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じゃくの音楽日記帳

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2019.12.02
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カテゴリ:演奏会(2019年)
メータとベルリンフィルによるブルックナー8番を聴きました。

指揮:ズビン・メータ
管弦楽:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:樫本大進

ブルックナー 交響曲第8番
11月21日、22日 サントリーホール

2016年のウィーンフィルとのブルックナー7番​の自然体の名演、​2018年のバイエルン放響とのマーラー1番​の奇跡的な名演が強く印象に残っているメータ体験。今度はベルリンフィルです。どんな音楽を体験することになるのか、楽しみにしていました。

11月21日から書きます。 弦は16-14-12-10-8、ヴァイオリン両翼配置で下手側にVcとC bの、オーソドックスな布陣。ハープは上手側に2台。ホルンはハープの奥に3列で、前2列が二人ずつで、3列目は4人のワーグナーチューバ持ち替え隊が一列に並び、そこから下手方向にチューバ、トロンボーン、トランペットがずらっと一列に並びました。すなわちワーグナーチューバとチューバが固まって横一列という、視覚的にも音響的にも良い配置です。

珍しく上手側の通路から、メータが登場しました。昨年のバイエルン放響とのマーラーのときは、杖をつきながら介助者と一緒の入退場でしたが、今回は嬉しいことに、杖をつきながらゆっくりとした足取りではありましたが、介助者なしお一人で歩いての入場です。そして指揮台の段差も一人で登り、壇上の椅子に腰掛けました。昨年よりも体調が回復されていることを嬉しく思います。

第一楽章、かなり遅めのテンポ設定で、奇を衒わず、ティパニもほどよく控えめで、無駄な力みの全くない、丁寧な演奏でした。

第二楽章も全く同じ路線で、やや遅めのテンポでとても端正な音楽が続いていきます。さすがのベルリンフィル、音が重く、ビシッとしています。形が定まっていることが心地よいです。

第三楽章、音楽は一段と遅くなりました。メータの紡ぎ出す音楽は、先行する二つの楽章に引き続き、とても丁寧で、端正です。無駄な力や余分な表現が全くありません。その結果、うまく言えないのですが、音楽の内容だけでなく、音楽の形そのものの美しさといういようなものがひしひしと感じられます。昨年のマーラー巨人の時に受けたのと同じ感興です。 どこか特定のフレーズあるいは間合いについては、より深いというか、凄味を帯びた音楽世界がそこに立ち現れた瞬間を、他の演奏会でこれまで稀ながら体験してきたし、これからも運が良ければ体験出来るかもしれない、と思います。でもこの演奏が素晴らしいのは、そういう個々の箇所ではなく、全体としての音楽の佇まいが、自然体でありながら、かつ形がきちっとしている、ということです。ゆったりとしていながら、きっちりしていて無駄がない、と言う風に言えるでしょうか。この、ゆったりときっちりが両立しているところが、何とも凄いです。メータは現在83歳です。3年前、昨年、そして今回の音楽の充実ぶりは、80歳を超えたメータがついに到達している境地なのだと思います。

そして始まった第四楽章も、それまでと基本同じスタイルで、奇をてらわず、無駄な力みはまったくない音楽が丁寧に綴られていきました。ただ個人的好みとしては、終楽章の後半でテンポをやや速めた2か所(再現部の少し手前の強奏部分と、コーダ前の、第一楽章第一主題が奏される少し前あたり)は、それまでのゆったりとした自然な流れからすると、少し違和感を覚えました。あそこが遅いままだったら、自分的にはさらにやられていたと思います。

あと終楽章が始まって少しして、第一主題の提示が終わった後あたりから、補聴器のノイズが小さいながらも結構長いこと続くというアクシデントがあったのは残念でした。第三楽章でなかったのが不幸中の幸いと思うようにしました。

そしてついに曲が終わり、ホールの空間から残響音が消えると、メータはすぐに指揮棒をさっと下ろしました。「えっそんなすぐでいいんですか」みたいな聴衆の沈黙が一瞬だけ続いたあと、最初パラパラと始まった拍手はすぐに盛大なものに膨れ上がっていきました。フライングブラボーがなくて良かったです。(ブルックナー8番の前日に行われた演奏会、ベートーヴェンの英雄では、フライング単独ブラボーを発する人約1名がいて、それに引きずられて拍手が始まってしまいましので、今夜もそうなるのではないかと恐れていました。)

メータは、足取りはゆっくりでしたが、一人で指揮台を降り、杖をつきながらひとりで出入りを繰り返しました。そしてやがてオケがお開きとなり、拍手は続き、メータの呼び戻しの時になりました。一度引っ込んだメータが、呼び戻しに応えて出てこられたときは、オーボエ奏者の方が軽く手をとって、一緒に出てこられました。昨年のバイエルン放響とのときは、呼び戻しの際には車椅子で登場だったのですから、随分元気になられたわけです。

自然体で端整なブルックナーでした。明日もう一度聴けることを楽しみに思いながら帰路に着きました。





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Last updated  2019.12.04 21:46:55
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