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じゃくの音楽日記帳

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2016.12.04
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ヤンソンス&バイエルン放響のマーラー9番を聴きました。

指揮:マリス・ヤンソンス
管弦楽:バイエルン放送交響楽団

マーラー 交響曲第9番

11月27日 サントリーホール

日本ツアー5回公演の4回目。マーラー9番は兵庫公演に次ぐ2回目です。僕にとってヤンソンスのマーラーは、コンセルトヘボウとの3番に次ぐ体験となります。

弦は通常配置で、コントラバスは舞台上手に8台で、そのすぐセンター寄りに、ホルン4人が2列で並びました。丁度その左右対称の位置に、ハーブ2台。舞台最後部センターにはティンパニー、そこから下手側に打楽器隊が並び、ハーブにつながります。ティンパニーの前にトランペットとトロンボーンとテューバが一列に並びます。

要するに、ほぼ普通の配置です。幾つか用意されていたシンバルは、たまに見られるような巨大な物はなく、普通の大きさのものでした。あと、トロンボーンなどの前の席の奏者のために、頭の後ろに小さな遮音板を良く見かけますが、今回はそれもなく、シンプルなステージです。ちょっと変わった物としては、黒い巨大な傘立てのような物が一つ置いてあり、なんだろうと思っていたら、テューバのミュートを置くためのケースでした。他に見慣れない物と言えば、指揮者の前に置かれた譜面台でした。譜面を置くための板面の少し下に、ちょっとした物を置ける板が一枚、床と平行にセットされていたのです。指揮棒を置くためかなと思いましたが、結局そこは最後まで何も置かれることはありませんでした。

ヤンソンスが現れ、おもむろに演奏が始まりました。ホルンとハーブの導入に続き弦の主題が入って来たとき、その響きの優しさ、豊かさ、ふくよかさというか、そこに含まれる愛の大きさというか、そういうものの素晴らしさに、一気に引き込まれました。特別に優れた演奏が皆そうであるように、始まった途端に、これからのしばしの音楽がとんでもないものになるぞ、という幸福な衝撃を強く感じた瞬間でした。ヤンソンスはゆっくりした足取りで、丁寧な音作りで進めて行きます。指揮棒を右手で持つことは少なく、左手で指揮棒の中程を持って、右手の手振りによる微妙なニュアンス作りによって、歌っていきます。といっても、先日のメータ&VPOのブルックナー同様、特別個性的なことはやっていないです。ただやるべきことを丁寧にやっているだけなのですが、その何もかもがツボにはまっています。これは凄い。ここまで凄いマーラーが聴けるとは思ってもいませんでした。

ヤンソンスのお人柄なのでしょうか、死の影に圧迫されるような悲痛さよりも、一種の明るさというか、前向きな志向性を前面に感ずる9番です。こういう9番、好きです。大植さんの9番も、このようなものでした。

ところで今回の僕の席はP席最前列のかぶりつきでした。同じP席でも、僕の音の好みとしてはもう少し後方の列の方が好きです。近すぎるとさすがに音のバランスが悪すぎるし、打楽器の打音などが耳に刺激的過ぎてうるさく感じやすいからです。本当はもっと後ろの席を取りたかったところですが、今回は最前列になってしまいました。そこで今回は、そういう傾向の音になるであろうことをある程度覚悟してきました。

しかし、ヤンソンス&バイエルンは凄かった。かぶりつきの超至近距離で聴いても、打楽器はじめとしてすべての音が、全くうるさくないのです。ffでもあくまで美音、それでいて充分に力強いのです。これを普通の席で聴いたらどのように聴こえたのかは興味深いところですが、ともかく驚嘆すべき絶妙の発音コントロールでした。なるほどこういう音を出せるオケなら、トロンボーン隊の前の奏者のための遮音板も要らないのだろう、と妙に納得しました。もちろん、僕の席で聴こえて来る音のバランスはそれなりに偏ったものでしたけれど、それでも充分に美しく響きます。それから9番では弱音へのこだわりも重要な要素のひとつですが、ヤンソンスは徹底的にこだわって、緊張を孕みながらも愛情に溢れたppを奏でてくれます。指揮者のここまでデリケートな要求は素晴らしいものだし、それにここまで十全に応えられるオケの実力、おそるべし。

第三楽章中間部のトランベットの夢見るような歌は、バーンスタインが意外に速いテンポをとるところですが、ヤンソンスはテンポを落としてゆったりと歌ってくれました。トランベット首席さんは必ずしも絶好調ではなかったのだろうと思いますが、柔らかく温かい音が美しかったです。

終楽章を始める前、ヤンソンスは両手を合わせ、少しの間祈っているかのように見えました。そして終楽章が始まった途端、またしても弦の優しさ、豊かさ、極上の美しさに、全身がしびれました。そこから、基本ゆっくりめではありますが、速くなるところはそこそこ速くなり、音楽がよどまずに進んで行きます。ここ終楽章も、ヤンソンスが描く音楽は、どこまでも温かく、決して希望を失わず、愛に満ち満ちています。なんと素晴らしい9番。なんと美しい9番。楽章後半、シンバルが2回鳴らされる頂点あたりの音楽は、もうめくるめく感動の渦です。

今回の演奏、第一楽章が始まってすぐから、あぁこの音楽が終わってしまうのが惜しいなぁ、と思いながら聴いてきたのですが、いよいよ終わってしまうときが来ました。最後の静かな弦の長い音のところは、ヤンソンスはゆっくりゆっくりと両手を下げていきます。ついにヤンソンスの両手がだらりと下がり切り、頭もうなだれたとき、最後の音の響きが消え、ホールは静寂に包まれました。そのあとしばらくしてから、ヤンソンスが体をちょっと動かし、そこから拍手が始まっていきました。

オケは弦楽セクションをはじめとして、ともかく美しかったですが、完璧かというとそうでもないところがまた面白いところで、ファゴットがやや不調でした。第二楽章でファゴット二人の息がちょっとずれたり、それから第四楽章の中ほどの重要なファゴットのソロで音が途切れそうになったりして、このときはヤンソンスもちょっとびっくりしているようでした(^^)。トランペット首席も、おそらく本来の調子はもっと高いのではと想像します。しかしそれ以外はほとんど完璧。特にホルンは素晴らしく、一緒に聴いていたホルン好きの友人にあとで指摘されてなるほどと思ったのですが、ベルアップなどは全くせず、ビブラートもかけず、ただただ出てくる音が純粋にすばらしい、というホルンでした。

ヤンソンスは今年73歳。広いレパートリーを持つヤンソンスですから、日本でまたマーラーを聴けるチャンスは少ないかもしれないけれど、願わくば、またこのようなマーラーを聴かせてください。






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Last updated  2016.12.05 10:19:32
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