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DJ Kennedy/life is damn groovy

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January 15, 2010
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テーマ:思い出の曲(15)
カテゴリ:Friday-Night Boom



Sing Our Song Together / Mari Nakamoto



最初の32小節しか聴いたことがなかった。いくつの時だろう、それさえ定かでは
ないが、父の運転で海辺を走っていたことだけははっきり覚えている。今にも
降り出しそうな空とうねりを待ちわびる水面。嵐の前のグレイの海を見つめながら
私はこの時少し、大人になった。

ドイツ人のクリストファーは3つからの幼馴染で一緒に育ち、学校から帰るとすぐ、
レコードを聴いたりお三時を食べたり、自転車の二人乗りで小高い丘から滑降し
叱られたりもした。兄弟のように、いつも一緒にいるのが当たり前の彼が、私が
この湘南小旅行に発つ前々日、父親の転勤でベルリンに帰って行った。

子供同士のさよならは、その時は悲しいものでもなく、旅行の楽しみもあって
すっかり忘れていたのに、あの曲が耳に入った瞬間、境のない空と海にクリスの顔が
重なった。そして今まで感じたことのない辛さ、切なさが、胸の奥から込み上げて
溢れ出しそうになった。それを我慢しなければ、私は大声で泣いていたのだろう。
クリスに会いたい、でももう会えない。悲しくてたまらない。思えばあれが私の初恋。

ラジオから流れるたった15秒のスムースな歌声とスロウジャズ。耳に残ったメロディ
と流れて行く水平線をいつまでも送りながら、悲しくて、会いたくて、でも旅に疲れて
静まり返った家族に気付かれないよう必死で涙を隠した。日が暮れて、横浜の自宅に
着くなり私は部屋へ駆け上がり、ベッドに突っ伏して声を上げて泣いた。以来一度も
あのメロディを聴くことはなく、かわいそうな初恋も心のどこかに紛れ込んでいた。

そして去年、あるマスコミ関係者の知人宅リビングルームに通されると、この曲が、
明るく響いていた。私は胸を衝かれてその場に立ち尽くし、曲名とシンガーを尋ねると、
中本マリが大好きだと言う彼が、これは彼女の"Sing Our Song Together"という曲だ
と教えてくれた。彼に、最初の部分を1度聴いたきりだがラジオのCMになっていた気が
すると言うと、石油会社か自動車メイカーのコマーシャルではないかという話だった。

最後まで聴いたこの曲は、初めて耳にした時よりも少しアップテンポで明るい印象、
私が少女時代に思い描いて勝手に歌っていたあの曲の続きとはだいぶイメージの
違う作品ではあった。けれど、こうしてあの頃に、あの海に連れ戻してくれる大切な
歌をもう一度取り戻すことができて、とても幸せな気持ちになった。

その知人は、この曲を彼の好みではないと言ったが、私はやっぱり大好きだ。
思い出の曲に、「良い」はあっても「悪い」はないものだ。









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Last updated  January 15, 2010 11:38:38 PM
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