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カテゴリ:名字の言
凡庸な悪 ベルリン郊外のヴァンテーゼ湖畔で15人のナチス政権の高官が集まったのは80年前のことだった。会議のテーマは〝ユダヤ人問題の最終的解決〟。「ヴァンテーゼ会議」と呼ばれる、その会議以降、ホロコースト(大虐殺)が加速したとも指摘されている ▼会議の詳細の議事録は残されている。作成したのはアイヒマン。ナチス親衛隊の対象からユダヤ人の大量移送の計画・促進を命じられ、実行に移した人物である。戦後、国外に逃亡し、アルゼンチンに身を潜めていたが逮捕され、裁判にかけられる ▼人類史に残る巨悪を為した人間――その実像は、考えることを放棄し、使命を淡々とこなす平凡な役人だった。彼はナチスに責任を押し付け、言い訳に終始した。裁判を傍聴した哲学者のアーレントは「凡庸な悪」と論じた ▼フランス文学者の鈴木直道氏は、本紙で「凡庸さのもたらす悪を克服し、自分の属する民族の汚点をも正確に把握するには、ただ徹底して『考える』ほかに方法はない」と述べている。戦争の悲惨さを見つめ、〝正義とは何か〟を問い、考え続けることから、平和の芽は育まれよう ▼差別も戦争も、人間の心から生まれる。その心を変革し、人間の善性を呼び覚ましていくことが、宗教の使命である。
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Last updated
July 12, 2023 05:05:58 AM
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