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カテゴリ:real stories (非小説です)
その19の続きです。
車中、私はケースケのいうとおりに授乳した。必死でおっぱい飲んでるちーこを見ていると、少し落ち着いた。ケースケは多分そのこと分かってそうしろと言ったんだと思う。 マンションについても、おっぱいを飲み続けるちーこを待って、しばらく停めた車中で授乳。ケースケは、私に何も聞かなかった。ただ、黙って、待ってくれていた。ちーこはたっぷりおっぱいを飲み終えると、また眠ってしまった。部屋に戻って、私が最初にしたことは、シャワーを浴びることでした。キモチワルイ汗を流すために。あのオトコの唇が触れた顔を洗うために。 シャワーから出ると、ケースケはソファにいた。怖い目が、ソファに無造作に投げ出したバッグから飛び出していた私の、光りながら振動してるケータイを見つめている。着信。拾い上げてサブディスプレイを見て、ケースケが怖い顔をしている理由が分かった。そこにあったのは、 『カトウさん』 の名前。さっきの記憶が蘇って、思わず目を閉じる。 ケ:さっきから何度もかかってる。・・出ね~の? 不快そうな声で、ケースケが聞く。ただ首を振った私に、 ケ:カトウって、あのカトウ?シホさんの不倫相手の? うなずいた私に、 ケ:なんで、そんなヤツの電話番号がサぁのケータイに入ってんだよ? やっとケータイの振動がとまる。何から話せばいいのか、うまく答えられない私に、でも、もう全部分かってたみたいなケースケは、いろんな気持ちを飲み込んで、努めて穏やかに聞こうとしてくれる。 ケ:昨夜、俺が風呂入ってるときに話してたの、そいつか? ケ:今日、出かけてたのも、そいつとか? ケ:サぁのことあんなに震えさせたのも、そいつか? 淡々と次々に尋ねてくるケースケの質問全部に、ただ肯くだけしか出来なかった私に、ケースケは、 ケ:何された? って聞く。そんな風に聞かれたって、やっぱり、何から話せばいいのか、全然何も言えない私に、 ケ:いえないようなこと、されたのか? カラダをさぐられる感触と、頬に当てられた唇の感触が蘇って、唇噛んで目を閉じたら、 ケ:無理矢理か? って怖い声で。目を閉じたままの私に、 ケ:分かった。サぁ、電話貸せ。どこにいんだ、そいつ。ぶっ殺してやる。 って、その声が、物騒な言葉と間逆に冷静すぎて、だからこそ、ケースケが見たこともないくらい怒り狂ってることが分かる。私のために。私は、ケータイを握り締めた。サレタっておかしくなかった危うい状況までいってしまってた情けない頼りない自分。こんな私なんて、止せばいいのに。ヒロトが死んでから、ケースケがずっとそばにいてくれた間、ずっとずっと思ってた言葉が、こんなときに私を支配してくる。 ケ:何してる、電話貸せ、サぁ。 手を伸ばすケースケに、首を振った。 ひ:もう、いいの。 ケ:よくねーよっ! ひ:いいの。ケースケ。もう、忘れて。 ケ:・・・? ひ:私のコト、もう止めて?てか、こんなに心配してくれてるのに、いつもこんな風に困らせて怒らせて、もう、ヤでしょ?だから、もう、いいから。もう・・。 ケースケは私を見た。怖い顔のまま、立ち上がって、ケータイ握ったまま、立ち尽くしてる私に手を伸ばして、後頭部に手を添えて、小さくため息ついてから、 ケ:サぁ。 って優しい声で呼びかけた。恐る恐る目を向けたら、 ケ:そいつのこと好きになったのか? なんて聞いてくる。ありえない。ぶんぶん首を振ったら、ケースケは、ほっとしたみたいに、私を抱き寄せた。 ケ:だったら、俺、サぁをあきらめたりしないぞ。 カトウの唇が触れたほうの頬に、頬をくっつけるケースケを、私は押し返した。どんだけ洗っても拭い去れないカトウの唇の感触がそこにあるから。 ひ:だめ。汚いもん。私・・・。 ケ;汚くなんてないよ。サぁはサぁのままだよ。・・・よく帰ってきたな。 変わらない優しい腕にまた抱き寄せられて、変わらない優しい声で囁かれて、私は、今度は、やっぱりこの腕から抜け出せないって、ヒロトが死んでから、ケースケがそばにいてくれた間、『私なんて、止せばいいのに』ってのと同じくらいの回数、ずっとずっと思ってきたこと、思った。 だから、全部、話した。昨夜の電話のコトから、震えた体をケースケに『確保』されるまでに起こったことを。ケースケの腕の中で、ちゃんと泣かずに最後まで。何度か質問してきたけれど、感情は表さないまま、ただ、私の話を最後まで聞いてくれたケースケが、まず、言ったのは、 ケ:確認してい? ひ:なに? ケ:抱っこされて、頬にキスされただけ?ヤられたんじゃないの?隠さないでいいからほんとのこと言えよ? ひ:抱っこされて、頬と首筋にキスされただけだよ。ヤられてない。 そういったら、ケースケ、ふーーーって、すごーく長い息を吐いてから、肩から力を抜くみたいにがくっと両肩をさげた。 ケ:なんだよ~~ ひ:なんだよってなによっ ケ:だって、さっきの言い方、、俺、てっきり。。 あまりにもあからさまにホッとしてるから、 ひ:抱っことキスだけでも、じゅーぶん、気持ち悪かったんだけど。 そういうと、慌てたみたいに、 ケ:や、分かってるよ。分かってる。 ひ:そう?てか、やっぱり、サレてたら、ヤだったんだ。 ケ:当たり前だろ? ひ:・・されてたら、あきらめてくれた? ケ;なんだよ、その聞き方。さっきの質問もそういう意味なら違うぞ?サレてても、俺はサぁへの気持ち変わったりしないよ。だけど、こんなときにこんな状況で実際にサレてたら、サぁがきっと、耐えられなくて死んじゃうんじゃないかと思って、怖かったんだよ。どうやって守ればいいか分かんなくて怖かったんだよ。・・・ほんとに危なかったんだろ? 優しくそうたずねられて謝罪の言葉がすんなりと口をつく。 ひ:・・ゴメンなさい。 ケ:俺こそ、ゴメン。『だけ』っていう言い方は悪かった。サぁにしたら、ほんとにヤだったよな。・・・どこだよ?キスされたの。 右頬一帯と、首筋を示すと、ケースケは、 ケ:今なら、俺がこうしても、文句言わないよな? っていって、そこにいっぱいキスしてきた。いくら唇にじゃなくてもキスなんて、私たちの関係では、完全に反則?なんだけど、カトウのキモイ感触を上書きしてくれているケースケに文句なんてもちろん言えない。それどころか、首筋にキスされたときは、もう、理性なんて吹っ飛んじゃいそうなくらい、イイ気持ちになっちゃった。うっとりきてるの、気づかれたくなかったけど、気づいたら、ケースケも、同じ様なうっとりした目で私を見てて、ちっさく親指で唇に触れてから、聞いてきた。 ケ:・・キスしてい? って、たまんない声で。うん!って叫びたいくらいだったんだけど、飛びきれなかった理性が、私に言わせたのは、 ひ:シたかったらシてもいいよ。 って、いつものセリフ。ケースケ、顔ゆがめて唇噛んで目を閉じてからまた開けて、 ケ:・・くそ~~っ。サぁって、なんで、俺にだけそんなにガードがきついんだよっ。 って。 ひ:シたかったらシてもいい、っていうののどこがガードがきついのよ?? ケ:そんな言い方じゃ俺ができないって知ってんだろ?何度も言ってるだろ?俺は、そんな投げやりな言い方じゃヤなんだよっ。サぁがちゃんと俺のコト、好きになって受け入れて、からじゃないと。・・もっかい聞いてい?キスしていいか? ひ:・・まだ、ムリ。 ケ:今、なんつった? ひ:・・?まだ、ムリ。 同じ言葉繰り返した私のコト、ケースケは信じられないって表情のまま、ギューってしてきた。 ケ:まぢで?・・俺、喜ぶぞ? ひ:え?なんで?? ケ:今までは、ムリ、とか、他の人探して、としか言わなかったのに、おま、今、『まだ、ムリ』っていったんだぞ?『まだ』ってことは、『いつか』は、いいってコトだよな?あ~~、嬉しい。大前進っ。 大喜びで盛り上がるケースケを前に、口が滑っただけなんてとてもいえない私でした。でも、心が自然に口をすべらせたのかも知れないな。(※とはいえ、喜んでるこの時のケースケくんには悪いけど、その『まだ』の期間は、これから『まだ』1年半以上もありました。汗) しばらく『まだ』に、喜んでたケースケ、少し興奮がおさまってくると、私を、ぎゅーって抱っこして、 ケ:サレテなくてよかった、ほんと。ごめんな、俺、昨夜の電話、おかしいと思ったのにちゃんと聞き出さなくて。その上、今日、サぁを1人にして。ちーこがいるからって油断したんだ。ほんと、ごめん。 って、また何度も、ぎゅってしてきました。そして、ケースケは、顔を引き締めて、 ケ:なあ、でも、どっちにしても、俺、ソイツゆるさねーゾ。サぁ、電話よこせ。 ひ:だめ ケ:なんで、かばうんだ? ひ:かばってなんてないよ。でも、あんなの関わらない方がいいって。 ケ;いいや、殴らねーと気が済むかよっ。 ひ:お願い、ケースケ。あんな人間、何したってムダだって。もうね、無視するのが一番いいって。ケースケがあんなつまんないヤツのために何かあったら、私、おとうさんとおかあさんに申し訳ないよ。 ケ:けど、ガマンできねーよっ。サぁを、あんなに・・ てときに、また着信。カトウから。私の表情を見て、ケースケがケータイを取り上げた。あ、って思うけど、もう止められない。すぐに電話に出たケースケは、 ケ:あんたいい加減なことばっかしてんじゃねーぞ。 て、信じられないくらい、暗く冷たい声で。相手が何か話してそうだったけど構わず、 ケ:今度サぁに指1本でも触れたら、俺がぶっ殺してやるからな。覚えとけっ。 恐ろしいくらいの迫力でそう言って黙るケースケ。相手が一言二言話しているような間。 (※後から聞いたら、『あ、そうですか。その点、了解いたしました。』と、かなりうろたえた、でも、何故かいきなりビジネスモードなシャベリで言ったらしい。へもっw) ケータイを切ってから、私ににっこり差し出したケースケ。カラダを引き気味に受け取った私に、アマ笑顔で、 ケ:どした? なんて、気楽に聞いてくれるけど。 ひ:怖いよ、ケースケぇ・・。何?今の声。。 ケ:せめて、こんぐらいいっとかねーとな。・・・ガマンしてやるよ。それがサぁの望みなら。そんでいいだろ? (※とかいいながらケースケ、次の日に、例の私の手紙の入った封筒を持って帰ってきました。ケ:取り返してきたぞっ。て。ひ:どうやって?って驚いた私に、ケ:ナイショ。って、悪い顔で笑うから、ひ:・・・何かしたの?って聞いたら、ケ:それもナイショ。ってまたワル笑顔で。ケ:でも、もう、アイツ二度とサぁに近づいてくることはないと思うから安心しろな。って言ってました。・・・ナイショって、何したんだろう。。。気になるけど、知りたくない(怖)。) ひ:ありがと、ケースケ。 って言った先のちょっと怖い顔のケースケに、私もさすがに察して、 ひ:ほんと、ゴメンね。これからは気をつけ・・ って言いかけるのもきかないで、 ケ:当たり前だろっ。ほんと、おまっ、無防備すぎるっ。一体何考えてんだ、バカっ。大体、お前はいっつも、 って、お説教モードに入ったケースケでした。今なら、ゴメンネって甘えて、チュウして、エッチに持ち込めば逃れられるお説教も(←)、当時は、そのワザをまだ使えなかったので、こってり怒られちゃいました。キス拒まなけりゃよかった(コラ)。お説教だから、あんまり熱心に聴いてないし(コラ)内容もうろ覚えだけど、 ケ:どうせスキ見せるなら、俺に見せろよっ。勢いで始まったって、俺はサぁを幸せにする自信あんのに。でも、おまえ、俺に対してだけはいーっつも、冷静でさっ。だから、結局ずっとお預けでさ。 って、ブツブツ言ってたことはよく覚えています。・・・てことは、お説教じゃなくて、ただの文句だったのかな。 ※次ラスト(多分)です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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