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おもしろき こともなき世を おもしろく 

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2010.12.26
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一日一日を、たっぷり生きていくより他は無い。
明日のことを思い煩ふな。
明日は明日みずから思ひ煩はん。
今日一日を、よろこび、努め、
人には優しくして暮らしたい。

青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。
舟を浮かべたいくらい綺麗だ。
山茶花の花びらは、桜貝、音立てて散っている。
こんなに綺麗な花びらだつたかと、
ことしはじめて驚いている。
何もかも、なつかしいのだ。
煙草一本吸うのにも、泣いてみたいくらいの感謝の念で吸っている。
まさか、本当には泣かない。
思わず微笑しているという程の意味である。
(中略)
ああ、このごろ私は毎日、新郎(はなむこ)の心で生きている。
 
   


太宰治 『新郎』 



太宰 治
(1909年(明治42年)6月19日 - 1948年(昭和23年)6月13日)
本名:津島修治。昭和を代表する日本の小説家。
1935年(昭和10年)に「逆行」が第1回芥川賞候補となる。
主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』など。
諧謔的、破滅的な作風で、無頼派とも称された。
大学時代より自殺未遂、心中未遂を繰り返し、1948年玉川上水にて山崎富栄と共に、
入水自殺を完遂した。


昨年2009年が生誕100周年で盛り上がっていたようだが、悲観的・破滅的な作風の所為か、 
自殺したことの所為か分からないが、根暗なイメージが拭えずにいた。


ところが、この『新郎』では一日一日を大切に、愛しんでいるのがわかる。
とても優しい目で、なんでもない日常を楽しみ、感謝しつつ暮らしている。
全文はこちらで青空文庫 


「昭和十六年十二月八日之を記せり。この朝、英米と戦端ひらくの報を聞けり。」
と記している。(初出「新潮」1942(昭和17)年1月号。)

時代が戦争に向かう暗い世相であったからこそ、明るくいたいという事なのか。
戦争=死というイメージから生がきらめいて感じられたのか。

なんにせよ、目に映るすべてが美しく感じられる心境。素晴らしいと思う。



ああ、このごろ私は毎日、新郎(はなむこ)の心で生きている。

私たちも毎日新郎・新婦のような気持ちで生きていきたいものだ!



この幸せに満ちた文章を書いた6年半後に自殺してしまった。
何があったのだろう・・・・・涙


一日一日を、たっぷり生きていくより他は無い。
明日のことを思い煩ふな。
明日は明日みずから思ひ煩はん。



未だ来てもいない明日の事を心配して、
今日という日を無駄にしてしまうことなく、
今日を大事にする。

抜き出しても名言になる。



今日一日を、よろこび、努め、
人には優しくして暮らしたい。
 


大袈裟なものでなく、こんな生き方宣言も素晴らしい!


 
  
ろまん燈籠改版        
 

 





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Last updated  2010.12.26 21:00:09
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