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2008年の経済不況と日本経済初の労働市場での試み
2008年の秋、急激な経済環境悪化で、労働市場において、問題が 毎日のように報じられています。いわゆる、「派遣切り(正確には 製造派遣)」(以下製造派遣と言います)というものです。 この問題を語るのには、10年は遡っていく必要がありそうです。 ●日本は「労働社会主義」の国 日本の労働法では、正規雇用(正社員)の労働者をそうは簡単に 解雇(クビ)にできません。いくら企業業績が悪かろうとも倒産する 可能性があるという段階までできないのです。それでは、経営に おいて遅すぎます。立ち直れないというところまでいかないと、 解雇ができないのです。企業業績がどれだけ悪くなり、株価も下が ろうとも、解雇という人員整理ができない法律なのです。 ●バブル崩壊を経験した日本の今 そんな労働社会主義の国で、人員整理が可能なのは、希望退職を 募るということです。 希望退職は、正規雇用の労働者を「整理」できるものですが、 あくまでも「解雇」ではなく、自ら退職してもらうものです。 希望を募る時に退職金の上乗せなどの出費を増やして、 整理するわけですが、しかし、会社として不必要な社員ではなく、 必要な社員がどんどん流出することになります。 必要な社員とは、その会社で必要ではありますが、イコールどこの 会社に行っても通用する労働者です。辞めて欲しい人材というのは、 他社にいって活躍できる可能性が低い労働者です。 希望退職で経験したのは、必要な人材の流出だったわけで、 数年後の企業経営を考えた時には、全くマイナスの方策だったという ことです。 アメリカでは、(という言葉が大嫌いなんですがあえて)企業業績の 一時的な後退で、労働者を解雇できるレイオフの制度があります。 企業が潰れるとその企業だけでなく、その企業がある街、下請けの会社 など連鎖的にダメージを受けことを避けるためにあるものです。 日本でバブル崩壊後、非正規社員が増えたのは、日本の労働法制の 環境下で法律を掻い潜って、アメリカのレイオフのように、合法的に 人員整理を「行なえる企業環境にできるという、「備え」からです。 ●日本経済史上の試み バブル崩壊後に増えた正規社員。今や労働者の30%が非正規社員と なっているのです。この意味が初めて分かることになったのが、この 経済環境の悪化であり、今回の製造派遣切りです。 この意味は、日本の経済史上で非常に大きな意味を持つものだと、 私は思っています。 バブル崩壊後、製造現場の労働者を非正規社員に切り替えてきたのは、 販売量が減り、製造量が減れば、仕事もなくなり、仕事がないのに、 働かない労働者を抱える事ができない、製造量が減れば、人も減るという 経済活動において、合理的な発想からです。 今回対象になっている人たちには、気の毒だと思います。しかし、 そうしなければ、企業だけでなく日本の国自体が深刻な経済状況になる のです。配当を出した、それを雇用に回せという主張をする人たちも いますが、今以上に企業業績を赤字を拡大させ、株価を低下させてまで、 仕事もないのに人を雇用して、どうしようというのかと思います。 今回の人員整理で、日本でも需要に応じて、雇用調整ができるという 仕組みになったという、大きな意味を持つことが分かったのです。 ●変動費、固定費の考え方 経営においては、損益ということは大切なことです。 製造派遣の契約切りで批判されていますが、じゃあ会社を赤字にして、 企業経営者は、何を賞賛されるのでしょうか? これから5年は不況が続くでしょうが、その後の好景気にはまた、 雇用すればいいのだと考えています。 経営の数字として、売上高→売上原価→粗利益→費用→利益 というものがあります。 売上高が下がれば、売上原価も下がります。これを変動費といいます。 費用の中には、売上が下がれば減るものと、下がっても減らない ものがあります。下がらないものの一つに人件費があります。 人件費は、「固定費」の代表的なものです。 人件費が10あれば、粗利益が30でも10でも、10は必ず発生します。 つまり、利益がどうなろうとも変化できない、赤字になるのを待た なければならないのが、人件費になることもあるわけです。 それの人件費を変動費化しようとしたのが、バブル崩壊後の非正規化 になります。バブルの経験から、将来また来る不景気に備えるのが、 非正規化だったのです。人件費の一部変動費化に成功したのです。 生産量が減れば、仕事がなくなり、人も不要となる。そうなれば、 契約を打ち切るということです。 (今起こっている契約の途中で切られるのは問題でありますが) 変動費化することで、損益分岐点を下げ、景気に柔軟に対応できる ことになったのです。 批判をする新聞やテレビなどメディアが、契約を切られた人々を 採用すればいいではないか、と思います。そもそも、朝日新聞などの メディアでも赤字に見舞われるなど、企業経営が危ういのですが。 ●だから、キャリア開発 気の毒と言っていられる場合ではない。 製造派遣を選んだ人たちは、それがキャリアへの自己責任になります。 しかしながら、事務職であっても同じです。仮に、人員整理にあっても、 希望退職を募られても、どこに行っても通用するキャリア開発を 自ら行なう事が必要です。 キャリア開発とは、何も資格をとったり学歴を高めるだけでは ありません。究極は世の中で「希少価値」のあるキャリアであれば、 いいわけです。「あいつじゃないとだめだ」と思われるようになれば、 いいわけです。それは、人が嫌がったりやろうとしなかったり、 難しかったりするものです。 必要以上に短期間で転々としていては、そんな希少価値を高めること はできないでしょう。学校の勉強が嫌だったといっても、仕事を通じて、 自らの能力を高めることは、逃げられない。逃げれば、経済的弱者と なり、不安、不安定な生活を送ることになります。 自分しかいないとか、希少価値の高いキャリアを自ら開発していく ことは、自分の夢とかそんなものだけではなく、生活を守ることに 繋がっていくのです。 どうしたら、キャリア開発できるのは、いま直ぐに考えたいものです。 ●だからいつも知恵働かせよう 自動車メーカーが雇用してきた「期間従業員」という仕組みは、 工場の近くに宿舎を用意してそこに住んで仕事ができます、という ものです。そこに行く条件では、「期間限定」であり、元々住んでいた 実家などから転居が必要な仕事とわかって、そこに働きに行くわけです。 それを住むところがないというのは、あらかじめ分かってこと でしょうと言いたいわけです。製造でなくても、会社を辞めるときにも、 寮に入っていれば、退去期限が設定されています。 筆者は、若く、まだキャリアもなく年収300万円に満たない頃、 家賃8万、残りで食費などを払い生活し、それでも毎月、雀の涙ほど でも貯蓄をしていました。いま、できるだけ我慢して、将来必要に なった時のためにチビチビと貯めていたのです。 今、どんなに貧乏だと言っても、必ず携帯電話を持っている。 携帯電話ほどの贅沢で娯楽品はないと思います。無くたって生きていける。 生存に必要な最低限の衣食住に何ら関係のないものだと思います。 筆者が当時勤めていた会社の業績が悪く、年収が減った時には、 携帯電話を解約し、外食をやめ、弁当を持ち、お茶を沸かして持っていき、 夕方スーパーマーケットに行き、割引になった食材を買い、その食材に よってメニューを決めていたものです。 今でこそ携帯は持つようになり、こうやってパソコンでブログも 書けるが、それまでには、節約するために知恵を働かせたものです。 日本の古き良き時代の「知恵」を絞れないほど、日本は堕落して しまったのでしょうか。 ●政府の失業者対策 とはいっても、政府は、緊急で住居などを用意すべきだと思います。 新たな公共事業を計画し、そこに雇用を創出していけばいいのでは ないか。「平成のニューディール政策」です。 わけのわからない一律のバラマキを辞めて、そこに当てればそれはまた、 日本の政治史上でいい政府だったと言えるのではないでしょうか。 ●労働法制のあり方 政府は、今後、非正規社員という制度を禁止して、雇用は全て 正規社員のみ、という法律を制定することもできるでしょう。 (経済界の相当な反対が出ますが) それをやるには、労働集約型の仕事においてレイオフを可能にする などのことが必要でしょう。そうすれば、雇用は守れるでしょう。 ワークシェアが再び話題になっていますが、私は反対です。 能力が高い人も低い人も一緒くたにすれば、能力が高い人の流出や やる気の低下につながります。それは、製造国日本の品質の低下に 繋がります。 いずれにせよ、雇用を守るが、調整もできるということが必要に なります。 ●まだまだ落ち込む 今日は、2008年12月29日。まだまだ、景気は冷え込みます。 もっと失業者は出てきます。ネガティブシンキングに入ってますます。 また、デフレスパイラルに入ると思います。そうなれば、また5年は、 景気が冷え込むでしょう。 株を買う人はこれからいいですよ。5年経ったらかなり上がります。 それくらい長期的視点を持ちながら、今を着実に進んでいく必要も あります。 なるようにしかならないので、自分がいま何をすべきか、冷静に考え、 粛々と行動して進んでいくしかないのです。 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.12.29 23:28:24
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