DJ Kennedy/life is damn groovy

Where Is The Love / Roberta Flack & Donny Hathaway


伝説の二人、である。
Roberta FlackもDonny Hathawayも、そして彼等のスムースなサウンドがたまらなく好き。R&Bはいつの時代も素敵だけれど、彼等の残した音楽もまた、いつまでも新しく、懐かしく、衰えを知らない。

ただ、Donny Hathawayは彼女とのデュエットでソウル・レジェンドの地位を得ても、幸せを手にすることはできたのだろうか。

昔私が作ったＣＤにもこの曲を入れている。メロディもリリックも、いつも心を切なくさせる。聴きながらかすかに胸が騒ぐのは、彼等にもうすぐ別れが来るという運命の予感が潜んでいたからなのか。

Roberta FlackとDonny Hathawayが何故伝説か。それは勿論、大学の同級生であった彼等が最高に美しいハーモニーで多くの人を魅了したこと。そして彼がもう、この世にはいないから。Donny Hathawayは精神を病んでいた。

二人の、2枚目のアルバムが生まれようという矢先の1979年1月13日。セッションの為にＮＹのスタジオに入った彼の様子は尋常ではなく、スタッフは彼を病院に連れて行くどころか、怒ってスタジオから追い出した。その1時間後、セントラル・パーク南に位置するESSEX HOUSEの15階から飛び降りた。33歳の人生を、自ら諦めたのだった。

彼は、彼の音楽の中に、記憶からどうしても拭い去れない過去を消してしまおうと、限りなく美しい世界を求めた。幼少を教会で過ごした彼の心は純潔なクリスチャニティと、教会関係者によるとされる性的虐待のトラウマが交錯し、生きることを苦しませた。彼の詩は神に助けを乞い、彼の歌声は、悲しみから生まれる優しさに満ちていた。

R&Bには、ファンキーなルックスや、妖艶なセックスアピールを持つ曲、アーティストが多いけれど、純粋でヒューマンな彼の音楽はある種、その世界では特異であったと伝えられている。でも確かに彼は愛された。彼を、彼の歌を愛した人達もまた、彼の温かい声に様々な心の内を受け入れてもらったに違いない。これを、幸福と呼べはしない？

雨の通り過ぎた静かな夜の終わりに、彼に導かれるようにこの曲を聴き、その人生の中に、案じても仕方のない彼の幸せを探す。