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カテゴリ:社会
トランスジェスターへの理解増進を お茶の水女子大学名誉教授 石井クンツ昌子 トランスジェンダーで、戸籍上は男性だか女性として生活する経済産業省職員の女性用トイレの使用制限を巡って、最高裁は11日に違法とする判断を下した。その訴訟は、2015年に同職員がトイレ使用制限を是認した人事院の判定の取り消しを求めて、国を提訴したことから始まった。19年12月の東京地裁の判決では人事院の判定を取り消したが、21年5月の東京高裁においては、「経産省が全職員に適切な職場環境を整える責任を背負っていた」として適法と判断した。このような紆余曲折を経て今回の逆転訴訟に至っている。 6月23日に施行されたLGBTなどの性的少数者への理解増進法もそうだが、これまで当事者たちはあからさまに差別され傷つけられて来たのにもかかわらず、この勝訴、あるいは法律の施行までに時間がかかってしまった。また、LGBTへの世間の認識も広まってきたとはいえ、「LGBT理解増進法」では「すべての国民が安心して生活できるよう留意する」という内容が盛り込まれて批判されたし、今回の判決に対しても、SNS(交流サイト)上では女性トイレの安全性が失われるというような投稿が多いなど、必ずしもLGBTへの理解が加速してきているわけではないと感じる。 お茶の水大学は、日本の女子大学としては初めてトランスジェンダー女性の入学を許可し、年度から実施してきているが、米国の一部の女子大学ではすでに14年ごろからトランスジェンダー女性が入学してきているのと比較すると、遅れてのスタートであった。同国では、さらに22年12月にバイデン大統領が同性婚の権利を連邦レベルで擁護する「結婚尊重法案」に署名し、すべての州で同性婚は合法と認めることが法律で義務付けられた。米国でさえ、全国レベルで同性婚が合法となったのは昨年のことなので、日本で同性婚が認められるにはまだ時間がかかると想像するが、少なくとも今回の判決により、LGBTへの偏見を減らすことにつながる活発な議論が日本社会で広まっていくことを期待したい。
【ニュースな視点】公明新聞2023.7.17 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 8, 2024 02:52:10 AM
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