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カテゴリ:社会
大切にしたい動物とのかかわり 大塚 敦子(ノンフィクション作家) 読み聞かせで落ち着く アメリカでエイズ患者と動物とのかかわりを目の当たりにして以来、30年にわたり、人と動物たちとのポジティブな関わり方を見てきました。 日本では「アニマルセラピー」と呼ばれますが、正式には「動物介在介入」といいます。動物たちとの触れ合いを、人の福祉や健康、教育などに生かそうという試みです。 非常に多岐にわたる取り組みを紹介したく、近著『動物がくれる力』(岩波新書)を出しました。 その中から、いくつか代表的な取り組みを紹介しましょう。 最初は、子どもが犬に読み聞かせる「R.E.A.Dプログラム」です。1999年にユタ州で始まり、瞬く間に全米、カナダ、ヨーロッパへと広がりました。日本でも行われています。 読むのが苦手な子どもは、人の前で大きな声を出すのが恥ずかしい、読み間違いをして笑われたらどうしよう、などのプレッシャーにさらされています。だから、決して自分を笑ったり、ばかにしたりしない聞き手を相手に読むことが重要なのです。 某物たちには、読んでいる内容は理解できるはずがないのに、だんだん子どもたちの声が大きくなってきます。そんな子どもたちの姿を見ていると、読み聞かせをすることで満足感を得て、自己肯定感が強くなっていくのが分かるのです。 近年アメリカでは、アニマルシェルターにいる動物たちに読み聞かせをするプログラムが広がってきます。 これまで行われてきたように訓練を受けたセラピー県ではなく、シェルターに保護された犬や猫のために読み聞かせをしようというもの。 元々は、本を読むのが苦手な子どもたちのために考えられたプログラムですが、動物たちにとっても不安を和らげ落ちつかせる効果があったのです。吠え続けていた犬が静まったり、奥出知事困っていた犬が前に出てきたりするそうです。 猫の場合も、読んでいる人の方を見る回数が増え、人の注意を引こうとする回数が増えるそうです。 このような行動を見せる動物たちは、引き取られやすくなり、シェルターにいる動物たちの譲渡率もアップにもつながっているそうです。
人と動物がともに再生 教育・福祉・医療の現場でも
互いに気持ちが通じる 次に紹介したいのは茨城県にあるNPOキドックスです。ここでは、不登校や引きこもりの若者たちの自立支援と、保護犬の譲渡促進を組み合わせるという、ユニークなプログラムを行っています。 キドックスに来るのは、発達障害、診断はされていないものの発達障害の傾向がある、いじめや対人関係の問題を抱えている、家庭での虐待・性暴力など、さまざまな困難と生きづらさを抱えた若者たち。彼らに、保護された犬たちの世話やトレーニングを担ってもらい、その過程で彼ら自身の成長を図ろうというもの。 人が怖くて引きこもってしまい、ここに通い始めた女性は、最初は母親に付き添われて1時間いるのがやっとでした。それが犬のためならと頑張り、苦手だった周囲との連携もできるようになり、今では、スッタフからも頼りにされる存在に。 現在、保護犬ルター、保護犬と出会えるドッグカフェ、ペットボトル、トリミングサロンなどがあり、徐々に地域の人向けのサービスも展開して、地域を巻き込みながら進めていくそうです。 最後は、沖縄女子学園のプログラムです。動物愛護管理センターの収容期限が切れた犬のうち、問題行動があり、譲渡会に出せない犬のトレーニングを、少年院にいる生徒たちに手伝ってもらうというもの。 保護犬の訓練プログラムは、これまで千葉の八街少年院でも行ってきました。沖縄では、より一歩進んだ取り組みとして、訓練の期間中に、数回の犬とのショートステイを行いなす。これによって、生徒と犬との距離が一気に縮まるのです。 ある生徒は、それまでは人に見下られたくないから、力で解決する、というタイプでした。それが、犬に対しては優しい気持ちで接するしかないと気付き、ショートステイの時には、自分が母親になったかのような慈しみの心が育っていったようです。 身近な動物たちとの触れ合いによって、どれだけ心が開かれていくことか。その効果は計り知れません。心の再生を図り、他者への思いやりと共感性を高めていく。そんな取り組みが増えてほしいと思います。 =談
おおつか・あつこ 和歌山県うなれ。商社勤務を経て、紛争地を取材するフォトジャーナリストに。その後、困難を抱えた人と自然や動物との絆、人と動物の関りをテーマに執筆。著書に『犬が来る病院』『犬、そして猫が生きる力をくれた』『〈刑務所〉で盲導犬を育てる』など多数。
【社会Culture】聖教新聞2023.9.29 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 31, 2024 06:10:33 AM
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