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カテゴリ:宗教と社会
法華経と法華教団 法華経(妙法蓮華経)は、〝白蓮のごとく正しい教え〟という意味で、鳩摩羅什の漢訳が有名です。全部で27(羅什訳は28)品(=章)あり、いくつかの段階をへて、紀元前後に徐々に完成しました。この経典を伝持していた教団は、仏塔信仰を重視し、他の教団と厳しい対立関係にあり、経巻をも信仰の対象として点が特徴です。声聞・縁覚・菩薩の三乗はそのまま一仏乗であるとする会三帰一(開三顕一)の思想、釈尊は永遠の昔に成仏して今も霊鷲山に住するという久遠実成仏の信仰を説きます。 法華経の前半を迹門といい、第三譬喩品(他の経典は方便で、法華経が本物あという(「火宅の譬ええ」)、第十一・見宝塔品(多宝如来が出現する)第十二・提婆品(悪人・女人成仏を説く)などを含みます。後半を本門といい、第十五・従地涌出品(大勢の菩薩が現れる)第十六如来寿量品などを含みます。
♠法華経の久遠実成の考え方は、浄土教の阿弥陀仏など現在他仏の存在を強く意識して説かれているように思います。阿弥陀仏は今やこの瞬間にも、極楽に住して、多くの衆生を救おうと努力しているのに、釈迦仏は入滅してしまって影も形もない、というのでは迫力がない。そこで、釈尊についての解釈を改め、釈尊は大昔に、実は覚りを開いていた。そして人びとに仏法を広めるためにわざわざ釈尊(=ゴータマ・シッタルダ)をつかわして、成仏とはこういうものだと、人びとのためにパフォーマンスしてみせた、とするのです。
このようなであるとすると、釈迦仏は二重の存在になり、キリスト教の父なる神(=久遠実像仏)/イエス・キリスト(=釈尊)の関係に似てきます。法華経は、浄土教とまた別なふうに、一神教と通じるところがあると言えます。それゆえ、法華衆と浄土真宗が日本で大きな力を持ったことは、日本の近代化を準備した要因として注目できましょう。
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Last updated
April 23, 2024 03:18:39 PM
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