葉山でジャコメッティ展を観る
敬愛する「20世紀彫刻界の巨人」にして求道の鬼、アルベルト・ジャコメッティの展覧会に行きました。『これを逃すと次はまた10年後だよ(前回は10年ほど前にあったらしい)』と両親にハッパをかけて、珍しく親孝行がてらに葉山の美術館へ誘い出したのです。神奈川近代美術館は鎌倉のものしか知らず、葉山へ行くのは初めてだったので、両親を連れて歩く様は「いい旅夢気分」みたいでした。で、ジャコメッティ。大学時代にその仕事の鬼ぶりに心酔していた私はもう大興奮。まだ若かった頃の情熱や創作意欲が蘇って来る思いです。「あぁ、オレこういうの思いついたりしてたのに、なんで造らなかったのかなぁ」と後悔することしきりでした。とはいえ、やはりそこは仕事の鬼。思い付きをカタチに出来なかった負け犬(…)とは比べものにならない迫力をビシビシ感じるのです。作品の周囲で見ているお客さんよりもはっきりした存在感で迫ってくる立体や平面絵画。この「浮かび上がってくる不思議な存在感」は立体写真を見たときの感覚に近いと思います。今回の展示のうち、代表的な細長い立体作品については、壁から距離をとって配置されています。そこで別の見学者と作品を同時に視界に入れることによって、ジャコメッティ本人がモデルをどう見ていたのか、どんな距離をとって作品を作っていたのかを追体験できるのです。観ている作品と、後ろの見学者の見かけの大きさが一致した時をうまくつかむと、単に細長いだけに見えた作品の真の意味が見えてくるのです。こればかりは本当に作品を見てこそ分かってくる感覚なのです。他の見学者さんたちはこうした見かたをしていたかどうかは知りません。しかし、私のこのような見かたを他の方々は怪訝に思っていたかも知れません。『あの、作品とお客を見比べてるヤツは何なんだ?』という感じに。こんな稚拙な文章では伝わり切れませんが、興味をもたれた方は7月30日までに葉山へどうぞ。つーか可能な限り万人に見てもらいたいです。ホント。