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ドイツでマルチリンガルを育てる

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2015年06月24日
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カテゴリ:職業再訓練
今日は2つの税理士事務所から面接に呼ばれていた。
午前中の事務所は、60歳すぎの女性の税理士さんの事務所。5分前についたら、事務所のみんなでのミーティング中で、玄関の横においてあるソファーで待っていて下さいと言われた。事務所の中からは、笑い声も聞こえてきて、楽しそうな雰囲気だなーと思った。
しばらくして、会議がお開きになり、税理士さんに呼ばれた。
彼女は私の対面に座り、「何から話しましょうか?あなたの履歴書をみましたが、面白い経歴で、すごく興味をもったんです。だから、今日来てもらったわけですけど、履歴書に日本語と英語は流暢と書いてあるけど、ドイツ語はどの程度なの?」といきなり聞かれた。「顧客に電話で対応をすることは、正直言ってできません。」と答えたら、「そう。でも、大丈夫。1年半も研修期間があるでしょ。そのうち覚えるわよ。とにかく失敗を恐れてはいけないわ。それから、なんでも直ぐに人にきいて解決するのも良くない。自分で考えて、やってみて、自分ができないこと、間違っていることに気づくのが大切なの。」と言った。すごく安心した。
この税理士さんもすごくいい人で、どんな奴でもまとめて面倒見るわよ、どんと来い!っていう肝っ玉母さん的雰囲気を持った人だった。
今の時点では完璧でなくてもいい、私が責任持って育てる、という考えを持っている人だった。

私は、「研修終了後は、できればフルタイムで働きたい」と伝えたら、「それは今は約束できない。その時に空きがあるかどうかわからない。」と言われた。

「他にも応募しているの?」と聞かれたので、正直に「3箇所から面接に呼ばれた」と伝えた。彼女は「私はあなたがここで研修をするのになんの問題も感じない。ただ、この事務所では何でも私の一存できめることはしない。みんなの意見を聞いて最終的な答えを出すつもりだけど、あなたの方もいろいろな事務所を見てみて、それでもうちにきたいと思うなら、電話をください。期限は2週間でいいかしら?」と言われた。

今回の面接でもほとんど定型的なことは聞かれなかった。せっかく、長所とか短所とか、なんでこの事務所に入りたいのか、どうしてこの職業を選んだのか?という質問の答えを何度も何度も復唱して覚えたのに・・・・

最後に彼女は私に、「あなたは、もう少し大きな声で話すようにしなさい。そんな小さい声では何を話しているかわかんないわよ。」と言った。ごもっとも・・・・ 先週も同じことを言われたなー、と思いだした。でも、彼女は、「うちの事務所には税理士見習い中の大学生の男の子もいるんだけど、彼も図体はでかいのに、顧客と話すときはすごく声が小さいのよ。」と、私だけではないとちゃんとフォローも忘れなかった。全く緊張しないで面接を終えることができた。すごく雰囲気のいい昔ながらの古めかしい事務所だった。面接時間は40分程度だった。

午後の事務所は、一転して、ものすごく近代的で、圧倒された。ここでお待ちくださいと言って通された会議室がすごく綺麗で、モダンで、機能的で、でもセンスがあって、ここは丸の内にあるオフィスです、と言われても違和感のないようなところだった。それだけでもド緊張なのに、なんと3人も税理士さんが会議室に入ってきた。本来は4人いるそうだが、一人は産休中なのだそうだ。
3対1で、まずそれだけで、威圧された。やはりここでも、典型的な質問はされなかった。

「日本で文学を学んで、ドイツで税法を勉強するというのは本当に面白いね。学校の勉強はどう?」と聞かれた。「君の成績は結構いいよね。ドイツ語で学んでいるのにすごいね。どの科目が好き? どんなこと習っているの? 簿記はどの程度できるの? PCの知識はどの程度?」と、真ん中に座ったおじさんが鋭い目で質問してくる。私の履歴書を見ながら、私のコメントをメモしている。本当に緊張した。

「ドイツに何年住んでいるの?」と聞かれた。正直に「15年」というと、すごく驚かれた。「15年も住んで、こんだけしかドイツ語ができないのかよー」と内心みんな思ったに違いない。「家では、ドイツ語を話していないんだね。」と決めつけるように言われた。まあ、実際にそうなんだけど・・・
「転勤があったり小さい子供がいたりで、ほとんど家にいたのでドイツ語が上達しませんでした。」とここでも言い訳をするはめになってしまった。どこにいってもドイツ語がネックになってしまう。

この事務所はかなり大きく、別の町にも支社がある。「あなたが住んでいる町は、本社と支社のちょうど真ん中なのよね。支社で働くという選択肢はあるかしら? 車は持っている?」と聞かれた。どう考えても支社のほうがうちから遠い。でも、「問題ありません。」と答えた。
ここでも、「他でも面接を受けている?」と聞かれたので、「はい」と答えた。

書類を送るときに、学校からのインフォメーションレターも添付している。それには、「研修期間は2016年1月から2017年7月までです、この研修における貴事務所の金銭的負担はありません。」という部分が太字で書かれている。午前中の税理士事務所でも言われたのだが、「金銭的負担がないといっても、人を育てるのはものすごく時間と労力を使うことなんですよ。」と言われた。「私達は、研修だけで終わるのではなく、その後もなるべく長くうちで働いてくれることを願っています。」と言った。私が「研修後はできればフルタイムで働きたい。」と伝えたら、歓迎された。

「顧客と直接電話でやりとりできますか?」と聞かれたので、「最初からはできないと思います。」と正直に答えた。3人のうちの一人は支社長(?)で、彼は優しい感じで、「最初からはできなくて当然だよ。あなたにとっては外国語になるのだから。最初からあなたに顧客を担当させることはない。最初は他の人と一緒に組んでやってもらうので、やり方を見て覚えて欲しい。貴方の成績表をみれば、あなたには十分に能力があることがわかります。あなたならできると思っています。」と言ってくれた。ずいぶん買いかぶられているような気がしたが、ホッとした。

「ここのホームページには英語バージョンもありましたが、英語はどの程度使いますか?」と聞いたところ、「この辺は医療機器のメーカーが多く、外国の会社の事務所も多いので、使う機会はあります。でも、やはりドイツ語は必要です。ドイツ語だけではなく、シュエービッシュ(この地域の方言)も覚えてくださいね。」と鋭い目つきの税理士さんが言った。

女性の税理士さんがボス的存在で、彼女が色々と説明をし、鋭い目のおじさん(私より年下)が色々と質問をし、優しいおじさん(私より年下)が私をフォローする、という感じで面接はすすめられた。

でも、あまりにも自分のドイツ語が下手で、私は最後、かなり弱気な発言をしまくってしまった。
すると、もしかして私の上司になるかもしれない優しいおじさんが「でもね、外国人で税法を勉強しているってことだけでも、僕は尊敬しちゃうよ。今どき税法を勉強したがる若い人なんて少ないから、この業界、結構人手不足なんだよ。税法なんて面倒くさいもんね。」と言ってくれた。支社は遠いけど、この人の下でだったら働きやすいかもしれない、と思った。

この事務所からは来週返事をもらうことになった。面接時間は1時間程度だった。

今まで面接をしてくれたどの税理士も、「日本で大学を出ていながら、なぜドイツで関係ない職業を学ぼうとしているのか?」ということに興味をもってくれたようだ。あと、税理士事務所では、語学力(ドイツ語以外の言葉)は全く武器にならないと言われたが、実際は英語力はかなりプラスに働くと思った。あと、「大卒」=「学ぶ能力が高い」と評価されているように感じた。
学校での成績を重視したのは3つ目の事務所だけで、あとの事務所では成績は気にしてなかったように思う。趣味やプライベートの話も特に聞かれなかった。

企業が募集したポジションに応募したわけではないので、大勢からふるい落とすというための面接ではない。だから、典型的な質問、意地悪な質問はなかった。

結局私は全部で10通の「Initiativbewerbung」(自主的応募)を送り、3箇所から「空きがない」と断られ、3箇所から面接に呼ばれ、4箇所から無視された。平均的なところだろうか?

先週の金曜日に面接をしたところからは、「他の事務員との化学反応を見たい」と言われ、日時を連絡します、と言われたが、その後音沙汰なし。なんだかだんだん不安になってきた。面接の後、お礼のメールを送らなかったのだが、送ればよかったと後悔した。それで、今日こそは、2つの事務所に送ろうとネットでひな形を探していたら、「そんなメールを送っても、もらった方はうれしくない。それで評価が変わることもない。」という文が目についた。もちろん、送ったほうがいい、と書いてあるものもあった。賢浩が以前にドイツ語の家庭教師に聞いたところ、「Ich hoffe, ich konnte einen guten Eindruck hinterlassen und würde ich mich über eine positive Rückmeldung sehr freuen.(いい印象を残せたことを願ってます。良い知らせをいただけたら嬉しいです)などという文は送らない方がいい」と言っていたそうだ。忙しい人達だし、結局は送るのをやめた。

まな板の上の鯉になった気分。





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最終更新日  2015年06月25日 06時17分27秒
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