カテゴリ:日本の生活
映画化され封切り間近の「テルマエ・ロマエ」を最近近所に出来たTsutayaのコミックレンタル(昔は貸し本漫画屋と言ったもんだけど)で借りて読んで見るとその異文化論的考察が面白い。
ローマ時代のローマ人に一点「風呂」の観点に集中して"Discover Japan"させるという手法は、日本人の文化への誇りをくすぐりながらも、自嘲させるところがある。 風呂は、アニメが日本人として嬉し恥ずかしい文化であるにも関わらず一部の外国人に受け入れられている点で、よく似ている(註:決してすべての外国人ではない)。一昔前は「日本のサラリーマンは電車でコミックを読んでいる」と笑われていたけど、そう言った浅い批判の多くはアメリカのコミックと日本の漫画やアニメを同一視していたもので、今や多くの翻訳版や吹き替えアニメで育った外国人が多くなって来たのだろう、そういう話は聞かなくなった。それでも今のテレビドラマや映画の多くの原作が漫画だというのは流石に日本独特な現象。 一方、異文化を受け入れる外国人側も、このローマ人のように、本当に日本の文化や歴史を理解した上で受け入れているわけでは無く、勘違いが多いのも事実。それを昔の外国人に語らせることで読者の納得性を高めている。「平たい顔族がヘラヘラしながら話している」という表現は明治時代初期に日本を訪れた外国人の率直な感想なんだろうな。 フルーツ入り牛乳やら、ニホンザルの入浴やら、日本の文化のユニークさは実は外国人が奇妙に思うようなところにあるので、受け入れる人と受け入れない人が紙一重なんだと言うことも、改めて認識できる。異文化感のズレ、勘違いは結局当事者同志の経験と擦り合わせを経ずして近づいていかない、いくら本や講義を受けたって解決しない、という作者の現場感覚がある。以前異文化コンサルタントのロシェルのLinkedInで、日本通外国人の間で日本のお土産は何が良いかという話で盛り上がっていたが、入浴剤がベスト10に入っていたな、そう言えば。 元ポルトガル在住、現シカゴ在住の作者の視点は、私のメンターが言う、「幽体離脱」状態、すなわち日本からもローマからも離れた客観視。日本の独特の文化を直接的な批判で無く、日本人が好む屈折した礼賛にして見せたところが巧み。多くの外国に住む日本人が次第に持つ客観的な感覚を「ローマ人と風呂」の切り口で捉えた作者の次回作が待ち遠しい。 次のサイトで第一話が読める。 テルマエ・ロマエ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 8, 2012 12:14:03 PM
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