|
カテゴリ:ひろ。のひとりごと。
読み始めはこちらから。
展開的には、 2010.05.20 ごめんな。おやすみ。愛してるよ。 に続く妄想wです。 後ろ髪引かれるヒロトとのバイバイにオチた気持ちを、それでも、今日丸一日だけガマンすれば、待ちに待ったデートができるんだからと、ムリに引き立てようとしていた私。トイレで、出血に気づくまでは。 その出血に、私は、違和感を覚える。規則正しく訪れている生理にはちょっと早い気がする・・・。第一、なんだかいつもと違う。 そんな風に思って、はっとする。 ・・・これって、もしかしたら、着床出血なんじゃ? 部屋に戻って、PCで検索してみる。 着床出血、受精卵が着床したときに起こる不正出血。妊娠の兆候として最初に認識できるサイン。 ・・・私、もしかして、妊娠しちゃったの? まだどうなのかも分からないのに、そうと考えたらそうとしか思えなくなって、自然とお腹に添えてしまう、右手。 ・・・どうしよう。怖い。ヒロト。 私は、部屋の時計を見る。真夜中。ケータイを手に取る。 ・・・すぐにでも、ヒロトに相談したい。だけど、もう、仕事の仕上げに意識が戻ってる頃だし。 私はケータイを机の上に戻して、ベッドに横になる。手は、やっぱりお腹に添えてしまう。 ・・・赤ちゃんが、いたら、、、、どうしよう。ヒロトは、なんていうだろう。 1人で悩みを抱え込めない私のココロは、情けないくらいヒロトのことを求めている。だけど。だけど、ヒロトは仕事中で。終わったら、一日の休息をとるはずで。だから、、だから、、家に帰されたのに。 ・・・ねえ、私。・・・1日くらい、待てないの? * もう二度と会うこともないはずのサラを家まで送り届けて僕は、1人、部屋に戻る。 死を目の前に意識しても、ココロは、驚くほど冷静だ。それはそうだろう。もう、迷ってはいないんだから。 そう思って、仕事の最終チェックをしようと、デスクに腰掛けた瞬間に、ソファが目に入る。 ・・・迷っていないのか、本当に? 僕の中の僕の声に、僕は小さく目を閉じる。 さっきまで、ソファで眠っていたサラ。いつまでも眺めていたい寝顔を、揺り起こすまで、随分時間がかかった。 本当はここにいたいはずなのに、僕の仕事を思って、素直に、起こされてすぐに文句も言わずに、帰る準備をしてくれたサラ。 仕事が終わったら、休息日にするよ。ただ、そう告げた僕の言葉の先に、当然、自分とのデートを予測して、明るく楽しい希望をたくさんはしゃいで口にしていたサラ。 ・・・もう、何一つ、叶えてやれないんだ。一緒に映画を見よう。たったそんなことすら。 そんなこと、ココロで思ってることを知られないようにすることしか、ただ、黙って、微笑むことしか、できない僕だった。 ・・・ごめんな、サラ。 サラと出会った日から4年間の思い出が、一瞬、胸をしめつけてくる。 僕は、首を振る。 ・・・もう、決めたんだ。 サラにはサラを幸せにしてくれるにふさわしい人間がいるはずだ。もしかしたら、すぐ、そばに。 僕は、最後の仕事に意識を集中することにした。 * ・・・眠れない。 電気を消して、ベッドに横になってみても、全然全然、眠れない。 ヒロトの家で転寝しちゃってたから、ていうのも多分にあるだろうけど、それでも。 ・・・ああ、もう、頭いっぱいで、どうにかなっちゃいそう。 こんな時間に、友達にだって、こんなこと、相談できないし。 ・・・妊娠検査薬さえ、あればなぁ。 だけど、こんな時間に買いに行けるところもないし。 ・・・ていうか。 私、もし赤ちゃんができてたら、どうしたらいいんだろう。 どうしたらってなに? 産むかどうかってこと? どうかって何? 殺すかってこと? 私は、ベッドの中、きつく目を閉じる。 ・・・殺すなんてこと、絶対できない。 産みたい。 ・・・・うん。私、赤ちゃん、産みたい。 だけど。 ・・・ヒロトはどう思うだろう。 私の同級生の友達なんかが、、カノジョに妊娠した、なんて告げられたら、ひるむだろうけど、ヒロトは・・・? ああ、もう、できてるか、できてないか、だけでなく、ヒロトの答えを知るのも、 ・・・すごく、怖いよ。 * 仕事の最終チェックを済ませて、やっと僕は自由になる。 自分の人生の全てから自由になる。 僕は時計を見る。 ・・・あと、24時間。 1人で、人生最後の24時間を、ココロ穏やかに過ごそう。 誰からも連絡がこないように、固定電話のラインを抜く。ケータイの電源も切ろう、そう思って手に取った瞬間、ケータイが鳴り始めて驚く。音で分かる。 ・・・サラ? 僕は、もう一度、時計を見る。 ・・・どうしたんだろう。 いつものサラなら、休息をとるからと帰した後に絶対に電話などしてこない。 ・・・ ココロがまとまる前に、途切れる、ケータイの音。なっていたのは、せいぜい2コールくらいのものだろう。そこに、サラのためらいを感じる。こんなタイミングでかけることを申し訳ないと思っている。 ・・・サミシイとか、そういうことなのか? いや、サラはそこまでは弱くないはずだ。きちんとルールを守ってきたんだから。 ・・・何かを察しているのか? いや、だとしたら、2コールでなんか切らないだろう。 ・・・いったい・・・・ 僕は考えるのをやめて、サラにコールバックすることにする。 ・・・なんだったんだろう、と心を残すよりは。 耳にあて、呼び出し音がなるかならないかの瞬間で、サラが電話に出た、が、声が聞こえない。 「・・・もしもし、サラ?どうかした?」 僕の呼びかけに、 「・・・・ごめんなさい、電話したりして」 小さい声で告げるサラ。もう、聞けなかったはずの声に、胸が震えるのが分かる。 「いいよ。どした?眠れないの?」 「・・・・ぅん。。。」 小さくそう答えただけで、それ以上何も言わないサラに、 「僕に電話しちゃうほど?珍しいな」 少し微笑んで言うと、 「・・・仕事終わった?」 「ああ、終わったよ」 「・・・入ってもいい?」 ・・・入っても・・・? って、おいっ。 僕は、玄関に急ぎ、ドアスコープから外を覗いた。 ・・・っ。 ドアガードをはずし、鍵を開け、慌ててドアを開けた。先には、サラ。 ケータイを持ったままの、手を、つかむようにして、引き入れる。 「ったく、何考えてんだっ。こんな時間に、1人で来るなんてっ。何かあったら、、」 いつもなら、大丈夫だったんだからいーじゃない、そんなこといって口をとがらせるはずのサラが、今日は、俯きがちに、 「ごめんなさい」 としおらしく呟く。僕は、サラのそのおとなしい姿に、サラをこの世に置き去りにしようとしている自分が、何を言えると言うんだ?と自分で自分が恥ずかしくなる。つかんだままのサラの手を離して、つながったままのケータイを切った。 「ごめん、大きい声だして」 小さい声で、謝罪し、 「どうしたんだ?」 問いかける言葉に、サラは、ただ唇を噛む。 ・・・・? 「とりあえず、入れよ」 そう告げて、背中を向けた瞬間。 「ヒロト・・・、私ね、、」 サラが話し始めたから振り返る。 「私、、、妊娠したかもしれない」 ・・・妊娠? 思いがけない言葉に、とにかく思考が停止する僕だった。 *その2に続く。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ひろ。のひとりごと。] カテゴリの最新記事
|