天使になれない

2006.12.27


高校2年12月


今、夜中の２時過ぎです。




最近Sクンはとても機嫌が悪い。

朝起きあがれずベッドから落ちる、紙にグルグルグルグルボールペンで丸を書きなぐる、
いきなり怒鳴る、

周囲の者は、たまったものではない。

「どうしてそんなにイライラしているの」私はSクンに尋ねてみた。

「頭の中に沢山のひとがいて、ざわざわ議論をしていて、うるさくて、夜眠れない。

自分は外野で、その人たちの騒ぐのをお願いだから止めて、
と止めさせようとしているのだけれども、やめてくれない。」


「ビリー・ミリガンみたいに色々な人格の人がいるの？
名前はあるの？」

「人数も名前もわからない・・・。狂った学者がいっぱいいるみたいな・・・。


一人は懐古主義で古典的な考えに凝り固まっている。
その人が男尊女卑。

一人は夢想家で浮世離れしたことにしか興味がない。世間の汚い部分なんかどうでもいいと思っている。

一人は物静かで、美しいものが大好きなんだよね、あの人は。僕はこの人が一番好きなんだけど。物事を深く考えるのが好きな人。」


「この３人しかいないの？」とさらに尋ねてみた。


「ほかにもいる。
特に目立つのはこの３人で、この３人がそりが合わなくて、
映画で言うなら、会議が紛糾している中で一番目立っているのがこの３人で、
あとはエキストラみたいなかんじ。

勉強とか何かに集中しているときは
頭に隙間がなくなるから、そういう情景はわき上がってこないんだけれど。

ヴィジョンに音声がついていてそれで頭がいっぱいになる。

自分の気分が移り変わるときに、
口をついて出たことばが、
あとあとになって考えてみると、
その人達の言葉の代弁だったりする。


その会議は、頭の中の隙間をなくすために、
脳がやっていることだと思うので、

頭の中をいつも隙間がないようにしていないと、
自分はだめなんだと思う。

絶えずなにかを考えていないと気が狂うような気がする。
絶えず考えていないと気が済まない。
なにも考えないでいると、その会議が始まっちゃう。

例えば、きれいな女性を見たとすると、
恋愛の話になって、
中世・古代の恋愛がどのような変遷を経て
現代の恋愛になったか、というような話になって、
また現代の「愛」と、それを指す意味は、
キリスト教国の「アモーレ」と仏教用語の「愛」と
日本人の生理的な本能的な愛とが組み合わさったものが
現代の日本人が漠然とイメージする愛なのではないだろうか、
とか。」






夜は、寝ようとすると会議が始まるので、ちっとも眠れないらしい。
または悪夢を見るらしい。

なんでも見通せる魔女に、のこぎりを首に突きつけられて、
でも死ねない夢とか。





今、夜中の２時過ぎ。。。

もしかしてＳクンは、今も会議がうるさくて、眠れないのかもしれない。

やめてやめてって叫んでも、全然止めてくれない会議。

それとも、悪夢にうなされているのか・・・・

夜が明けてからは、うっすら眠れるらしいから、
それまでは、今夜も、もしかして、辛いのかも。


書きながら、Ｓクンに思いを馳せている。