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カテゴリ:医学
食いしばりをやめて不調改善 肩凝りや頭痛、腰痛などの慢性的不調は、悔い縛りが原因かもしれません。無意識の食いしばりの力は、なんと、固いものを食べる時の3倍以上。歯や顎に約100㌔もの負荷がかかり、その影響は全身に及びます。原因や健康への影響、予防する習慣について、歯科医の西村育郎さんに聞きました。
西村歯科医院長 西村 育郎さん にしむた・いくお 医療法人西村歯科理事長・院長。1952年生まれ。75年、群馬大学工学部化学工業科卒業。92年、愛知学院大学歯科部卒業。歯科医院勤務の後、95年、西村歯科開業。独自の顎間接症治療を開発し、実用新案を取得する。著書に『「食いしばり」をなくせば頭痛・肩こり・顎関節症はなくなる!』(現代書林)他。
体全体に広がる影響 食いしばりとは、強い力で歯と歯をかみ締めることです。睡眠時の歯ぎしりも食いしばりの一首です。日中、仕事に集中しているときなど、気付かないうちに食いしばっている人も多くいます。まずは、そうした癖がないか、セルフチェックしてみましょう(別掲❶)。 上下の歯は、わずかに離れているのが正しい状態です。食事の時や唾をもみ込むだけで、一日に合計20分程度。歯と歯が接触しているだけでも、歯や顎には負担がかかるのです。 強い力で食いしばると、歯が欠けたり、ヒビが入ったりして、知覚過敏や歯周病、歯肉炎。虫歯のリスクが高まります。また、顎に負荷がかかることで顎関節症の原因にもなります。 かむ時に使う咀嚼筋は、頭や首、肩の筋肉と連動しています。食いしばりによって咀嚼筋が疲労すると、頭や首などの筋肉も緊張します。その状態を解消しようとして、知らず知らずのうちに首を傾けたり、片方の肩を上げたりすることが習慣になります。すると、背骨にひずみが生じ、首や肩の凝り、頭痛、腰痛、なまい、しびれ、倦怠感などの症状として現れるのです。 食いしばりを治すことで、さまざまな不調が改善した患者さんを多く診てきました。歯や顎の健康は、全身の健康に深く影響することを、一人でも多くの方に知ってほしいと思います。
胸を張るのが理想的? 食いしばりの最大の原因は〝悪い姿勢〟です。堅田の重心が後ろに移動し、かかと重心になると、頸の後ろの筋肉は緊張し、下顎が後方へずれます。すると、舌の位置が下がり、気道が狭まって呼吸が浅くなってしまいます。息苦しさを感じると、人は歯を食いしばることで気道を広げ、呼吸しやすくなるのです。 姿勢を良くするには「胸を張ればいい」と思いがちですが、それは違います。頑張って胸を張ると、腰が反り、首や腰に余計な力が入ってしまうもの。首凝りや腰痛の原因になります。 今回紹介する良い姿勢の一番のポイントは、力を抜いて立つことです(別掲❷)。実は、食いしばりのある人の多くは、脱力が非常に苦手です。体の力を抜くため、肩に力を入れて上げ、一気に脱力する。それを数回繰り返しましょう。 椅子に座るときも、足の親指を意識して。足裏全体で支えましょう。自然と良い姿勢になります。歩く時は、足の指を使って歩くことを心がけてください。最後に足の親指で蹴り上げるようにして歩くイメージです。 力が抜けている時、舌は自然と上顎にペタッと張り付くものです。正しい舌の位置を確認しましょう(別掲➌)。姿勢が良くなると、舌が上がり、呼吸しやすくなります。 姿勢が悪く、常に体に力が入っている人は、たとえマウスピースなどの治療をしても食いしばりを改善することは難しいでしょう。良い姿勢を身に付けることが最優先です。その上で、その他の予防の習慣も、試してみて下さい。
👆ポイント ➀体の力を常に抜く ②良い姿勢にする ⇓ 舌は自然と上顎に付く
❶―セルフチェック― 食いしばる人に多く見られる特徴を紹介します。 □上下の歯の中心がずれている 鏡を見ながら「イー」と口を開いてください。上の歯と下の歯の真ん中が左右どちらかにずれていませんか。 □上下の歯の接触面が崩れて凹凸がない □歯の詰め物がよく外れる □歯がしみる □下顎に梅干しのような凹凸のあるシワができる
さらに悪化すると、舌の両脇に歯型が付いたり、顎の内側にこぶができたり、頬粘膜に上下に歯が合わさる位置に白い筋が入ったりすることがあります。
❷ 良い姿勢 ・目線は大地と並行 ・肩の力は抜き、肩はやや内側に入る ・背中のラインは緩やかなS字(少し丸まった感じ) ・足の親指を意識することで、足裏全体にバランスよく重力が分散 ・舌が上顎に付き、呼吸しやすい ・発声しやすい
悪い姿勢 ・目線が上向き・胸を張り、肩は外側に反っている ・頸の後ろ、肩甲骨、腰に力が入っている ・重心がかかとにある ・足の指が浮いている ・舌が下がり、呼吸が浅い ・発声しにくい
➌正しい舌の位置 ・舌は上の前歯の付け根から5㍉ほど後方に ・舌全体は上顎にペタッと付いている
―予防する習慣― ●前歯を使って食べる● 食事の時、無意識に片方の奥歯だけでかみがちです。しかし、奥歯だけを使っていると、顎の周りの筋肉が緊張し、睡眠中の食いしばりにつながります。前歯を使うことで、顔全体の筋肉が動き、奥歯での食いしばりを防ぎます。食べる時は、まず前歯でかみ、食べ物を少しずつ後ろの歯に送りながらかみましょう。コツは、一口分の量を少なめにすることです。
●枕の高さを調整する● 仰向けになって、枕の高さを➀~③の手順で合わせます。寝る姿勢が良くなると、舌は上がり、上下の歯は離れ、食いしばらなくなります。枕が低い場合は、バスタオルで高さを調整しましょう。 ➀枕の淵に肩を当て、頸と後頭部を枕全体でしっかり支える ②バスタオルを三つ折りにして、一枚ずつ枕の下に敷く ③天井に対して目線が直角になり、呼吸しやすく、唾が飲み込みやすい高さになるまで追加する ・バスタオルを二つ折りにするなど、微調整する ・横向きの場合は、鼻筋と床の面が平行になるように
●爪先立ちトレーニング● つま先立ちで足指を刺激することで体のバランスが良くなり、正しい姿勢の保持や食いしばり予防につながります。朝晩、15回ずつ行ってください。 ➀両手は壁に軽く付け、息を吸いながらつま先立ちをする ②3秒間キープし、息を吐きながらかかとを地面ギリギリまで下ろす ③下ろしたかかとは地面に付けず、再びつま先立ち。それを繰り返す
【健康PLUS+】聖教新聞2023.6.13 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 9, 2024 05:59:05 AM
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