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ドイツでマルチリンガルを育てる

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2014年10月15日
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カテゴリ:職業再訓練
ドイツの税制は本当に複雑。
といっても、私は日本で確定申告をしたこともないし、日本の税制をあまり知らないので、比べようがないのだが、先生は、「世界で一番複雑な税制です。」と言う。
先週から、新しくD先生が講義をしている。D先生は、「このシステムは、ビスマルク時代に作られたもので・・・」と歴史の説明から入る。ほかの先生は実践的な授業で、いろいろなケーススタディを問題として出したりするのだが、D先生は、まるで大学の講義みたい。一方的に話すだけで、私のクラスメートの間では評判がすこぶる悪い。一人のクラスメートは、クラス担任(!)の授業時間に、「D先生の授業をボイコットしたいです。代えてください。」と文句を言っていたし、ほかのクラスメートは、この職業訓練校の校長(?)にD先生を交代するよう直談判したらしい。

先週、このD先生の授業で、所得税の税率についての話になった。ドイツの所得税の税率表は2種類ある。個人用と夫婦用。夫婦でも、所得が同じぐらいの人は個人用でそれぞれ申告することも可能だが、夫婦間で所得にかなりの差がある場合、もしくはどちらかに収入がない場合は、夫婦用の税率表を利用したほうが得になる。夫婦用の税率表は、夫婦および人生のパートナー同士が利用できると法律に記されている。所得税法の先生は、「人生のパートナーとは、同性のカップル同士にのみ適用され、事実婚の夫婦や同棲カップルには適用されません。」と説明した。ところが、D先生は、「結婚していない異性のカップルでも、同居していて一緒に生活を営んでいると証明できれば、人生のパートナーといえます。よって、夫婦用税率表が適用になります。」と言った。この時点で、みんなざわざわし始めた。このテーマにみんな関心をもっているのは、クラスにまさしくそういう人がいるからだ。彼女はパートナーとは結婚していないが、子供もいて、夫婦同様に暮らしている。しかし、結婚していないので、別々に税申告をしてきた。彼女は現在失業中なので、もし、共同で申告できたら、かなり税金が少なくて済むので、切実な問題。それで、何人ものクラスメートが、「えっ? XX先生は異性間のパートナーシップは認められないといってましたよ。」と何度も確認した。「同棲でも、認められるなら、その辺の人を捕まえて一緒に申告したっていいわけですよね?」とシングルマザーのNさんが聞いた。D先生は、「誰でもが認められるわけではないですよ。公証人に証書を作ってもらう必要があります。逆に言えば、公証人に夫婦同様に暮らしていると認めてもらえれば、人生のパートナーとして共同で税申告ができるのです。」と言った。事実婚をしている人が、「そんな話は今まで聞いたことがありませんでした。」といったら、D先生は、「最近改正になったんですよ。」と言った。

その授業の翌日に、所得税の先生の授業があった。そのとき、Nさんが、「D先生は、人生のパートナーには異性のカップルも含まれるといいましたが、どうなんでしょうか?」と聞いた。所得税の先生は、「税法上では同性のパートナーシップしか認められていません。」と言い切った。翌日も所得税の先生の授業だったのだが、そのときに先生は、この条文を読んでください、といって、根拠となる条例をスクリーンに映し出した。
休み時間に、クラスメートの一人が勝手に先生のタブレットからその条文をプリントアウトした。

そして、今日、再び、D先生の授業だった。
今日は、社会保険についての話だったが、唐突に先生の講義をさえぎり、Nさんが、「先生、質問があります。人生のパートナーについてですが、調べたところ、異性には適用されないようですが、先生が異性でもいいという根拠はどこにあるのでしょうか?」と切り出した。先生は、「そんなことは書いてあります。」と言った。「どこに書いてあるんですか?こちらは、その考えが間違っているという証拠をもっていますが、お見せしましょうか?」といって、所得税法の先生のタブレットから勝手にプリントアウトした条文をみせた。D先生はそれをみて、「これはXXXですよ。これは意味がありません。私の言うことが正しいのです。」と言った。Nさんは、「そういう言い方、おかしいんじゃないですか?先生によって見解がかわるのもおかしい。そういう人が授業をしているのは危険ですよね。」と言い放った。先生は、明らかに怒りで震えていた。「私はこの地区で15年間、税法について講義をしているんです。毎日のように新しい情報も勉強しています。あなたに非難される筋合いはありません。」といって、さらに食いつこうとしたNさんを無視して授業を始めた。

私はことの成り行きにハラハラしてしまった。ここまで面子を潰された先生もかわいそうになってしまった。D先生の評判は悪いのだけど、その一つに、質問にまともに答えない、とうことがあるようだ。フルタイムの人は午後もD先生の授業があり、そこでは、先生が説明を読み上げ、生徒が書きとることをしたそうだが、「すみません、もう少し、ゆっくり話していただかないと書き取れません。」とお願いした人(ドイツ人)に、「集中力が足りないのです。集中すれば出来ます。」と言ったそうだ。生徒がわかるように説明するのではなく、あくまでも自分のやり方を貫く。
私は、このクラスの人は個人的なケースを関連付けて質問する人が多く、先生の話をさえぎりすぎだと思うので、D先生の教え方が悪すぎる、とは思わない。D先生の話している内容は、かなり興味深い。残念ながら、その半分しか理解できてないのが、本当に残念だ。

今日の話で、へーと思ったのは、健康保険の話。
JAE(Jahres Arbeit Entgeltgrenze)、年間賃金の境界とでも訳すのだろうか?
ドイツでは、日本のように給料から健康保険料が差し引かれるのだが、年収がJAEよりある人は、健康保険料を源泉徴収される義務がないというもの。しかし、何かしらの保険に入る義務はある。簡単にいえば、JAE以下の収入の人は、自動的(強制的)に公的保険に加入し、保険料が源泉徴収されるが、JAE以上の収入のある人は、公的保険かプライベート保険かを選べる立場にある。プライベート保険のほうが、若いうちは保険料が安かったり、優先的に診療してくれるところも多く、何かと特典が多い。また、プライベート保険は、年収に左右されないので、収入が多く、かつ若く、独身であれば、かなり割安感がある。しかし、年をとり、家族が増えると、子供もそれぞれ個別に保険に加入させなければならず、負担が増える。プライベート保険は、3年以上加入していると、その後年収が減っても、公的年金に戻ることが出来ないのだそうだ。しかし、3年以内にJAEを下回るようになった場合は、自動的に公的保険に戻されるらしい。
現在、プライベート保険に加入していた人で、その後収入が減り、保険料を払えなくなり、かつ公的保険には戻れない状態、つまり健康保険無加入者がドイツでは1万人ほどいるそうだ。

そのほか、病気で休んだときの補償金や産前産後の補助金の話も合った。
出産6週間前から出産後8週間目まで「Mutterschaftsgeld」が支払われるのだが、クラスメートの一人が、「私は早産で子供が予定日の11週も前に生まれたので、何ももらえなかった。今からでも、申請すれば何かもらえるか?」というようなことを質問した。みんな自分の身の回りのことをどんどん質問している。残念ながら、口頭のやり取りだけでは、私にはあまり理解できない。だから、先生がどういう風に答えたのかよくわからない。もっとドイツ語が理解できたら、もっと授業が楽しめるのに、残念だ。





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最終更新日  2014年10月16日 04時47分20秒
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