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カテゴリ:政治
曖昧化するロードマップ 尾松 亮
福島第一に廃炉法を 原発事故から12年が経過したが、前回述べたように、「中長期ロードマップ」(初版)に示された40年後の2051年までに福島第一原発で溶け落ちた核燃料(デブリ)をすべて取り出し、高度に汚染された原子炉解体を完了することは絶望的に思える。廃炉完了なんで「無理だ」「フィクションだ」と思うかもしれない。しかし、ロードマップにはそもそも福島原発の廃炉について、どんな状態を達成することを目指すのか、明確に示されていない。 「中長期ロードマップ」が示す、デブリ取り出しや原子炉施設解体は東京電力と政府の「目標」にすぎない。目標未達のまま「ここまでで終了します」と言っても、法的責任は問われないのだ。「中長期ロードマップ」は、東電と政府のさじ加減でいかようにも改定が可能で、実際にこれまで初版が示した目標を骨抜きにする書き換えが繰り返し行われてきた。 15年6月の第3回改訂版以降、「中長期ロードマップ」では、「25年後」という「デブリ取り出し完了」の記述は見られなくなる。その結果、最新版の「中長期ロードマップ」(現5回改訂版、19年12月)では「取り出し完了時期」が不明である。ロードマップ完了辞典(51年)までにデブリ取り出しが終了するかも曖昧になっている。 少なくとも初版の「中長期ロードマップ」では、「40年後」までに4基の原子炉施設の解体終了を目指していた。「1~4号機の原子炉施設解体の終了機関としてステップ2完了から30~40年後を目標とする」という記述は、そのことを明かしている。 しかし、最新版では「廃止措置終了まで(目標はスッテプ2完了から30~40年後)」という記述にとどまり、この「廃止措置終了」が「デブリ取り出し完了」や「原子炉解体終了」を含む状態であるかは示されていない。デブリは取り出せず、損傷して原子炉はそのまま放置されても「終了」はできるのだ。 一方、政府は「廃炉を前にすすめるために処理水の海洋放出が必須」など、「廃炉を前にすすめる」というフレーズをよく使う。しかし福島第一原発では「廃炉」を前にすすめることはできない。なぜなら、同原発で行われている作業は、正しくは原子力施設の「廃炉(廃止措置)」とは言えないからだ。実は福島第一原発では、廃炉の前提となる「廃炉計画(廃止措置計画)」も提出されていない。 (廃炉制度研究会代表)
【廃炉の時代‐課題と対策—58】聖教新聞2023.4.18 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 24, 2024 08:03:19 PM
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