締約国会議で強まる圧力
締約国会議で強まる圧力尾松 亮 海洋汚染の削減課す条約英国北西部セラフィールドでは、1994年にソープ再生処理工場が運転を開始し、海洋汚染の深刻化を懸念する周辺国からの非難が高まった。海洋汚染低減に向けた法的効力ある合意を確立し、その実現に向けた国際ルールづくりを後押ししたのが98年に発効したOSPAR条約(「北東大西洋の海洋環境の保護を目的としたオスロとパリ会での条約」)である。98年の同条約締約国会議では「2020年までに放射性廃棄物の海洋放出を限りなくゼロにする」という目標が採択された(シントラ宣言)。以後、この条約に基づいて、アイルランドや北欧諸国は英国に対し、セラフィールド起源の海洋汚染削減の具体策を求める要求を強めていく。特に喫緊の課題となったのが、再処理工場の運転開始以降に増加した放射性物質テクネチウム(Tc)99の海洋汚染対策である。99年1月にはOSPAR条約に基づく、放射性物質放出対策ワーキンググループがダブリン(アイルランド)で開催された。「(放射性物質放出対策ワーキンググループの技術専門家による会議で)もっとも強い要求をするのはアイルランドと北洋諸国であろう。これらの国々の主な懸念は、欧州最大の再処理施設であるソープ工場から放出されるTc99によりアイリッシュ海、北欧沿岸海域に汚染が蓄積されていることが明らかになっていることだ」と当時のアイルランドの新聞は報じている。これに対し、「英国政府はテクネチウム放出を削減するためのフィルター技術を導入する意向であると主張」していたが、いつまでにどれだけ削減するのか明確な約束はなされなかった。2000年6月にコペンハーゲンで行われた同条約大役国会議では、15カ国の大役国の内12カ国がそもそも汚染源である核燃料再処理事業の停止を求める決議を支持した。OSPARの枠組みを通じた周辺国からの圧力は、再処理工場閉鎖を強制することはできずとも、再処理を行う英国やフランス政府を国際的に孤立させていった。英仏政府の立場について当時、環境団体グリーンピースのポウラー氏は次のように指摘している。「英国とフランスは自らが支持しない決議には縛られないと主張するだろうが、周辺諸国政府やその住民の意向に反して海洋汚染を続けるなら、実際には政治的、社会的に孤立することになる」(廃炉制度研究会代表) 【廃炉の時代‐課題と対策‐㊾】聖教新聞2022.11.22