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カテゴリ:中也の詩
その次は「ゆよーん」です。最初が「ゆあーん」なら、次も「ゆおーん」になりそうですが、「ゆよーん」です。なぜ「お」でなく「よ」なのか。 「ゆあーん」で述べた考えが、ここでも応用されます。"yu yoh-n" で、"y" の音が入ることで、音にひっかかりが生まれます。そのままに流れずに、せきとめられる。そして「ゆ、や」と音が続くと、ひっかかる「や」の音に、力が入ります。するとどうなるか。 「ゆ」でしっかりとブランコを抑えて、「よ」で力を入れてそれを押し出す感じです。 情景を言うなら、「ゆあーん」と揺れてきたブランコを受け止めて、「ゆ」で、反動をつけるために軽く後ろにひき、「よ」で力をいれて前に押し出し、「よーん」で向こう側にブランコが揺れて行く。そんな情景を想像します。「ゆあーん」では動きは一つだけですが、「ゆよーん」では二つの動きが見られるのです。 では「ゆやゆよん」は。「ゆあ」ではなく「ゆや」、「ゆよーん」ではなく「ゆよん」。これはどういう様子なのでしょう。 「ゆ」「や」「ゆ」「よ」と半母音 "y" が?回続きます。それぞれに力が入る、動きがあると考えましょう。すると、こういう動きが想像されます。 向こう側から戻って来たブランコを受け止めます。「ゆ」軽く後ろへ引いて、「や」前へ出すけれど、まだ反動は小さいので、飛び出しません。「ゆ」これでしっかり後ろへ引いて反動をつけます。「よん」で、力をこめて前に飛び出して行きます。 こういう動きを表す音表現ではないでしょうか。 向こう側へ飛んで行くのですから、「よーん」となるのが動きに対してふさわしい音でしょう。しかし「ゆよーん」と伸びた音にすると、連の終わりが間延びした感じになり、しまりがありません。それで、「ゆよん」と短くおさめて、しまりをつけたのだと思います。ですからわたしは、この「ゆよん」は、発する音は短いけれど、長く伸びる音の気持ちをもって、「ゆよん」とおさめています。 詩を読むためには、音についても、このようによく考えなければなりません。より良く読むためには当然のことです。そのように学生には言うのですが、どうも勉強してくれません。カラオケで画面の歌詞を読むように、書かれた文字を自分のやりやすいように音として発するだけの者がほとんどです。勿体ない。 by 神澤和明
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Last updated
2019.08.06 09:00:11
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