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カテゴリ:ミッション・ステートメント
一日一日を、たっぷり生きていくより他は無い。 明日のことを思い煩ふな。 明日は明日みずから思ひ煩はん。 今日一日を、よろこび、努め、 人には優しくして暮らしたい。 青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。 舟を浮かべたいくらい綺麗だ。 山茶花の花びらは、桜貝、音立てて散っている。 こんなに綺麗な花びらだつたかと、 ことしはじめて驚いている。 何もかも、なつかしいのだ。 煙草一本吸うのにも、泣いてみたいくらいの感謝の念で吸っている。 まさか、本当には泣かない。 思わず微笑しているという程の意味である。 (中略) ああ、このごろ私は毎日、新郎(はなむこ)の心で生きている。 太宰治 『新郎』 太宰 治 (1909年(明治42年)6月19日 - 1948年(昭和23年)6月13日) 本名:津島修治。昭和を代表する日本の小説家。 1935年(昭和10年)に「逆行」が第1回芥川賞候補となる。 主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』など。 諧謔的、破滅的な作風で、無頼派とも称された。 大学時代より自殺未遂、心中未遂を繰り返し、1948年玉川上水にて山崎富栄と共に、 入水自殺を完遂した。 昨年2009年が生誕100周年で盛り上がっていたようだが、悲観的・破滅的な作風の所為か、 自殺したことの所為か分からないが、根暗なイメージが拭えずにいた。 ところが、この『新郎』では一日一日を大切に、愛しんでいるのがわかる。 とても優しい目で、なんでもない日常を楽しみ、感謝しつつ暮らしている。 全文はこちらで青空文庫 「昭和十六年十二月八日之を記せり。この朝、英米と戦端ひらくの報を聞けり。」 と記している。(初出「新潮」1942(昭和17)年1月号。) 時代が戦争に向かう暗い世相であったからこそ、明るくいたいという事なのか。 戦争=死というイメージから生がきらめいて感じられたのか。 なんにせよ、目に映るすべてが美しく感じられる心境。素晴らしいと思う。 ああ、このごろ私は毎日、新郎(はなむこ)の心で生きている。 私たちも毎日新郎・新婦のような気持ちで生きていきたいものだ! この幸せに満ちた文章を書いた6年半後に自殺してしまった。 何があったのだろう・・・・・涙 一日一日を、たっぷり生きていくより他は無い。 明日のことを思い煩ふな。 明日は明日みずから思ひ煩はん。 未だ来てもいない明日の事を心配して、 今日という日を無駄にしてしまうことなく、 今日を大事にする。 抜き出しても名言になる。 今日一日を、よろこび、努め、 人には優しくして暮らしたい。 大袈裟なものでなく、こんな生き方宣言も素晴らしい! ろまん燈籠改版 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.12.26 21:00:09
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