優しさとは
知り合いに、自分は優しい、と評価している人がいる。
わたしから見ると、すごくポジティブ思考で、笑顔以外の表情を他人に見せたことがない人。
ある日、言ってみた。
「人生、楽しいことばかりじゃないんだから、たまには悲しいことや辛いことを話してくれても構わない」と。
相手は言った。
「それは、言わない主義なんだ」と。
それを聞いたとき、この人はかわいそうだ、と思った。マイナスなことを言って、プラスな効果は生まれないかもしれない。が、マイナスなことを口から発することで、精神的な負担が軽くなることもある。たとえ、根本的に解決しなくても。目の前で聞いていた人間が、嫌な気持ちになったとしても。そんな「自分勝手」な行動や言葉が、自分自身を救うこともある。
その人は、そういう意味で、自分を救えていない。
辛いことも悲しいことも、腹が立ったことも、全て溜め込んで、外の世界には常に笑顔でいようとしている。
見ていて痛々しい。
それが、自分を「優しい」と評価することには、何か違和感を感じる。
その人の楽しいことも辛いことも、全て話せる人が、早く見つかるといいのに、と願わずにはいられない。