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そもそもあまり本を読む方では無い。特に小説に関しては、どうも登場人物がたくさん出てくると名前が覚えられなかったり、文学的な情景描写がうまく頭に描けなかったり、一体何が言いたいのか、とまどろっこしくも感じたりする。
そういう自分が、数年前に買ったっきり放ったらっかしになっていたアイン・ランドの長編小説「水源」を正月明けに読み始めた(総頁数1,000ページ以上!)。そもそもアラン・グリーンスパンが若い頃に影響を受けた、ということで購入したものだ。よくある年初ならではの新しい挑戦、と思って読み始めたがこれに思った以上にのめり込んだ。 ネットで調べてみると、随分昔に”摩天楼”という邦題で映画化されたこともあるらしい(原題は”Fountainhead")が、映画の方は、ロマンスの部分が強調されていたらしい。小説の方は全く硬派な内容で、建築をモチーフとしながらリバータリアニズムを説く思想小説だ。 作者のアイン・ランドはロシアの社会主義から逃れて米国に亡命した人。30年代の米国大恐慌時代の「赤い十年」、社会主義が資本主義経済の幻滅から期待されていた時代に、社会主義の現実を知っている者として、社会主義が唱える無私無欲の利他主義は断じて美徳ではなく、自分自身で充足する個人主義、自己中心主義を説く。そしてそれこそが米国の基本理念であったはずだ、と。自己中心主義というと、他人を犠牲にする、と思われがちであるが、「他人を利用する必要などないところに立っている」という意味である。「自律」と言っても良いかもしれない。 この本を読んで、米国に住んでいたときに、常に日本人として違和感をもっていた個人主義の意味が少しわかったような気がする。人類の創造は「他人の人生を生きるセコハン人間」「依存者」からではなく、「自らのために生きる」人から生まれる、という考え方は集団主義に生きる日本のビジネス社会では残念ながらまだ多数を占めるものではない。 昨年以来の未曾有の経済危機で、アメリカ的資本主義に対する批判は強い。しかし人類の創造は利他主義ではありえない、ということも忘れてはならない。オバマが言うように「一部の人の強欲と無責任」は責められるべきではあるが、「市場が善か悪かという問題ではない」。 アインランド「水源」Amazon.co.jp お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 31, 2009 05:21:31 PM
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