translucent 11
部屋に帰ると確かに新谷がいた。ダイニングテーブルのチェアを引き、姿勢よく浅く腰掛けていたが、俺の姿を見て立ち上がる。「お帰りなさい」お前に言われる筋合いね~っつーの。どこまでも大人げない俺。オトナでなんかいられるかよっっ。とは思うものの、一応は、丁寧に、「すいません。遅くなって。ミリは?」新谷は俺の言葉にソファを指差す。アームレストに頭をのせ、額に軽くまげた腕を乗せている。起き上がる気配はない。・・・眠ってるのかな・・?ったく、オトコと二人きりなのに、無防備すぎるっ。俺はその苛立ちを隠しつつ、新谷に聞く。「どんくらい飲んだんですか?」「食前酒は軽く。ワインは1本と半分。あと、カクテルを7,8杯です」俺はため息をついてから、「飲ませすぎでしょう?」新谷は、冷静に、訂正する。「飲み、過ぎです」俺は苛立ちを隠せなくなる。「・・どっちにしても、だ。なんでそんなに飲むのを、あなたは止めてやってくれないんです?」なじる俺を静かにみつめ返し、「いつもなら、止めます。というよりも、ミリさんはあなたが、僕と出かけることを、、いえ、僕といるときに酔っ払うことを嫌うこと、理解しているから、そんなには飲まないんです。止めるまでもない。でも、、今日は、そこまで飲むだけの理由があったと、僕には思えました。だから、とめなかった。いえ、たとえ僕が止めても飲んだでしょう」そこまで、飲むだけの、理由?って、あのメールのことか?だけど、、悠斗の、、あのメールだけで、そんなにも取り乱す、、かなあ?ちゃんと悠斗なりに説明と、謝罪をしたはずだし、、なあ。。いぶかしげに首をかしげる俺の様子に、新谷は、「理由は、ミリさんから直接お聞きください。いえ、聞いてあげてください。かなり、、傷ついた様子でしたので。・・・僕では残念ながら力になれませんでした」残念ながら、、って今言ったよな?イラっと来る俺。いい終えた後、ミリの方をいたわるように、じっとみつめていた新谷は、俺に向き直り、俺の苛立ちを待ち受けていたように言う。「許されるなら、抱きしめてあげたかった」コイツ・・。初めて真剣ににらみつけた俺に、新谷は軽くため息をついてから、微笑んだまま言う。「やはり、あなたには隠す必要はなさそうですね、僕の気持ち。とっくに気づいていらっしゃったようだから。」「お前・・・」さらに、にらみつける俺に、新谷は、柔らかい口調で告げる。「いい機会だから、僕の正直な気持ち、あなたにははっきり言っておきましょう。」←1日1クリックいただけると嬉しいです。