生じたことが紹介されました(図7,8,9,10)。また2015年秋には鳥取で、これまで活断層の指摘されていないところに中規模地震が多発したことがあり、それもこのブロックの境界であったということです。
図7,8 濃尾地震
図9,10 阪神淡路大震災
図11は、ハーバード大学のブレンダン・ミード教授による、日本全体のブロックわけだそうです。西日本をみると、西村氏のものとおおむね似ています。
図11
このような地殻のブロック化は世界の地震多発地帯についても同じようなことがあてはまること、日本は特にブロックが多くて地震が起こりやすいということが指摘されていました。
番組を見て、活断層は、かつてそこに地震があったという証拠にはなるが、活断層が確認されていないからと言って安心はできないこと、その地点に活断層があるかないかをミクロ的に評価してもあまり意味がないこと、むしろこのようなブロックの視点から見ることが、直下型地震のリスクの本質的な評価に迫れる、と理解しました。ご興味ある方は、NHKオンデマンドでご覧ください。
続きは、次の記事に書きます。