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細木数子かわら版

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2008.06.20
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カテゴリ:小説
またまたお久しぶりです(汗)4日に1回の更新すら遅れてしまいました。。

今週はどたどたでらんらんるーでしたので(?)、かまえませんでした。
更新ないときは過去の記事でも見て暇を潰して行かれてください。

今日は小説です、最近書けてなくて自信作とかはないんですけど。
興味無い方はいつものように華麗にスルーでw
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どうぞ。




青写真


―舞台、高校。幕、上がる―


 青空を天井に見立てて際限なく限りなく、私は一人の友人を高校の頃手に入れた。どうするかについておおよその憶測しかない中で始まった今回の実験。舞台、高校、幕、上がる。私、は一人の友人を手に入れる。この友人は実際には実在していない。が、誰かの奥底で眠っている本来のあるべき姿として友人は存在する。「純」、この名前が適当だ、そしてこの「純」を通してあるいは自分が何か不思議な感覚になれるような気がしてこの文章は実験として、いわば実験台のなにそれに変わる恐れが幾分にあり。作者はこれでも精神が壊れないように必死で、保っている心は友人によってであり、今が物騒で人が人として信用ならないとお思いかもしれないが、決してそんなことはないということをなんならこの「純」が証明出来てくれれば幸いと思っている。水くささが増すのでもう止すが、実験の裸体文は未だにとりあえずを持って青写真の状態から始まるので構想云々あしからず。

 青空が似合う男。ここまで純粋で無垢な人を見たことがなかった。
「速見純です、よろしく」
爽やかな笑顔が第一印象であった。高校の薄汚いイメージが似合う教室の中でそうして誰も友人のいなかった私に純は快く挨拶してきた。マイナスのオーラが出ている自分ですらこの純といるときは色が白に変わり、世界が一瞬にして変わった。望んだ高校に進まなかった自分。そんなイメージが先行しておまけに親しかった友人が誰もいなくなり軽く高校に失望していた矢先のこと、純は純粋だった、高校3年間、ただ一度もその色を濁すことなく私に接してきた、ただ一度も、しかしよくよく見れば濁ったときもあったのかもしれない、けれどそれは私から見たら決して濁りなどとは遠く、澄んで見えるのは歴然であった。
「善君は少し思考が暗いね」
よくそんなことを笑って言われた。自分はともするとすぐに暗くなる。
「ただこれは自分を保つために暗くしているだけだよ」
「にしても暗いよ。暗さからは明るさは出てこないよ」
青空が似合う男であった。体育祭のあの澄んだ青空の元、誰よりも輝いて生き生きして見えたのは彼以外にいなかった。それだけまぶしく私の目を保養させ、なぜだが無性に彼を癒しとして思わずにはいられなかった「悲しい」自分。
「悲しい、ってよく言うね。悲しい決意、悲しい覚悟、悲しい逃避行、悲しいまでの懺悔。悲しい、って、なに?」
「純は悲しいということを知らないのか」
「うん分からない。馬鹿かな、自分」
「いや幸せだと思う。経験する必要ないんじゃないかな」
「暗いな~善君。まだ十六だよ?一体何があったの?聞かせてよ」
純とは高校を卒業してからしばらく会わなかった。そして本当に久しぶりに最近会った。純という純粋さに最近気づかされたー。高校の頃、ずっと行動を共にしてきた純は随分と大きくなっていた。その大きさは心も共に、激しいまでの好青年になっていた。清々しい笑顔を五年ぶりに見て、何だか高校のとき悩んでいた自分の青臭さが笑えてきて、自分もまた再び良い気分になった。純といるときはいつも自分は素の自分に帰れた。垣間見る純粋。ああ、懐かしい、本当に久しぶりにこんなことを思えた。純粋が変だと思っていた時期がバカバカしい、純粋こそ自分の生きる道。ああ、たまらなく、本当に、気分が良い。
「善君、久しぶり。元気してた?」
「ああ俺は変わらないよ。ほら顔も特に変わらないだろう?」
「ほんと、あのときのままだね。でも少し太った?」
「体重や身長は変わるさ。親が大きいから。純も大きくなったな」
「何かどこかの親戚みたい」
「ははは。懐かしいな、高校以来だからもう五年か、覚えてるか?」
「高校時代?そりゃあ覚えているよ」

 錯綜する交差点。その中をただ懸命に漕ぎ続けた。自宅から家まで自転車で行く、二十分もかからないその距離を誰よりも早く、早く。青々した澄んだ空気が体に伝わり、緑も雲も自分の仲間のように感じていて、それで精一杯、後はやはり気分の優れない自分。それを必死に隠そうと、あるいはこういった気分が毎日やってきて自分の未来もこういう形のまま突き進むのではないかと思うと気分はより一層優れないでいた。純に言われた言葉、何があった、その言葉を何度も口にして、何があった何があった、自分の身に何があった、反復はしてみるがその答えがあるいはとうとう出せないままに今の自分は存在しているのかもしれない。青春だと感じた高校時代。五年が過ぎた今。
この空白の五年間はいわば私にとっては耐え切れていないものだったのかもしれない。それだけ私はここ数年「純粋」という言葉を忘れていた。過去は過去のものとして見切りをつけようとしても今は瞬く間に過去に変わり、今、今、が、過去、過去、に変わる。潜在的なものなのだ。私は潜在的に暗い人間なのだ、本人がそう思っているだけで周りはそうは思わないかもしれないが、それは本当の自分を知らないだけ、そして人は誰もが暗い人間であるのかもしれない。そんな「悲しい」考えをやはり純は覆してくれたし、そうであると肯定してくれたりもした。それでも最近は随分純粋を取り戻しました。
 青春時代、舞台は高校。私は一人の人に恋をした。高校を通じて三年間、ただ一人の人を想っていて、純もまた恋をしていた。恋、という点でひどくお互いが一致していたことを思い出す。目の前に現れる景色が幻想かもしれないと思う感情は今以上に強かった。
「善君、最近何かあった?」
「何か?何で」
「何だか嬉しそうだから」
「そういう純こそ」
「へへへ」
私の恋は結局実を結ぶことはなかった。それでもただその愛しい人だけを見ていて、今はどうしているかとかそんなことをたまに思うと体が騒ぐ。告白をした。ただその告白は告白として取ってもらえなかった。やがてすぐに相手を傷つけた。そして私は自分の心の愛おしさをしまって大事に大事に持っていた。初めて会った高校一年の夏、そのときの想いのまま高校を卒業出来たのだからこれはこれで幸せ者だったかもしれない。恋に関してはひどく無垢、そんなフレーズも何度となく自分の中で駆け巡った。でも、それはやはり潜在的なものであり、そこに見せる優しさも優しさの一部分として自分の中で解決していた。ただそこには甘いものしかなく、厳しさが一つも無かった。
 純の恋は実った。どこをとって実ったと言えるかは微妙であるが(付き合ったら?結婚したら?子供が生まれたら?生涯一緒にいたら?)、純の赤い実は高校を卒業した後にようやくはじけた。自分同様高校にいた頃はなかなか赤い実は赤い実のままであった。そんなことをよく話していた。そしてそんなときでさえ彼は常に純であった。
「善君、実は好きな人が出来たんだ」
「そうか、それはおめでとう」
「ありがとう。自分はただ純粋に見ていたいんだ」
「見ていたい?」
「そうその人を。本当に自分が好きなのかどうか、もっと真面目に見ていたいんだ。そして本当に好きなんだと分かったら好きだと告白したい」
純の見定めの期間はとうとう三年かかった。自分は彼の純粋さに驚かされ続けていた。これを純粋さと取るか、何ととるかは別にして、それだけ彼は真剣だった。真面目だった。人よりも少し速度は遅いかもしれないがその遅さもまた純らしかった。
「もう、行っていいんじゃない?」
「いや、まだだ善君。まだまだ自分は彼女のことを色々分かっていないんだ」
「でも明日は文化祭じゃないか。良い機会だと思うんだけど」
「善君、じゃあ明日が文化祭じゃなかったらどうするつもりなんだ。明日が文化祭であろうと無かろうとそんなことは関係ない。まだまだ全然彼女のことを見れていないんだ」
「純、じゃあせめて一緒に話せよ」
「それもまだ、恥ずかしい」
「じゃあ、自分が・・・」
そんな会話の繰り返しだった。最初のうちはどうせ一過性のものであろうと思っていた。ただ、純はそこいらの人とは違った。本当に、ただ一切を恋した彼女に捧げていた。クラスが同じというだけでそれ以外には特に接点のない彼女を大切に見ていた。浮ついた心があったのなら機会は幾らでも、しかし純は決して動こうとはしなかった。何かを見ている亀のようにじっと動かず見ていた。
 純の決意は三年かかった。受験体制に入ってもう恋どころではなくなり始めても、彼の熱さは決して衰えなかった。むしろそういった状況下でより一層燃え上がっていた。
「純、まだあの人のことを言っているのか、少しは目を覚ませよ」
「何を言うんだ善君。僕はいつだって目は覚めてるよ。自分に甘えを作りたくないんだ。こうしてただ想っていないと駄目な気がするんだ」
純の純粋さには優しさがあった。純粋で心が澄んでいるが故に起こる優しさ。その優しさもただ優しいだけでなかった。どこにでも通じる優しさなら浮ついた心だったり、形式的なものだったりで優しさは優しさとして形を保つことが出来るかもしれないが本物ではなかった。彼は優しさの中に厳しさがあった、そしてそれは特に自分に対しての厳しさ、好きになった人をただじっと想う忍耐の厳しさがあった。そんなこともやはり純粋だった純だったからこそ垣間見ることの出来たことであって、私はこのとき優しさの中の厳しさの意味を何となくであるが理解することが出来はじめていた。そしてそんなことを気づかせてくれた純にお礼を言いたい気持ちで一杯であった。
 純のような人が皆の側にいたらきっと戦争も無くなるであろう。出会いは一瞬、一期一会、そうして私は純のおかげでどうにか高校時代を乗り切れたのかもしれない。出会いに感謝し、純の恋を最後は素直に応援していた。こんな奴が実を結ばないで誰が実を結ぶのだと思っていた。純にはかなわなかった。気が付けば同じ人に恋をしていた、同じクラスメイトにただ純も自分も恋をして、それでもとうとう、かなわなかった。純はそのことに気づいてもいたし気づかないふりもしていた。その全ての彼の大らかさに負けた、自分の心の狭さを痛感した。自分は浮ついた心で彼女に告白をした。その間も純はただじっと見ていて私に何も言わなかった。それが優しさなのか定かではないが、そして私も純もただ一人の人を愛し続けていた。

 「悲しい」までの青写真。青写真の意味するところが「どうするかについての大体の計画の意」だとしても、私はそれを別の意味で捉えたい。「想像するところの良い映像」として青写真を捉えたい。なんなら青写真は赤写真にも白写真にも変わるということを私は考える。純は架空の人物と言ったがそれでもあなたの身近にいないだろうか。純はそしてあるいはあなた本人、自分、かもしれない・・。私は限りなく実在している人として純を捉え始めていた、誰かになぞらえて書いてみたのは限りない事実である。こうして青い映像が青い映像でないとしても誰かが青いと言ってあげなければ、空はいつまで経っても夕焼けのままである。今回はただ恋についての思考であったがもっともっといくらでも純粋さはある、そしてそんな純粋さは誰にも存在する。要はそれに気づくかどうか、そして気づいて登る階段の先々でいろんなものを見ていくのだと思う。何を言いたいか何を感じるか、そんなこともあなたが気づいていくものであるから特に付け足しはしないのでそれもまたあしからず。

純粋さ
優しさに加わった厳しさ
純粋さも優しさもそして厳しさも
ある程度の限度が必要
純=自分、純粋こそ自分―。



お疲れさまでした~、あくまでフィクションです。
返事等はまた折をみて・・。
それでは!





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最終更新日  2008.06.20 14:33:51
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