カテゴリ:読書日記
ムハマド・ユヌス自伝 貧困なき世界をめざす銀行家 著者: ムハマド・ユヌス /アラン・ジョリ 出版社: 早川書房 【目次】 第1部 はじまり(1940年~1976年)―ジョブラ村から世界銀行へ 第2部 実験段階(1976年~1979年) 第3部 創造(1979年~1990年) 第4部 世界への広がり 第5部 哲学 第6部 新たなる展開(1990年~1997年) 第7部 新しい世界へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 著者は、マイクロクレジットという、貧困者向けの小口融資という、 これまでに金融の世界ではありえない融資を実施し、グラミン銀行を 設立し、2006年にノーベル平和賞を受賞しています。 マイクロクレジットとは失業者や商売をするのに十分な資金のない者、 または貧困状態にあり融資可能でない人々を対象とする非常に小額の 融資のことである。これらの人々は担保となるものや安定的な雇用、 検証可能な信用情報を持たず、通常のクレジットを利用するための 最低条件にさえ達しない。 国は、バングラディッシュ。 著者は、もともと大学の経済を教える教授であったが、経済など 教えても貧困が解消されないことに気づき、小額な融資をはじめる ところから活動をはじめました。 はじめに27ドル(2700円程度)を貸し出す。 たった2700円。これで貧困から抜け出るために商売をすることができる。 世界では、12億人が1日1ドル以下で生活をしている。 融資と言っても、担保などない。担保どころか、自分の家さえもない人たちが 食べることもままならない人がいるのです。 特に、バングラディシュでは、宗教上、慣習において、女性は、 働くどころか、家から出てはいけない、男性に顔を見せてはいけない、 子供が多くいることから、「口減らし」のために結婚させ、 結婚する時には、相手の男性の所にお金も一緒に持っていくという、 男尊女卑が根深く残っています。離婚をされたなら、実家にも帰れず、 働きに出られないから仕事もできないということで女性の貧困率が高くなるのです。 この融資の仕組みは、90%以上が女性に融資をされています。 自伝とはいえ、マイクロクレジットの仕組みを作るために、国内の銀行、世界銀行と 戦い、これまでにない仕組みを作るために、いろんなアイデアを作って貧困を 解消させていく活動を振り返っています。 これは、以前にも読んだことのある、ソフトバンクの孫正義氏の起業から今のような 会社組織にするまでの活動に似ています。 そもそも、貧困層に貸すための資金を調達するのに銀行に交渉するが、 なかなか認めてもらえない。 バングラディシュでは、75%の人が読み書きができず契約書を読んだりサインができない。 また、担保がないから保証がない、そんなこれまでの銀行の論理で、 壁にぶつかる。 貧困の中から、自分自身が自立をできる、とわかったら人は、担保がなくても、 返済をするものです。しかも、仕組みをして4人組を作って、 その中で返せない人が出てきたら、他の人の融資がストップする、 ということになっていて、連帯責任となる。 返済できない可能性が出てきたら、他の人がアドバイスしたり、返せる方法を一緒に 考えたりして、返済できるように促す。 昔日本にもあった長屋に住む人たちは、近所の人たちと助け合って生きていた、 そんな時代に似ている。 バングラディッシュという国では、 貧困であっても、宗教や慣習が人々は、お金を借りてはいけない、 女性は働いてはいけない、という柵を作っていました。 著者が作ったグラミン銀行では、家まで行って、さらに男性に顔を見せられない女性に 説明するために女性が家の中までいって説明をして、貧困から抜け出すための 活動を広めていった。 貧困の国に何ができるかというときに、資金の支援や物資の支援をすることは、 よくある話です。 しかし、それは、国の上層部で抜き取られ、貧困層まで行き着かない。 それが現実なのです。 外国の企業がその国で工場を作って雇用を創出しても、その国の利益にならず、 その企業の国が利益を取るだけなのです。 この銀行の仕組みは、 ・自立を促し、 ・自ら考えた商売で収入を得て、 ・貧困から抜け出す ことを実現しているのです。 この仕組みは、貧困の国を救うだけではなく、 日本でも格差社会と言われている状況に一石を投じれるのではないか、 そんな気がします。 例えば、今(2009年)の雇用環境は非常に厳しい。 失業率も10%になるんじゃないか、とも言われていますが、 その中でも、正社員経験のない人のキャリア形成は厳しいし、 50歳を過ぎてリストラに遭えば、次の仕事を見つけることも 厳しい状況です。 失業率が高いのに、人が不足している業種もある。 農業や介護の世界では人不足であり、日本においては、深刻な課題です。 農業の方法自体は、一朝一夕には行かないでしょうが、それでも、 自分でやってみようという動きが取れれば、自らのキャリア開発となる。 別にどんな事業でもいい。 「起業」ではなく、個人事業主に貸し出す仕組みが、できないかなあ、 そんな気がしました。 著者の話に戻しますが、 ・行動する目的、信念を持つ ・誰かのためになることは、諦めない ・協力的でない人がいても、協力してくれる人がいれば何とかなる ・仕組みは、アイデアで変えていく ということを実践した人で、生き方そのものに共感しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.09.28 00:12:03
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