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カテゴリ:医学
山芋と里芋で腎力を高めよう 薬膳研究家 正岡 慧子 精をつける 池波正太郎の著書には「うまい料理」がよく出てきますが、『鬼平犯科帳』の中の『兇賊』に出てくるのは「芋酒」と「芋なます」です。 年老いた一人働きの盗賊・九平が、表家業としてやっている居酒屋に、その事情も知らず、火付盗賊改方長官の長谷川平蔵がふらりとやって来ます。ちまたのうわさで、句兵のつくる芋酒がたいそう精がつくと評判だったからです。 九平は芋酒の作り方を平蔵に説明します。皮をむいた山芋を細かく切ってザルにあげ、これをしばらく熱湯に浸して引き上げ、すり鉢ですりつぶし、少しずつかけを加えて混ぜ合わせる。それを卵酒と同じようにかんをする。 一方、酒のつまみとして出した芋なますは、同じ芋でも里芋を用います。蒸した里芋の皮をむき、だしで煮る。適当に切って、その上に、塩と酢で身を締めた白身魚を適量乗せ、合わせ酢(酢、砂糖、しょうゆ)をかけて、刻みショウガを乗せる。 江戸時代は今と違って漢方が医学の中心でしたから、庶民も食の知恵として、漢方的効能をいろいろ知っていたのかもしれません。 精をつけるとは、体を温めて腎力を強め、エネルギーを蓄積するということです。 日本では山芋と言えば「麦とろ」で、胃の調子をよくすることで知られていますが、中国では山薬という生薬です。『中薬大事典』(小学館)によれば、脾、肺を補い、腎を固め、精を増し、虚弱による咳や腰痛などを治すとあり、トイレの近い症状にもよいとあります。虚弱体質、高齢化予防などの薬膳にもよく使われます。 一方、里芋の働きは、胃の調子をよくし、解毒、便秘解消で、腎力、精力を強めるスズキやタイを合わせれば、体のだるさや貧血などにも良いでしょう。酢とショウガを加えれば、体も温まります。 腎力を高めて体力を蓄え、暴飲暴食に注意して、新しい年を元気にお過ごしください。
【生活に生かしたい薬膳の知恵■7■】公明新聞2023.1.21 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 22, 2024 03:40:04 PM
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