天使になれない

その後、主人とは時々電話で口論になったりもしながら
・・・3年近い時が流れました。この年数は貴重です。
夫婦は別居２年を越えると、夫婦関係の破綻を来たしたと認められますが、
それを越えたのです。


主人は相変わらず、親類の誰にも私の別居を告げず・・・
週末ごとに訪れる子供達のあとをつけて私の住処を探すこともせず・・・
時が流れたのでした。


私達の住む街は、文教地区で学校も多く、住みたいランキングで常に上位に入る街です。
有名人も住んでいますし、ドラマの撮影でもよく使われる街です。
人気を反映してか、市内にはマンション建築ラッシュが続いていました。


ある日、薫と私は、そんな新築分譲マンションのひとつを見学しました。


というのも、主人もそろそろ自分の家を買う最後の時期にかかっていると
常々思っていたからです。
・・・思っていた・・て、もちろん私と薫がですよ。


前々から主人は官舎を出たがっていました。
が、かといって、家を探すのも面倒だし、そういうことは一切したくない人なので、
そこは私たちが代わりにしないといけません。
（薫と出会って以来、私が一人でしてきた主人関係のことは、ほとんどすべて薫がやってくれていました）


そして、見学したそのマンションをとても気に入った私は、
主人にもちかけたのでした。


駅から徒歩１分。
高層マンションの最上階。夜景はホテルのようです。
パーティールーム、ＡＶルーム、フィットネスルーム、
フロントへの電話一本でなんでも揃うホテル並みの充実したサービス・・・


主人もそこを気に入り、買うことにしました。
私も2000万ほどお金を出しました。


子供達は、私とともに家を出て、薫と４人で暮らしていたのですが、
新しい家には各自の部屋もあるので、いっそ子供達も、主人とそこに寝起きさせることにしました。
そしてこのことも主人はとても喜びました。


同時に私と薫も、その本宅から徒歩１分の小さな賃貸マンションに引っ越しました。


私は毎朝、本宅に行き、家族を起こし、ご飯を食べさせ、お弁当を持たせて出勤・通学させて家事をします。


子供達が帰宅する頃、私と薫は本宅に行き、子供達を迎えます。
薫は夕ご飯作り、私はそのほかの家事。


夕ご飯のあと、薫と私は別宅に戻り、仕事です。


子供達もお風呂を済ませてから別宅にきて、勉強です。


２軒の家を行ったり来たり、
ちょうど、おじいちゃんおばあちゃんの住む離れと　行き来する感覚で
私達は暮らしています。
この生活ももう３年過ぎたかな？


そうそう。
主人は面白い人で、薫のご飯になって８年目なのですが、
いまだにそのことを知りません。
私が作っていると思っているのです。


それに、こんなに近くに住んでいるのに、私の住む家を知りません。
探そうとしません。
子供達が毎日行き来している以上、すぐ近所だし、いざとなったら
子供に聞けばわかると思い、安心しているのだと思います。


当然、薫のことも知りません。


プライベートなことは一切私に聞かない主人です。
聞くと私の機嫌が悪くなることもあるでしょうし、
たぶん興味も無いのでしょう。


なぜなら、主人にとっては、快適なこの生活は、なにも変わっていないからです。
食事も掃除も洗濯もできている。
近所づきあいもＰＴＡも家族サービスもお中元そのほか日常の雑事はなにも
昔も今も、主人をわずらわせることがないのです・・・・
仕事と研究に専念できること、昔も今も、これが主人の願いです。


ありがたいことで、主人のこういうところが、
不思議な二重生活を支える一因であることは事実です。


もう少しはっきりと言えば、
こういう性格の主人なので、こういう生活になっている、
と言えます。


別の性格の主人であれば、私たちはまた別の暮らし方を今しているはずなので。。。


これが、今の私達の生活です。
また　時が来れば、それにあわせて漂流・シフトしていくと思います。





2006年08月13日