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October 16, 2024
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カテゴリ:社会

果てしなく欲望招く倫理的問題も

科学文明論研究者  橳島 次郎

オルガノイド知能

昨年、オーストラリアの研究チームが、シリコンチャップ上で培養したヒトの脳神経細胞に、卓球のテレビゲームをプレーさせることが出来たと発表し、話題になった。生きている脳のニューロン(神経細胞)に、ゲーム捜査に関する情報データを入力して学習・記憶させ、プレーする電気信号を出力させることに世界で初めて成功したのである。脳でコンピューターを作る一歩が踏み出されたといえる。

今年2月には、米国の大学を中心とした国際研究チームが、ヒト多様性幹細胞から作った脳神経細胞を立体的に培養したミニ脳(脳オルガノイド)で人工知能を作ろうという「オルガノイド知能」計画を発表した(オルガノイドとは臓器のようなものという意味)。

現在の人工知能の基本計画は、脳の神経回路の働き方をモデルにしている(ニューラルネットワーク)。だから人間のニューロンを人工知能の本体として活用しようという発想は十分ありうる。オルガノイド知能が実現すれば、今の人工知能にとって代わる存在になるかもしれない。

ただそこで気になるのは、培養したミニ脳に知能を持たせることができたら、独自の意識くぉもつ存在にならないかという問題だ。機械の中のプログラムである人工知能が高度に発達したら、人間をしのぐ異質の存在にならないかと恐れられてきた。人間の脳細胞を元にしたオルガノイド知能には、そういう恐れはないだろうか。

そこまでは心配しすぎかもしれないが、知能を持つ脳オルガノイドに対して、私たちはどう向き合うべきだろうか。単なる研究材料=モノではなく、人間に近い、あるいは少なくとも感覚と意識を持つ実験動物と同等の、倫理的な配慮を必要とする存在だと考えて、研究を規制するべきだろうか。

また、オルガノイド知能をだれの細胞で作るかという問題も気になる。医療現場などで採取され匿名化された細胞を使えば、問題はないのか。もし、私の細胞でオルガノイド知能を私の脳とつないで、知的能力を高めたいといわれたら、研究者は応じてもいいだろうか。そんな人間の果てしない欲望が招く倫理的な問題も想定して、研究の行く末を見守る必要がある。

 

 

 

【選対委技術は何をもたらすか-5-】聖教新聞2023.9.5






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Last updated  October 16, 2024 05:24:10 AM
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