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ドイツでマルチリンガルを育てる

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2010年03月21日
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テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:老人介護士への道
私が実習させてもらっている老人ホームには、いろいろなご老人が住んでいらっしゃる。自分で補助イスを使って自由に外出できる方もいれば、寝たきりの方もいる。
私が担当している区域の住人は、介護が必要な方ばかりで、どちらかというと「重度」な方が多い。
私自身は介護の経験が個人的にもなく、「痴呆症」の方も、テレビドラマの中でしか見たことが無かった。だから、実習中、毎日が驚きの連続である。

介護士は、老人達から「Schwester」(シュベスター:看護婦、シスター)と呼ばれているが、私のことは、「Fraeulein」(フロイライン:お嬢さん)と呼ぶご老人が多い。なんかちょっとくすぐったい。
昨日は、介護士のAさんについて回った。Aさんは、私より若干若いのだが、私が頼りなく見えるせいか、あるお年寄りがAさんに、「今日は、娘さんを連れてきたの?」と聞いた。わたしのことを、Aさんのお嬢さんと勘違いしていたのだ。たぶん、Aさんは内心、ムッとしていたのでは? とハラハラしてしまった。

Zさんは、足が曲がらない。日中は、幼児が座るような、テーブルつきのイスに座らされている。手は自由に動くので、空で物をつかむようなしぐさをいつもしている。握力は驚くほど強い。夕方彼女を部屋につれて帰り、着替えさせ、ベットに寝かせる。
昨日は初めて彼女の夕飯の食事補助をした。彼女は、寝ていても、いつも上体を起こそうとする。ベットの上で腹筋をしている感じである。疲れないのかな?と最初見たとき、びっくりした。食事を差し上げようとしても、常に上体や手を動かしているので、結構難しい。また、突然、奇声を発するので、驚く。
この老人ホームでは、2人部屋が多い。私がZさんの食事補助をしている間、同室の女性は、ベッドの端に腰掛け、お祈りをしていた。背中越しにその声が聞こえるのだが、時折りすすり泣く声などもまじり、すごく気になって仕方が無かった。Zさんは話すことができないのだが、私が「もう少し、食べたいですか? それとも、もういりませんか?」などと聞くと、後ろから、「ただ口に突っ込めばいいのよ。」などのアドバイスが飛んでくる。彼女も私がいて、お祈りに集中できなかったのかもしれない。

Yさんは、寝たきり。体のあちこちが痛むようで、床摺れができないように、1日に何回か寝るポジションを左向き、右向き、と言う具合に変えるのだが、ちょっと身体を動かすだけでも、いつもうめき声を出す。話すことはできないが、手を動かすことはできるので、食べたくないと、手を口にもっていき、スプーンやコップを払いのけようとする。Yさんの食事補助は今まで何度かした。昨日は、介護中、私の手を握ってくださった。すごくうれしかった。

Xさんも寝たきり。Xさんの場合は、足が曲がったままでまっすぐに伸ばせない。手はいつも硬く握られている。食事補助の必要のある人には、水分をどれだけとった(与えた)のか、細かく用紙に記入する。例えば、15:00、コーヒー、200mlという具合。各自、1日に必要なカロリーと水分量が決まっている。Xさんは、液体を飲むができないので、水でもお茶でもコーヒーでも、なんでもパウダーを入れて緩めのゼリー状にして与える。そういう専用のパウダーがあることも初めて知った。

Wさんは最近癌で手術をしたそうで腸がないそうだ。だから、左わき腹に穴(?)があいており、そこから便を取り出す。初めてみた時には、ちょっと卒倒しそうになった。専用パッチ(?)を取り替えるのも、介護士の仕事。

糖尿病の方もたくさんいるので、血糖値をはかり、インシュリンを注射するのも介護士の仕事。他人様に針を刺すなんて怖い。でも、そんなこと言ってたら、この仕事は務まらない。さすがに、何の資格もない私には医療行為はさせない。私は見ているだけだが、ドキドキする。

Vさんは、先週の木曜日に92歳の誕生日を迎えた。遅番の介護士みんなで彼女の部屋を訪問し、ゼクト(ドイツ版シャンペン)をプレゼントし、おめでとうの歌を歌った。Vさんを訪問していた人もみんな一緒に口ずさんでいた。私はその歌をまったく知らなくて、こういう「ドイツ人の一般常識」も勉強しなくてはいけないのだなーと思った。
彼女は、補助イスで動き回ることができ、とても92歳には見えない若さ。身内がいないそうで、半年前にここに入居されたそうだ。夜はオムツをつけているが、それ以外は自分でトイレもできるし、それほど介護を必要としていない。彼女は、個室に入居しているが、タンスなどは自分のものを持ち込んでいる。おしゃれな人で洋服ダンスには、パリで購入した・・と言う感じの華やかな服がずらーっとかけられている。先輩介護士が、Vさんは下着やストッキングにも凝っているのよ、と言った。そして、Vさんに対し、「彼女(私)にみせてあげなさいよ、」と言った。先輩介護士は、Vさんに友達のように接している。Vさんの下着やストッキングは、赤や紫や黒で、他の入居者とは全く違う。

Uさんは、補助イスで自由に歩きまわれるし、自分の身の回りのことは何でもできるし、頭もしっかりしているようにみえるが、常に動いていないと頭が痛くなるそうだ。廊下と部屋を行ったり来たりしている。
昨日、Uさんに、「爪が伸びたので切って欲しい。」と言われた。先輩介護士に伝えたら、「爪切りなどの身体の手入れは朝することに決まっているので、明日の朝まで待つように。」と言った。早番の人は、起床させ、シャワーをさせたり身体を拭いたりしてから着替えさせる。早番の仕事のほうが大変なのだと思う。私は遅番しか経験していないので、それでは介護士の仕事の30パーセントぐらいしか見ていないのだろうなーと思う。
Uさんは、自分で就寝の用意ができるが、頻繁にナースコールを押す。何事かと部屋に行くと、
「掛布団1枚では寒い。」「毛布をかけると重すぎる。」「セーターを着て寝たい。」「セーターを着たら暑いので、脱ぎたい。」「しかし、脱ぐと寒い。」・・・
「窓を少し開けて欲しい。」「やはり、閉めて欲しい。」「カーテンを少しひいて欲しい。」「やはり、もう少しカーテンを開けて欲しい。」・・・
とても神経質な人なのだろう。どこまで相手にしてあげればいいのか、加減がわからない。

昨日、ソファーに腰掛けていたご老人が、いきなり何かを口ずさみ始めた。
先輩介護士に、「何を話していたかわかる?」と聞かれた。
「いいえ、全く・・・」と答えると、「彼女は、キングサロモンの詩を朗読していたのよ。彼女はいろいろな詩を暗誦できるのよ。」と教えてくれた。そんな知識もないと、ご老人の相手ができないのか・・・・。フー、ため息。

あと1日、頑張ろう。





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最終更新日  2010年03月21日 18時39分20秒
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