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ドイツでマルチリンガルを育てる

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2015年04月25日
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毎週金曜日の午後、にこちゃんを「学習支援センター」に連れて行っている。
片道20kmほどの距離なのだが、途中工事で迂回しなくてはならず、40分ぐらいかかってしまう。にこちゃんが先生と勉強している時間、私は待合室で待っている。この1時間の「学習支援」のために、結局私の午後はほぼ丸々つぶれてしまう。

授業後、先生から「今日はこういうことをしました」「ニコはこういうことが苦手です」「これが宿題です」「家ではこういうことに気をつけて下さい」というような簡単な報告とアドバイスを受ける。「集中力を高めるために、こういうことをしたらいい」こうしたら、もっと子供のやる気を引き出せる」というようなことを言われる。しかし、家でそのようにしても、うまくいかない。「もっと丁寧に問題を読もうよ。」「文の最後にはピリオドを忘れないように気をつけようね。」と先生から言われたとおりに指摘しても、「そんなこと、どうだっていい。」といわれてしまい、ものすごく頭にきた。少しでもよくなるように、毎回学習支援センターに連れて行っているのに、そこで学んだことを「どうでもいい」とはき捨てる。どうでもいいことに、こんなに時間をつぎ込んでいるのかと思うと、悲しくなる。

昨日は、授業後、先生が、「今日は、今までしてきたことがどれだけ身についているか、テストをしてみました。結果は散々でした。ニコは、なんでもすばやく適当に終わらせようとして、自分で考えません。これでは、この先、学校でいい成績が取れませんよ。今はまだ2年生だからいいですが、3年生になったら、ついていけなくなりますよ。」と指摘された。「本来は、学習支援は最高10時間までですが、ニコの場合は、このままでは困るので、あと2回授業を増やします。」と言われた。そして、「もう一度、支援センターのチーフと約束をとって、今後どのようにしていくのがいいか話し合ってください。」といわれ、ものすごくがっかりした。

自分のテストがあると、それが気になって、にこちゃんの宿題やピアノの練習に付き合えない。
私が横についてピアノの練習をさせるのと、一人で勝手にさせるのとでは、ものすごく差出る。でも、それは私にとって、ものすごく時間とエネルギーを使うことになる。
宿題も同じ。いちいち説明して、やり方を習得させるのに、ものすごく時間を要する。とにかく飲み込み悪い。恵子が1を聞いて10を知ることができる子なら、にこちゃんは10聞いても5以下しか理解できない子なのだ。しかも、自分から説明を求めてきたからこちらが説明してあげている場合でも、ぜんぜん聞いてない。とにかくにこちゃんといると私の堪忍袋の緒は切れっぱなし。自分でもなんてヒステリックな人間なんだろうと思う。

支援センターの先生は、「ニコはすぐに遊びたがるから、5分間問題をさせて、できたら休憩、そして、また5分勉強と区切ったほうがいいです。」と言った。しかし、一度「遊びモード」
にはいったら、10分後にまた「勉強モード」に戻すのは不可能ということは私が一番よく知っている。私は支援センターの先生方の指摘は、机上の空論に過ぎないように感じている。その論理がぴたりと当てはまる子もいるだろう。しかし、ニコちゃんには、まったく見当違いのアドバイスのような気がしてならない。にこちゃんに一番必要なのは、私が忍耐強く時間をかけてあげることだと思う。わかっているのだが、実行できないジレンマが常にある。

支援センターの先生は、「今までは、お母さんがニコの宿題を見てあげていたんですよね。それをやめてみてください。ニコが宿題をしなかったら、ノートに「本人にやる気がありませんでした。」と書いておきなさい。そうしたら先生は、クラスの前で、ニコが宿題をしてこなかったことをとがめるでしょう。本人に恥をかかせて、宿題をしなくちゃいけないことをわからせた方がいいですよ。」と言った。確かに、テストで悪い点数をとったり、宿題をしてこなくて減点されるのを嫌がる子もたくさんいるが、「恥ずかしいから、次からは頑張ろう」という思考回路はにこちゃんにはない。それなら、無理やりにでも家でやらせたほうがよほど本人のためになると思う。「やらなくてもいいよ。困るのはママではなくて、あなたなのだから。」と言っても、「Mir ist egal」なのである。

先生は、私の前で、ニコに、「このままでは、学校でいい成績をとれないよ。君は、お兄ちゃんもおねえちゃんもギムナジウムに行っているから、自分だってギムナジウムかレアルシューレに行きたいでしょ?でも、このままでは、Hauptschuleになっちゃうよ。」と言った。多くの人がそう思っているかもしれないが、それを実際に教育者が言葉に出してしまうことに驚いた。実は同じことを小児科医にも言われた。「このままでは、Hauptschuleになってしまいますよ。それでもいいんですか?」と医者もダイレクトに言った。

にこちゃんの小学校の横にHauptschuleがある。来年度の入学予定者は16人しかおらず、もう1年存続させるが、それ以降は閉校にするそうだ。在学生は。近隣市町村のHauptschuleに転校を余儀なくされる。時代の流れで、Hauptschuleに入学する子は激減している。そのうえ、「おバカな子が行く学校」というレッテルを貼られてしまっているのだから、自分から好んで行きたいと思う子が多いわけがない。その分、レアルシューレとギムナジウムは定員オーバー状態。ドイツの学校システムも破綻してきているように感じる。

それともう1点、支援センターの先生に言われて、「またか」と思ったことは、「家では、少なくともお父さんかお母さんのどちらかが、ドイツ語を話してください。ニコのドイツ語力は低すぎます。」という話。私のドイツ語はもとより、夫のドイツ語もパーフェクトではない。不完全な言葉で話しかけるより、完全な言葉で話しかけたほうがいいと思っている。
にこちゃんは、最近、私が日本語で話しかけても、ドイツ語で答える。普通の日本語はほぼ理解しているが、算数の問題などで、私が「ろくじゅうはちページの問題を・・・」とか言うと、「えっ?何ページ?わからないから、ドイツ語で言って。」といわれることはある。夫とは英語で話しているのだが、不思議なことに、にこちゃんも英語をしゃべる。「英語はクラスで僕が一番できる」ということを自慢している。何かひとつでもできることがあるというのは大切なことだと思う。私たちは誰になんと指摘されようとも方針をかえるつもりはない。少なくとも、私は日本語以外に自信をもって流暢に話せる言葉がないから、他に選択肢がない。

恵子は、日本語、英語、ドイツ語を話せることで、すごく得をする環境にいる。賢浩も、先日の英語のGFSで「1」をもらった。やはり、日ごろから英語を使っているので、英語でプレゼンテーションをしても、ドイツ語と同じように話せる。多言語環境は、にこちゃんには今のところマイナス面しか残していないようだが、将来よかったと思ってもらえる日がくると信じたい。

ところで、先日、恵子から、大学のメールが転送されてきた。
「はしかとおたふくかぜの予防接種のお知らせ」だった。大学の健康センターで、希望者は無料で受けられるとのことだった。しかし、ドイツで育った子は、ほぼ全員接種済だと思う。留学生が多いから、わざわざ大学でこんなお知らせが回ってきたのだろうか?それとも、どの大学でもそんな感じなんだろうか?ちょっとびっくりした。





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最終更新日  2015年04月25日 19時26分29秒
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