box 47 ~悠斗~
気がかりなこと吐き出して、少し落ち着いた様子の楓。俺は、夕べのことを思い出して尋ねる。「楓」「・・なあに?」俺は蓋を開けられたまま置かれた箱を指差して、「・・夕べ泣いてたのってさ、その箱のせいだったんだ?」楓は、箱に目を移して、思い出すような目で、「うん。そう、、悠斗に電話もらったときは、、、手紙を読んでたの。お母さんが私に書いてくれた」俺は、箱の中の手紙に目をやる。楓は小さく囁く。「ねえ、、悠斗、その手紙なんだけど、、読んでくれる?」「・・いいの?」「うん。読んで欲しいの。お母さんからね、悠斗に、の部分もあるんだよ」・・・お母さんから、俺に?驚く俺に、楓は手紙を渡した。手紙を読み終えて、俺は、小さく息をつく。楓のお母さんが、この手紙、たった一通の手紙に込めた、親としての愛情の全て。・・・どれだけ、お腹にいた楓を愛し、どれだけの心残りがあったことか。その重みと、最後に添えられた、「楓が愛して、楓を愛してくれている人へ」という言葉から始まるパートを思う。そして、それを俺に読ませることを選んでくれた楓の心も。・・間違いなく、受け止めますよ。俺は、心で楓のお母さんに応え、隣に座ってまたネックレスを眺めていた楓をそっと抱き寄せる。優しくもたれかかってくる楓。俺は楓の頭に頬をつけ、囁く。「・・・大事にするよ、俺、楓のこと。まだ、頼んない俺だけど、きっと幸せにもできるように生きていく。楓には、、俺なんかでいいのかって、正直、思うけど」悟さんに比べ、あまりに頼りなく響くはずの俺の言葉に、楓は、ゆっくりと顔をこちらに向けて、出会った日から変わらないそのイノセントな瞳で、見つめてくる。吸い込まれそうになるよ。何度見つめ合っても。楓。楓は、目を細めて、静かに微笑んで言う。「・・ありがと、悠斗。私だって、悠斗に、、私なんかでいいのかって、正直、思うのよ。いつもいつも思ってる。でもね、私には、悠斗でなくちゃ、、悠斗がいなくちゃ、もう、ダメなの」そういって、もう一度頭を俺の胸にうずめて言う。「だから、そばにいて。・・・急に、、いなくなったりしないでね」その言葉に込められた切実な願い。俺にはよく分かっているよ。