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テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:職業再訓練
昨日学校の授業の一環で、労働裁判所で「Güteverhandlung」(和解調停)を見学した。
想像していたものと全然違ったが、とても面白かった。 まず、部屋が小さくて驚いた。 大きい家のリビングルームぐらいの広さで、調停員の前に机が2つ、それぞれに椅子が2つづつ。 後ろの壁際に見学者及び次の調停の人が座る用の椅子が10脚ほど。 1つの案件に約20分。 調停員は事前に提出された書類の不備や疑問点を正し、和解案を提示する。 双方がそれで納得すれば、一件落着。合意できなければ、次の段階に進む。 コンピューターとかそんなものは使わないで、すべて書類。筆記をする代わりに、調停員は大切なことはテープレコーダーに吹き込んでいく。和解に達した場合は、その箇所を最後に双方に聞かせて「双方に聞いてもらい、承認を得た。」と吹き込む。句読点も声に出して吹き込む。とにかく早口だし、淀みがない。調停員は若い女性で、20代後半ぐらいに見えたが、すごく落ち着いているし、どんな人が相手でも、テキパキと事務を進めて、頭のいい人だなーという印象を持った。 昨日は8つの案件を見学したが、一番面白かった(不謹慎な言い方だが)のは、訴えたのが元雇い主、訴えられたのが元従業員の案件。通常は反対の場合が多いのだが、これは雇い主が従業員を信頼して5000ユーロ前貸ししたのに、返さないで会社をやめてしまったケース。雇い主は従業員の最後の給料から1200ユーロを勝手に差し引いたが、残りの3800ユーロは未払いのまま。 元従業員は弁護士に同席してもらってたが、雇い主は一人できていた。調停では弁護士をつけなくてもいいそうだ。 雇い主は「お前を信用して貸してやったのに!このScheixxxx!!」と激昂していた。元従業員の弁護士は「彼は土日も働かされたし、かなりの時間の残業をしたのに、なんの手当も払ってもらえなかった。それで彼としては、残業代として5000ユーロを受け取った積もりでいた。だから、返す義務は生じない。」と弁護した。雇い主は元従業員を指差して「おい、お前、俺の目を見ろ!俺の目を見てそう言えるか!」と更にヒートアップ。 調停員は雇い主に「前払いとして払ったという証拠はありますか?」、元従業員側には「契約では週何時間労働になっているのですか?」と聞いた。雇い主が出した証拠が証拠として採用するのに不十分だったようだ。元従業員の弁護士が見せた労働契約書には「当社における通常時間」とかいてあるだけで、数字は書いていなかった。 調停員は双方の言い分を聞いて、「このケースでは、5000ユーロの40%を元従業員は返還するのが妥当です。すでに1200ユーロ払っているので、あとの800ユーロを払って和解してはどうですか?」と調停案を出した。雇い主は「残り全額をかえしてもらいたいです。800ユーロじゃ納得できません。」と調停案を突っぱねた。「更に争うとなると、あなたはたくさんの証拠書類を揃えなくてはいけませんよ。今日持ってきたものでは証拠になりません。証拠はすべて書面になっていないといけないのですよ。最悪の場合、あなたが負けて、1セントも戻ってこないこともあるのですよ。今和解すれば、少なくとも800ユーロは戻ってきます。それでも争いたいですか?」と念を押した。雇い主は「もちろん、とことん争います。こっちは相手を信用して貸したのに、それを裏切ったことは許せない。」と言った。それで、結局は来年の5月に裁判になることが決まった。 その他のケースも全部興味深かった。 調停員はその場で電卓をたたき、いくらが妥当かを判断していく。こういう職業もあるのかーと感心した。 調停の途中で、当事者がちょっと弁護士と話し合いたい、とか、弁護士だけの出席で、雇い主に確かめたい、などの理由で、中座することがある。そうすると調停の時間が伸びる。調停中ドアは閉まっているが鍵はかかっておらず、次の予定の人が入ってきたりする。 ある弁護士さんが私達が見学しているのを見て、「どこのグループですか?」と聞いた。「私たちは職業再訓練生です」とクラスメートの一人が答えた。その弁護士さんは「そうですか、私の事務所も職業訓練生を応募しているんですけど、ここ5年、一人の応募もないんですよ。」と嘆いた。「私の弟もハンブルグで弁護士をしているんですけど、大都市の事務所にはたくさん応募があるんですよ。でも、誰もこんな片田舎で弁護士をしたいとは思わないみたいですね。残念ながら・・・」と話していた。 私達の学校の先生は、「この町には弁護士がいすぎで、仕事のない弁護士が多いんですよ。暇な弁護士は日がなネットを眺めて違法なことはないか目を光らせているのです。そんな話はここにはゴロゴロしています。」と言っていたが、誰の話が正しいのだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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