言葉の花束

親愛なる、お姉ちゃま

こうして、おねえちゃまのお顔を「ペロペロ」させて頂くの、久しぶりでしたわね。
おねえちゃま、とってもお喜びになるんですもの。
お母さまは「つるしの顔が荒れるから」っておっしゃっても
おねえちゃまは「じゅん、ペロペロ」って催促されるんですものね。

わたくし、実は「がん」でしたの。
おねえちゃまがショックを受けるといけないって、みなさんで隠して見えましたの。
おねえちゃま。本当はわたくし、昨年の暮れ「安楽死」をさせられるはずでしたの。
えぇ、怖かったですわ。とっても・・・おねえちゃまのことも心配でしたし。
でも、お母さまが「家で面倒見ます」って、獣医さんの所を飛び出されましたのよ。
わたくし、安心して、嬉しくて・・・
犬も「畳の上で死にたい」ものですわ。できることなら。

おねえちゃまが最後まで信じて見えた（る？）「良性の乳線腫」。
実は、がんでしたのよ。
それで、転移して、あんなにボコボコと。犬の乳腺はズラズラと並んでおりますから。
他にも、心臓でしょ？肺に水がたまっておりますでしょ？

おねえちゃま。昨日は
不思議な夢をご覧になっておられましたのね。（昨日のブログを参照なさってください）
えぇ、わたくしは「サバイバー」（リレー・フォー・ライフでは、がん患者さんのことを
こう呼びます）でしたのよ。
あと、少しで、おねえちゃまのところへたどり着けましたのに。
正夢ですわね・・・

小さい頃、お母さまとおねえちゃま、そしてわたくし。
よく遊びましたわね。
お母さまが「じゅん！」と呼ばれると、わたくしはそちらへ
おねえちゃまが、お呼びになれば、わたくしはそちらへ。
たどり着くと、抱っこして下さるの。
「じゅん、いい子ね」「じゅんちゃぁん、よしよし」
かくれんぼも楽しかったですわ。お母さまが、押入れに入られた時は
わたくし、なかなか見つけられなくて。おねえちゃま、助けてくださったのよね。
おかあさまも「おりられない」って半べそで・・・

みんなでたくさん笑いましたわ！
親戚の叔父様、おばさままで、いつも大切にしてくださいましたわ。
本当に、じゅんは幸せでしたの。
どうぞ、皆様にお宜しくね。

おねえちゃま。
「クリスマスまで、生きておりますわ」って、嘘をついたの、お怒りになるかしら？
おねえちゃま。
「はい、じゅんのも買ってきたよ」って、芦屋で紫色のブレスレット（注）
を買って見えたの。わたくしの、棺に入れてくださる？
わたくし、サバイバーですもの。
できれば、腕に通して頂きたいの。あと、ご家族皆さんとのお写真。
火葬にされますのね・・・腕輪は有毒ガスが発生するかしら。
市の方が、うまくやってくださるかしらね。

あぁ、もう、目が・・・

おねえちゃま。お身体、お気をつけて！
ちゃんと「がん検診」受けてくださいな！
早期発見ですわよ！！

おかあさまに「真実」を聞かされても、驚かないで。
「安楽死」より1年半も長生きさせて頂きましたわ！

１３歳のお誕生日パーティーまで・・・

おねえちゃま、じゅんはクリスマスに戻ってまいりますわ。
サンタさんの所へお手伝いに行って、そして、そりに乗って帰ってまいりますわ・・・
あ、あのふるい煙突！ちゃんとお掃除、お願いですわ。

あら！そろそろ、引き潮の時間。
お友だちにも、お手紙を書かなくては。
ごめんなさい。

ありがとう。おねえちゃま。
大好きな、おねえちゃま、クリスマスまで、とりあえず、さようなら。

おねえちゃまの妹・つるし雲じゅんこ

（注）若者のファッションとしても流行した、プラスティック製のカラフルな腕輪。
　　　収益は、それぞれの色によって、そのいろをシンボルとする「病に苦しむ方々」
　　　への募金となる。
　　　がん全体の色は紫色。

今まで、じゅんにたくさんの愛情を掛けてくださってありがとうございました。
じゅんは、本当に安らかに旅立って行きました。
ありがとうございました。

つるし雲つるし