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カテゴリ:社会
社会的不平等や軍事利用も懸念も 科学文明論研究者 橳島 次郎 脳と機械をつなぐ㊦ 前回、心身の障害のある人でも、脳と機械をつなぐことで、意思疎通や社会活動が可能になる技術が開発されていることをみた。そうした脳と機械をつなぐ選対委技術は、かけた機能を取り戻すだけでなく、すでにある心身の能力を向上させる目的にも応用される。 日本では内閣府の「ムーンショット型研究開発」プロジェクトで、誰もが自由に身体能力や知覚・認知能力を拡張し、生活に活用できる技術の開発と普及を目指すという目標が立てられる。 そのなかには、脳の決道を読み取りかっしんする機器の開発を発展させて、脳をインターネットでつなぎ、他の人や人工知能などと直接やり取りすることができる「脳のインターネット」の構築を目指すプロジェクトがある。実用化されれば、個々人のコミュニケーションや情報処理の能力は格段に向上するだろう。ムーンショット研究が目標とする「身体、脳、空間、時間の制約からの解放」が、実現するのである。 だが一方で、能力の向上のために先端技術を用いることは、倫理的な是非を問う議論もある。遺伝子組み換え技術を人に施す際、成長をつかさどる遺伝子を低身長症の患者に投与するのは遺伝子治療だから認めるが、健常な人の身長を伸ばすために使うのは認めないとされてきた。 向上目的での技術の利用を認めると、利用できる人とできない人の間に不公平が生じ、経済格差などの社会的不平等が拡大される恐れがあるからだ。特定の能力の向上が不用意にブームになると、同調圧力が生まれ、選択の自由が失われることも懸念される。 脳のインターネットではそれに加えて、考えていることや行おうとしていることが他社に知られ、プライバシーが侵害され、医師や行動が左右される恐れが、他の脳と機械をつなぐ技術と比べ、一層高くなると予想される。また、インターネットと接続する機器をいったん脳に埋め込むと、容易に取り外せなきなることも懸念される。離脱の自由が確実に保障されなければならない。 さらに脳のインターネット構築技術は、中国の人民解放軍が兵士の脳を索敵・通信式・兵器システムとつなぐ軍事目的で開発を進めているという。この技術により個々の兵士の能力は確かに向上するだろうが、他方で、兵士が調節脳を操作されて先頭の道具にされる事態も懸念される。 脳と機械をつなぐ技術は、軍民両面に使えるという問題も考えなければならない。
【先端技術は何をもたらすかー4-】聖教新聞2023.8.29 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 11, 2024 04:13:45 PM
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